Halloween
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
黄色やオレンジ、赤。様々な色にお化けに飾られ、どこか浮かれた街に変わって子供たち(大人も)普段はしない仮装の準備をする。
リヴァイにとってこういう騒ぎはうるさいとしか思えなく、自身が幼いころも特に楽しみにしていた覚えもない。
「あ?」
「だからさ、今日はハロウィンじゃないか。あなたのとこもトリック・オア・トリート!って子どもたちがくるでしょ?あなた絶対、怖がせてるだろ?可哀想だからさ、せめてそのシワなんとかしなよ。子供たち泣いちゃう」
毎年、毎年。付き合いもないし、顔見知りでもない子供が団体でお菓子を求めてドアをノックする。
リヴァイにとっては煩わしい日だ。
「無差別に家を回りやがって。迷惑だろ」
「でもさ、カズサはこういうイベント好きじゃない?」
不満そうなリヴァイをからかうと、ボソッと何かをつぶやいた。
「え、聞こえないんですけど」
「──今年は玄関先にバスケットの中に菓子は入れておく。去年はガキがくる度にカズサが対応してな、ゆっくりできなかった」
腹を抱えてハンジが笑うと向かいの席のパーティション越しに飴が飛んできた。
「おっと」
「カズサが菓子を作ったんだが、お前らの分はない。俺が食べる。だからそれで我慢しろ。あとカズサに美味かったと礼を言っておけ」
この愛想をどこかに忘れてきた男は恋人が”みんなに”作った差し入れのお菓子を独り占めする為だけに飴を寄越したのか。とハンジは理解した。
「で?もしカズサが私らに訊ねた時の為にワイロで飴配ってるのか〜。だからリフレッシュルームに大量の飴があったんだねぇ。え、それって見合わないよな〜」
隣のモブリットが胃を押さえ、他の人たちはリヴァイから目を逸している。
仕事はできる二人だが時折こういう風に空気が悪くなる。
巻き込まれないよう、自衛策として関わらないのが一番と心得ている。
「手作りだぞ。他の連中に誰がやるか」
「ってかさ、あなた。そもそも甘いものは苦手でしょうに」
この男はカズサという恋人ができてから嘘みたいに変わった。
来る者拒まず去る者は追わずで女性には人気はあっても長続きした試しがない。いつか別れ話かなんかで刺されるんじゃないか、とすら思っていたのに、カズサと会ってからはそれまでの女性関係、全て清算して身綺麗になってからアプローチしたくらいだ。そしてかなり嫉妬深い。
「カズサが作る菓子は甘え控えめだ。なにも問題ない」
「へいへい。惚気話ありがとう」
一旦、会話が終了し、二人とも仕事に戻るとモブリット宛のメールが飛んできた。
【本日、リヴァイの家に集合】
メールのもとははハンジだ。
「あんた、死にたいんですかっ」
ハンジにそう返せば【大丈夫、策はある】
全然、まったく、これっぽっちも安心できない返事が返ってきた。
ランチタイムになり休憩室に備え付けられているコーヒーメーカーから香ばしい香りがする。それぞれ手にもったカップに注ぎ席を確保している。
その中でも一緒のテーブルにつきたいけどつけないテーブルには五人座り、各々食事をしている。
「おい、エルヴィン。ここにおく紅茶の種類を増やせ」
「気に要らないなら自分で自分の分を持ってくるといい」
「ほんと、紅茶バカだよね」
「カズサも誰かの影響でコーヒー好きから紅茶好きになったな」
今日の話題はリヴァイの恋人、カズサだ。
元々、会社の付き合いで会った二人でリヴァイがカズサに猛アタックするのをうまくカズサは躱していた。
その理由は[女性にだらしない]リヴァイの評判のせいだった。
実際は取引先の女性にまで手を出すほどがっついてはいないリヴァイだが、街のメインストリートや洒落た店で女性とよくいるが毎回違う女性を連れていたのが噂になり、カズサのリヴァイへの印象は悪かった。
「今日は残業無しだ。急な仕事はもってくるな。ハンジかモブリットに回せ」
「え、何それ。ふざけてんの?」
モブリットは一言も発さずにサンドイッチを飲み物で流しこみ、胃薬を一気に飲んだ。
「あ’、文句あんのか」
ドスの効いたリヴァイの返事に負けず言い返そうとハンジが口を開く前にいつもは寡黙なミケが口を挟んだ。
「そういえば、随分とカズサに会ってない気がするが元気か?」
「私も会ってないな」
「てかさ、この人ってばカズサの手作りお菓子を誰にも渡したくなくて、そこの飴でごまかそうとするくらいだからね。仕事でもプライベートでも会えるわけがない」
エルヴィンとミケはなんともいえない視線をリヴァイに送るが、リヴァイはどこ吹く風で流している。
「では、あのメールは」
「サプラーイズ!ハロウィンにはつきものだろ?」
「悪いことは言わない。ハンジやめておけ」
「なんだ?そのサプライズってのは?」
リヴァイが問いただすも全員黙ってしまう。
そうなると余計に気になり、モブリットに目をつけると胃をおさえながら、一言を即座に言って去っていく。
