デフォルトで「名もなき ななし」になります。
You are my xxx!
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ペルソナ5主人公の名前
デフォルトで「雨宮 蓮」になります。
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「今日はてっきり断られるかと思った。」
目の前の黒縁眼鏡の青年はそう言って、少し首をかしげ微笑む。うーむ、相変わらずあざとい仕草だ。同じ高校生でも、昨日知り合った喜多川くんとはだいぶタイプが違う。
「……読み終わった本、貸すって約束もあったから。」
「あの本、もう読み終わったんだ。どうだった?」
「評判通り面白かったよ。この作者にしては、珍しいテーマ扱ってて新鮮だった。」
「へぇ、楽しみだ。」
そう言って、忘れないうちにと私が鞄から出した本を受け取る黒縁眼鏡の青年――雨宮 蓮くん。
「ありがとう。――じゃあ、そろそろ映画始まるし行こうか。」
「……そうだね。」
なんで私が、蓮くんと映画鑑賞に洒落込む事になったのか。思えば5月のあの日が始まりだったのかも知れない――
※※※
その日、私はお気に入りの作家の新作を購入するため、急いで会社を出た。発売日から人気でTVで特集なども組まれ、どの書店も品薄との情報をきき、一縷の望みをかけて渋谷セントラル街の書店へと走る。
(もう売り切れちゃってるかな……っ?)
人の波を縫うようにすり抜け、書店へと駆け込む。新刊はレジ前に平積みされているはずっ!――私の読み通り、レジ前に販促用のポップと共に最後の一冊が置いてあった。
手を伸ばし本に触れる――と、私の手を覆うようにして一回り大きな手が置かれた。
「あっ、すみません。」
声と共にさっと引かれた手をたどって隣を見ると、黒縁眼鏡を掛け癖のある黒髪の青年が居た。目にかかる前髪と眼鏡のせいでやや野暮ったい印象を受けるが、その瞳は凛然さを湛えている。
タッチの差で私の方が先に本に手を置いたが……だからといってこのままレジに持って行くのもなんだか大人げない――実際に相手は制服を着ているので年下だろうし――ような気がしたので、本から手を引きつつ彼に尋ねる。
「あー……本よかったらどうぞ?」
「お姉さんの方が先に手にとってましたから。」
そう言って、青年はいまだ棚の上にあった本を手に取り、一瞬視線を私の頭上に移したあと差し出す。なんだろう?走ってきたから髪が乱れてるのを見られたのかな……恥ずかしっ。片手で軽く髪を整えつつ、本を受け取る。
「ありがとうございます。」
「いや……じゃあ、また。」
――"また"?
まるで私たちが再会するような言い方だ。その一言が引っかかったが、まぁよくある挨拶だろうと流してレジに並ぶことにした。
※※※
別の日、私はお気に入りの監督の新作映画をレンタルするため、急いで会社を出た。劇場にも足を運んで観たが、改めて家でも観たい衝動に駆られ、セントラル街のレンタルショップへと向かう。
それなりに話題になった作品なので、ぜひ残ってますようにと祈りながら、レンタルショップに入り新作の並べられている棚へ視線を向ける。すると、最後の一本を手にとっている青年が目に入った。
「あ…っ」
「?あぁ、あの時の……」
振り返った青年と目が合う。前に彼が予言した通り また会ったことに対する驚きと、最後の一本を先に越された悔しさでつい声を上げてしまった。
「もしかして、この作品レンタルしようとしてました?」
近づいてきた青年が私に問いかけながら、目の前まで歩いてくる。
「よかったらどうぞ?俺は別の借りるんで。」
にこりという効果音が付きそうな笑顔で、手に持ったレンタルDVDが差し出された。……なんだか、この前と似たシチュエーションだ。なら――
「お兄さんの方が先に手に取ってましたから。」
こちらも、にこりとしながら前に彼の言った台詞をそっくりそのまま返してみると、私がそうくるのが意外だったのか目を瞬 かせた。
「じゃあ、またね。」
今度は私が予言めいた言葉を残し、青年が何か言う前に家路へと向かった。
※※※
「うーー……取れない。」
アクリル板に囲われた筐体に張り付きながら、唸り声を上げる私はだいぶ不審な人物だろう。けど、そんな事は気にしていられなかった。だって、どーしてもブンちゃんぬいぐるみが欲しいんだもの……っ!
