デフォルトで「名もなき ななし」になります。
You are my xxx!
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ペルソナ5主人公の名前
デフォルトで「雨宮 蓮」になります。
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「貴女は俺の救世主 だ……っ!」
私の両の手をぎゅっと握りながら、目の前のスケッチ王子は呟いた。感謝されるのは嬉しいが、ちょっと、こう、ここまで大袈裟に言われると面倒くさいな……。
どうして平々凡々な私がスケッチ王子に救世主 とまで言われる状況になったのか。始まりは何だったのかを思い出すことにした。
人、それを現実逃避という――――
※※※
6月某日。仕事が終わり、私はいつも通りに渋谷駅の改札に向かっていた。会社を出てすぐに降ってきた雨に辟易しながら、早く家に帰ってDVDでも見ようと小走りしていると、人波を睨むようにして立っている青年を目の端に捉える。
色白で青みがかった黒髪を左に流し、群衆を眺める青紫色の瞳は憂いを湛えていて、なかなかの美青年だ。身長も高い。それだけなら、私の記憶には残らなかっただろう。
ただ彼は人混みの中、その一瞬を取り逃がすまいと、一心不乱に手を動かしその様子をスケッチをしていたのだ。その何者をも寄せ付けない気迫のようなものを纏った彼が、私の記憶に強く残った。
その日から、彼を駅前で見かけることが多くなった。ある時は気分が乗るのかスラスラと筆を動かし、ある時は行き詰まっているのかスケッチブックすら開いていない時もあった。
友達と待ち合わせをしているのも見かけた。勝手に友達がいないと思っていたからビックリ。と、失礼な想像をするくらいには彼を見かける頻度は高かった。
※※※
休日である今日、私は癒しを求めて井の頭公園にきていた。新緑の中で食べる為の手作り弁当を持って。
公園内を適当に散歩し、ベンチで昼食を取ろうと思ったら―――居た。いつも渋谷駅でスケッチしている彼が。
スケッチ王子――と、私が勝手に命名した――は、題材を今日は池にしたらしい。ベンチに座り、景色をみながら鉛筆をスケッチブックの上で滑らせている。
しばらくボーっとその様子を眺めて居たら、突然うっ……!といううめき声と共に、彼はゆっくりとベンチに横になった。えっ…!ちょっと大丈夫なのか彼…?!
人が倒れるところに遭遇したことが無い私は、若干パニックになりながらも彼に急いで近寄る。
「あの、大丈夫ですか…?!」
「……あぁ、ちょっと腹が……」
「お腹痛いんですか?……どうしよう、救急車呼ばないとかな……」
「いや、腹が減って……」
「え?」
「昨日……、一昨日だったか……?そこから何も食べていなくて……」
なんということでしょう。スケッチ王子は絵を描く事に夢中で、食事を取っていないと言うではありませんか。
お弁当に手をつけてなくてよかったと思いつつ、水筒と合わせて彼に渡す。
「お口に合うかわからないですけど、これ良かったらどうぞ。」
「これは、貴女の昼食だろう?……受け取れません。」
「空腹で倒れてる人を放っておいて、自分だけ食べるわけにはいかないでしょ?それに、あなた高校生ですよね?ここは素直に大人に甘えとけばいいんです。」
こんな状態でも遠慮する彼に若干の呆れを交えつつ説得する。すると、素直な性格なのか私の押しが強かったのか、はたまた空腹に耐えかねたのか、いただきますと手を合わせお弁当を食べ始めた。
※※※
「ご馳走様でした。」
「お、お粗末様でした〜。」
びっくりした。最初遠慮してたのが無かったかのように、勢いよくお弁当食べ始め、そして終えた。……まあ、倒れるほどの空腹じゃそうなるか。
私も若干の空腹を覚え、仕方ないからおやつ用に持ってきたじゃがりこを開ける…………めっちゃ見てくるな、スケッチ王子。もしかして、好物だったりする?