「どういうことか、詳しく聞かせてもらおうか」
「気にするな。邪魔はしない。ところでカズサのお菓子はくれないのか、丁度コーヒーもあるからブレイクにいいだろう?」
「やらねぇっつってんだろう」
「あー、そう、まだそんなこと言うんだ。カズサの連絡先はみんな知ってるんだ。うっかり口が滑らないように神様にお祈りしなきゃねー」
完全にからかっているハンジをみる視線が鋭くなる。
このままだと収集がつかない。
「ハロウィンだからね、カズサも誘って食事でも。と考えていたんだが、やめておいたほうがよさそうだ」
更に鋭くなった視線を躱そうとエルヴィンがメールにあった本来の内容と違う事を言い、なおもにらみつけるリヴァイのスマホがブルブルと震えた。
「席外す」
スマホを手に席を外すとミケが静かに残った二人に邪魔すると馬に蹴られる。と呟いた。
《リヴァイ、今日は誰とも会わないの?》
「なんだ、俺だけじゃだめか」
《そういうんじゃなくて。みなさんに長いこと会ってないから》
「構うな、あいつらは、いつも通りだ。気にするな」
《え、だって》
「今日は残業はない、すぐ家に戻る。カズサは?」
強引に話題を変え、仕事終わりの時間を訊ねる。
《うん、私も早く終わりそうだよ》
「なら俺ん家で待っているといい。帰りにマーケットに行くが何か買うもんあるか?」
《じゃあ、ね……》
通話が終わり、席に戻ると不貞腐れたハンジと素知らぬ顔でカップを傾けている、エルヴィンとミケ。
この状況を経験から結果を想像すると、どうせハンジが余計なことを言い出し、エルヴィンたちが止めた。そんなところだろう。
「さて、午後も頑張るか」
「ハンジ、お前もしっかり仕事しろ。モブリットが気の毒だ」
「モブリットはああ見えて頑丈なんだよ?」
連れ立ってオフィスに戻ると、一足さきに戻っていたらしいモブリットが話しを振られないようにか、モニタから目を離さず、キーボードを叩いている。
「あ〜あ。ほんと心狭いったら」
ハンジの言葉をひろう人はなく、ちぇっという声がした後は黙って静かに仕事に勤しんだ。
※※※
自宅に着くと明かりが点っており、リヴァイは微笑む。
「おかえりなさい!」
パタパタと玄関に向かってくる足音を聞きながら、車のキーをシューズボックスの上に置いて、すぐに会える彼女を待った。
「ほんとに早かったね。これからホリデーシーズンに向けて忙しくなるんじゃないの?」
「そうだな、だから今日くらいは早めに帰ってもバチは当たんねえよ」
ニコニコと明るい笑顔で出迎えたカズサに頼まれた品を差し出す。
「結構、用意しておいたんだが。もう空か」
「うん。無くなっちゃっても子どもたち来るだろうな〜と思ってクッキー用意してたんだけど足りなくって 」
言葉にはしないが、無性にムカつく。それを言ってしまうと流石にカズサも呆れてしまう。と言葉を飲み込む。
リヴァイは二階にあがってスーツから普段着に着替え、カズサが待つリビングに近づくとホリデーでもないのにテーブルにはミートローフをはじめ、ごちそうが並んでいる。
「随分、豪華だな。作るの大変だったろ」
カズサの髪を撫でながらソファに並んで座る。
買ってきた赤ワインを開け、ワイングラスに注ぐ。
「ちょっと張り切りっちゃった。もしかしたらハンジさんたちも来るかな?と思ったから」
「言ったろ、あいつらは気にするな」
リヴァイの他では見せない柔らかい表情を見つめていると顔が近づいて……
ピンポーン。トン、トン、トン
「トリック・オア・トリート!!!」
何人かの高い声が聞こえ、リヴァイを押しのけ、キッチンにあるお菓子を手に玄関にカズサは向かう。
残されたリヴァイは「空気呼め。クソガキども」ガックリしながらカズサを追う。
ワイワイと元気な子供たちに囲まれて嬉しそうなカズサを壁に凭れて見ていると、そのうちの女の子がリヴァイに近づいてきた。
「ねぇ、おじさんはくれないの?」
おじさん……その言葉に内心ズキズキしながら、カズサをさす。
「来年は用意してよね。おじさん!!」
二度も言われ、ガックリしていると子供たちに配り終え、残りをバスケットに入れたカズサがリヴァイをみて笑った。
(おいおい、笑顔をガキどもにやたらと振りまくな)
自分でも心が狭いとわかっているが、どうしようもない。
今まで、こんな気分になったことがないので対処も出来ない。
「お待たせ。中に入ってご飯食べよ」
自分のもとに戻ってきたカズサの肩を抱き、リビングのソファに座る。
「トリック・オア・トリート。俺にも甘いもんくれよ」
目を閉じ近づくリヴァイにバードキスを贈る。
「トリック・オア・トリート!私にもくれる?」
額をあわせ、クスクスと笑った。
※※※
その頃。
「あーあ。今からなら間に合うんじゃね?トリック・オア・トリートって叫びながらさ」
「死に急ぎたいなら止めないが私はごめんだ」
「別の機会を設けるほうがいい」
「お願いですから、大人しくしてください!!」
1/2ページ