明くる日、私はセントラル街のゲームセンターでどうしても欲しいぬいぐるみをゲットするべく、奮闘していた。でも悲しいかな、私にはクレーンゲームの才能が無い。ここまで時間とお金をそれなりに掛けたけれど、もう諦めるしか無いかと思い筐体から一歩遠ざかった時だった。
「これ、欲しいんですか?」
すぐ近くから聞こえてきた声に驚いてそちらに向くと、見覚えのある青年が立っていた。まさか私の予言 が当たるとは思わなかった。彼はスッと操作盤の前に立ち、硬貨を入れる。軽快な音楽と共にアームが動き始めた。
少しづつぬいぐるみを穴の方に近づけていき、見事取り出し口へ落とす。私と違い、彼が数回のプレイでぬいぐるみを手に入れるのを目の当たりにし、自分の不器用さに少しガッカリした。
そんなことを考えてるうちに、彼は私に向き合いぬいぐるみを差し出す。
「はい、どうぞ。」
こうやって何かを彼に差し出されるのは三回目だ。
これは明らかに私の為に取ってくれたのだから、遠慮して受け取らないのは違うだろう……と素直に受け取る事にした。
「ありがとうございます。」
「どういたしまして。」
「あ、お金渡しますね。」
「俺も楽しんだから、いらない。」
そう言われても、こちとら社会人なのに高校生に奢られるわけにもいかない。何より、私のための余計な出費だったろうし、お礼をしなければ。
何も言わなくなった私を見て、話は終わったと思ったのか、じゃあと一言立ち去ろうとする彼の腕を慌てて掴む。
「あ、あの!お礼にご飯でも奢らせてくださいっ。」
※※※
最悪だ。
これじゃあ高校生をナンパしてるみたいじゃないか。いや、"みたい"じゃなくて確実にナンパだよ……。しかも連れてきたのはファミレスだし。
ファミレスでごめんって言ったら、堅苦しくなくていいって返されたけど。ホントにこの人高校生?初めて会ったときから気遣いハンパないんだけど。
「ぬいぐるみ取ってくれて、ありがとうございました。」
「クレーンゲームに張り付いて見てたから、お姉さんぬいぐるみ相当欲しいんだって思って。」
その時のことを思い出したのか口元に手を当てて、クスクスと笑う青年。あの場面を見てたって事だよね……これじゃあ、どっちが年下なんだかわからないな……。
「あぁ、そうだ。」
「?」
「よかったら連絡先、交換して。」
「……え?なんで?」
「本とか映画の趣味合うからもっと色々と話してみたいし、お姉さん面白いから。」
そう言って青年はポケットから自分のスマホを取り出して、こちらに向ける。
「いやいや、社会人と高校生はマズいですよ。」
「そう?俺は気にしないけど。」
そっちが気にしなくても、何かあったら私が警察のお世話になっちゃうんだよ!……何かって言っても何もないと思うけどっ。
グズグズとなかなかスマホを出さない私を見ながら、そういえばと目の前の彼が話し出した。
「さっきゲーセンのポスター見たけど、そのぬいぐるみの大きいヤツ来月出るみたいだね。」
「うっ……。そうなんですよね。今日の結果を踏まえると、また惨敗しそう……。」
「よかったら、また取ってあげるけど?」
そうきたかーーっ!なんか、交渉慣れすぎてない?でも、この魅力的な提案に乗りそうな自分がいる。どうしようと思ったけど、連絡先の交換と欲しいぬいぐるみを取って貰うのとでは、私の方が明らかにメリットが大きい気がする。
「でも、そうすると貴方にメリット無くないですか?」
「ん…じゃあ、この前お姉さんが買った本、あれ読み終わったら貸して。あの本、どこの本屋も入荷未定でまだ読めてないから。」
どう?と少し首をかしげ微笑む。うーむ、あざとい仕草だ。いつの間にか敬語がなくなってるし、距離の縮め方もうまい。
「……わかりました。」
「取引成立。」
何か言ってもあれやこれやと言われて、結局連絡先を交換する流れになるだんだろう。……別に、高校生と連絡先を交換しても、トラブル起こさなければいいだけだし!そう自分を納得させて、鞄からスマホを取り出しIDを交換する。
「雨宮さん」
「俺の方が年下だし、敬語もさん付けもいらない。」
「……雨宮。」
「そこは名前で呼んで欲しかったな。これからよろしく、ななし」
「ひぇっ!」
男の人に名前を呼び捨てされる経験が少ないからか、動揺して変な声がでてしまい、また青年――蓮くんに笑われる事となる。
まぁ連絡先を交換したといっても、社会人と高校生。連絡なんてそんなに来ないだろうと高を括っていたけど、そんな考えは早々に打ち砕かれることになる――――
※※※
「なかなか面白かったな。」
「そうだね。監督らしさが出てる作品に仕上がってて、すごくよかった。」
スクリーンが映像を映し終えて、劇場内が明るくなる。移動する人の波に続き映画の感想を言い合いながら、私たちも館内を出て渋谷駅へと向かう。
「今日は誘ってくれてありがとう。悪いけど、明日は仕事早いからもう帰るね。」
「こちらこそ付き合ってくれてありがとう。また連絡する。本の感想も言いたいし。」
「それはいいけど……。蓮くん高校生なんだから、学校の友達と色々満喫した方がいいよ?」
「大丈夫。ななしが心配しなくても、ちゃんと満喫してる。」
「……ならいいけど。じゃあ、またね。」
そう言ってひらひらと手を振れば、微笑みながら手を振り返してくれる蓮くん。本の貸し借りや、来月のぬいぐるみを取ってもらう約束など、何だかんだ会う機会が意図的に作られてしまっているのは気のせいだろうか?
せめて、周りにママ活に間違われませんように!と祈りながら、家路を急ぐのだった。
「名もなき ななし……。白紙のアルカナ か……面白い。」
――――――――――――――
2025/3/4
蓮の口調迷子すぎて辛い。
ブンちゃんはSEGAの某ゲームで登場するぬいぐるみです。
目の前の黒縁眼鏡の青年はそう言って、少し首をかしげ微笑む。うーむ、相変わらずあざとい仕草だ。同じ高校生でも、昨日知り合った喜多川くんとはだいぶタイプが違う。
「……読み終わった本、貸すって約束もあったから。」
「あの本、もう読み終わったんだ。どうだった?」
「評判通り面白かったよ。この作者にしては、珍しいテーマ扱ってて新鮮だった。」
「へぇ、楽しみだ。」
そう言って、忘れないうちにと私が鞄から出した本を受け取る黒縁眼鏡の青年――雨宮 蓮くん。
「ありがとう。――じゃあ、そろそろ映画始まるし行こうか。」
「……そうだね。」
なんで私が、蓮くんと映画鑑賞に洒落込む事になったのか。思えば5月のあの日が始まりだったのかも知れない――
※※※
その日、私はお気に入りの作家の新作を購入するため、急いで会社を出た。発売日から人気でTVで特集なども組まれ、どの書店も品薄との情報をきき、一縷の望みをかけて渋谷セントラル街の書店へと走る。
(もう売り切れちゃってるかな……っ?)
人の波を縫うようにすり抜け、書店へと駆け込む。新刊はレジ前に平積みされているはずっ!――私の読み通り、レジ前に販促用のポップと共に最後の一冊が置いてあった。
手を伸ばし本に触れる――と、私の手を覆うようにして一回り大きな手が置かれた。
「あっ、すみません。」
声と共にさっと引かれた手をたどって隣を見ると、黒縁眼鏡を掛け癖のある黒髪の青年が居た。目にかかる前髪と眼鏡のせいでやや野暮ったい印象を受けるが、その瞳は凛然さを湛えている。
タッチの差で私の方が先に本に手を置いたが……だからといってこのままレジに持って行くのもなんだか大人げない――実際に相手は制服を着ているので年下だろうし――ような気がしたので、本から手を引きつつ彼に尋ねる。
「あー……本よかったらどうぞ?」
「お姉さんの方が先に手にとってましたから。」
そう言って、青年はいまだ棚の上にあった本を手に取り、一瞬視線を私の頭上に移したあと差し出す。なんだろう?走ってきたから髪が乱れてるのを見られたのかな……恥ずかしっ。片手で軽く髪を整えつつ、本を受け取る。
「ありがとうございます。」
「いや……じゃあ、また。」
――"また"?
まるで私たちが再会するような言い方だ。その一言が引っかかったが、まぁよくある挨拶だろうと流してレジに並ぶことにした。
※※※
別の日、私はお気に入りの監督の新作映画をレンタルするため、急いで会社を出た。劇場にも足を運んで観たが、改めて家でも観たい衝動に駆られ、セントラル街のレンタルショップへと向かう。
それなりに話題になった作品なので、ぜひ残ってますようにと祈りながら、レンタルショップに入り新作の並べられている棚へ視線を向ける。すると、最後の一本を手にとっている青年が目に入った。
「あ…っ」
「?あぁ、あの時の……」
振り返った青年と目が合う。前に彼が
「もしかして、この作品レンタルしようとしてました?」
近づいてきた青年が私に問いかけながら、目の前まで歩いてくる。
「よかったらどうぞ?俺は別の借りるんで。」
にこりという効果音が付きそうな笑顔で、手に持ったレンタルDVDが差し出された。……なんだか、この前と似たシチュエーションだ。なら――
「お兄さんの方が先に手に取ってましたから。」
こちらも、にこりとしながら前に彼の言った台詞をそっくりそのまま返してみると、私がそうくるのが意外だったのか目を
「じゃあ、またね。」
今度は私が予言めいた言葉を残し、青年が何か言う前に家路へと向かった。
※※※
「うーー……取れない。」
アクリル板に囲われた筐体に張り付きながら、唸り声を上げる私はだいぶ不審な人物だろう。けど、そんな事は気にしていられなかった。だって、どーしてもブンちゃんぬいぐるみが欲しいんだもの……っ!
明くる日、私はセントラル街のゲームセンターでどうしても欲しいぬいぐるみをゲットするべく、奮闘していた。でも悲しいかな、私にはクレーンゲームの才能が無い。ここまで時間とお金をそれなりに掛けたけれど、もう諦めるしか無いかと思い筐体から一歩遠ざかった時だった。
「これ、欲しいんですか?」
すぐ近くから聞こえてきた声に驚いてそちらに向くと、見覚えのある青年が立っていた。まさか
少しづつぬいぐるみを穴の方に近づけていき、見事取り出し口へ落とす。私と違い、彼が数回のプレイでぬいぐるみを手に入れるのを目の当たりにし、自分の不器用さに少しガッカリした。
そんなことを考えてるうちに、彼は私に向き合いぬいぐるみを差し出す。
「はい、どうぞ。」
こうやって何かを彼に差し出されるのは三回目だ。
これは明らかに私の為に取ってくれたのだから、遠慮して受け取らないのは違うだろう……と素直に受け取る事にした。
「ありがとうございます。」
「どういたしまして。」
「あ、お金渡しますね。」
「俺も楽しんだから、いらない。」
そう言われても、こちとら社会人なのに高校生に奢られるわけにもいかない。何より、私のための余計な出費だったろうし、お礼をしなければ。
何も言わなくなった私を見て、話は終わったと思ったのか、じゃあと一言立ち去ろうとする彼の腕を慌てて掴む。
「あ、あの!お礼にご飯でも奢らせてくださいっ。」
※※※
最悪だ。
これじゃあ高校生をナンパしてるみたいじゃないか。いや、"みたい"じゃなくて確実にナンパだよ……。しかも連れてきたのはファミレスだし。
ファミレスでごめんって言ったら、堅苦しくなくていいって返されたけど。ホントにこの人高校生?初めて会ったときから気遣いハンパないんだけど。
「ぬいぐるみ取ってくれて、ありがとうございました。」
「クレーンゲームに張り付いて見てたから、お姉さんぬいぐるみ相当欲しいんだって思って。」
その時のことを思い出したのか口元に手を当てて、クスクスと笑う青年。あの場面を見てたって事だよね……これじゃあ、どっちが年下なんだかわからないな……。
「あぁ、そうだ。」
「?」
「よかったら連絡先、交換して。」
「……え?なんで?」
「本とか映画の趣味合うからもっと色々と話してみたいし、お姉さん面白いから。」
そう言って青年はポケットから自分のスマホを取り出して、こちらに向ける。
「いやいや、社会人と高校生はマズいですよ。」
「そう?俺は気にしないけど。」
そっちが気にしなくても、何かあったら私が警察のお世話になっちゃうんだよ!……何かって言っても何もないと思うけどっ。
グズグズとなかなかスマホを出さない私を見ながら、そういえばと目の前の彼が話し出した。
「さっきゲーセンのポスター見たけど、そのぬいぐるみの大きいヤツ来月出るみたいだね。」
「うっ……。そうなんですよね。今日の結果を踏まえると、また惨敗しそう……。」
「よかったら、また取ってあげるけど?」
そうきたかーーっ!なんか、交渉慣れすぎてない?でも、この魅力的な提案に乗りそうな自分がいる。どうしようと思ったけど、連絡先の交換と欲しいぬいぐるみを取って貰うのとでは、私の方が明らかにメリットが大きい気がする。
「でも、そうすると貴方にメリット無くないですか?」
「ん…じゃあ、この前お姉さんが買った本、あれ読み終わったら貸して。あの本、どこの本屋も入荷未定でまだ読めてないから。」
どう?と少し首をかしげ微笑む。うーむ、あざとい仕草だ。いつの間にか敬語がなくなってるし、距離の縮め方もうまい。
「……わかりました。」
「取引成立。」
何か言ってもあれやこれやと言われて、結局連絡先を交換する流れになるだんだろう。……別に、高校生と連絡先を交換しても、トラブル起こさなければいいだけだし!そう自分を納得させて、鞄からスマホを取り出しIDを交換する。
「雨宮さん」
「俺の方が年下だし、敬語もさん付けもいらない。」
「……雨宮。」
「そこは名前で呼んで欲しかったな。これからよろしく、ななし」
「ひぇっ!」
男の人に名前を呼び捨てされる経験が少ないからか、動揺して変な声がでてしまい、また青年――蓮くんに笑われる事となる。
まぁ連絡先を交換したといっても、社会人と高校生。連絡なんてそんなに来ないだろうと高を括っていたけど、そんな考えは早々に打ち砕かれることになる――――
※※※
「なかなか面白かったな。」
「そうだね。監督らしさが出てる作品に仕上がってて、すごくよかった。」
スクリーンが映像を映し終えて、劇場内が明るくなる。移動する人の波に続き映画の感想を言い合いながら、私たちも館内を出て渋谷駅へと向かう。
「今日は誘ってくれてありがとう。悪いけど、明日は仕事早いからもう帰るね。」
「こちらこそ付き合ってくれてありがとう。また連絡する。本の感想も言いたいし。」
「それはいいけど……。蓮くん高校生なんだから、学校の友達と色々満喫した方がいいよ?」
「大丈夫。ななしが心配しなくても、ちゃんと満喫してる。」
「……ならいいけど。じゃあ、またね。」
そう言ってひらひらと手を振れば、微笑みながら手を振り返してくれる蓮くん。本の貸し借りや、来月のぬいぐるみを取ってもらう約束など、何だかんだ会う機会が意図的に作られてしまっているのは気のせいだろうか?
せめて、周りにママ活に間違われませんように!と祈りながら、家路を急ぐのだった。
「名もなき ななし……。
――――――――――――――
2025/3/4
蓮の口調迷子すぎて辛い。
ブンちゃんはSEGAの某ゲームで登場するぬいぐるみです。
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