食べる?って聞いたら、若干食い気味にいいのか?!って言われて、差し出したじゃがりこをパッケージから一本づつ取り食べ始める。
食べてる最中、お湯入れて混ぜてからチーズ入れると美味しいよ〜とか、少し炒ってから食べると風味が増すよ〜とかじゃがりこ豆知識(?)を披露すると、何?そうなのか?!とか、ぜひ試してみよう!って反応が返ってきた。スケッチ王子、思ってたよりも面白い子なのかもしれない。
「満足できました?私用のお弁当だったから、量少なかったかもだけど……。」
じゃがりこも食べ終わり、お弁当箱を片付けていると突然両手を掴まれた。びっくりして、スケッチ王子を見ると――
「貴女は俺の救世主 だ……っ!」
私の両の手をぎゅっと握りながら、彼は呟いた。感謝されるのは嬉しいが、ちょっと、こう、ここまで大袈裟に言われると面倒くさいな……。
回想も終わり、この状況をどうしたものかと考える。目の前の彼は何やら下を向きながら、ブツブツと呟いて自分の世界に入っちゃってるし……。
「――人の心を描くには彼女のような――慈愛も愛の形の一つであるし――ぜひモデルに……いや、先ずは礼だな」
自分の中で納得する答えが出たのか、再び私に視線を合わせると私の両手を解放した。
「俺は、洸星高校二年の喜多川祐介です。よければ、連絡先を教えてくれませんか。」
「え?」
「ぜひ、今日の礼がしたいので。」
「別にお礼して欲しくってした事じゃないですし、よくないので連絡先は教えません。」
「えっ?!」
まさか断られるとは思ってなかったのか、何故だ?!って表情を浮かべるスケッチ王子――もとい喜多川くん。
「いやぁ……大人が高校生と連絡取り合うのは、ちょっとマズいんじゃないかなぁ。」
「倒れたところを救われたんだ、礼をせねば俺の気が収まらん!それに、俺の方から提案したんだから問題ないだろう。――――せっかく絵の着想のヒントを得たんだ……この機を逃すものか…っ」
最後の方はゴニョゴニョとして分かりにくかったが、敬語が無くなるほど必死な彼の様子に……折れた。
「……わかりましたよ。」
私がそう言うやいなや、喜多川くんは嬉しそうにポケットからスマホを取り出し、操作し始める。
「最近の高校生はみんなこうなの?」
「?何のことです。」
「こうやって強引にIDを交換するの。」
「それはわからないが、礼をするのに連絡がつかないと困るでしょう。……他意はない。他意は。」
「(……なぜ二回?)ですよねー。」
他意なんてあったらたまったもんじゃない。そう思いながら、自分のスマホをカバンから取り出す。
「その絵は……」
すると、私の待ち受け画面に目を留めて呟く喜多川くん。やはり、芸術家は絵に意識を向けるのが得意なのかもしれない。
「ああ、これですか?ちょっと前に逮捕された斑目って人の作品なんですけど、なんかこの絵だけ妙に気に入っちゃって画集から撮って待ち受けにしてるんですよね。」
スマホの画面が見やすいように、喜多川くんに向ける。
「まぁ、盗作してたって事みたいだから本人が描いたヤツじゃないのかもしれない――」
「俺が――だ――」
「ん?」
「いや……なんでもない。」
そう言って優しく、しかし、哀愁を漂わせながら微笑む喜多川くん。こんな表情もできるのか……と見惚れていると、今度は不思議そうな表情を浮かべる。
「どうしました?」
「……えっ、あ、IDの交換ですよね。」
スマホを素早く操作し、IDの交換を終える。まさかここ数日で、高校生のアドレスを二人分も手に入れるとは思わなかったなぁ。
「……名もなき ななしさん。」
「うん。無事ID交換できましたね。まぁ、お礼とかそんなに気にしないで下さい。喜多川くんが元気になっただけで嬉しいですから。」
片付け終わったお弁当を持って立ち上がる。おやつもなくなっちゃったし、今日はもう帰ろう。
「必ず連絡します。」
「わかりました。じゃあ、また。」
手を振ると、喜多川くんは手を上げて応えてくれた。
※※※
夜、夕食を終えて一息ついているとスマホが震える。画面を確認してみると、喜多川くんだ。早速、連絡くれたんだ。
内容は改めて今日のお礼と、自分は年下なので敬語は不要……と、彼の律儀さが伺える内容だった。
「"どういたしまして。成長期なんだから、ちゃんとご飯は食べるんだよ!あ、喜多川くんも敬語使わくていいからね。"……と。」
私もメッセージを送り返し、スマホを机に置こうとすると、メッセージの着信を知らせる。やけに返信が早いな……と思いながら確認すると――
『明日、仕事が終わったら会えない?』
そこには"雨宮 蓮"の名前とともに、私を悩ませるメッセージが表示されたのだった。
――――――
2025/03/02
私の両の手をぎゅっと握りながら、目の前のスケッチ王子は呟いた。感謝されるのは嬉しいが、ちょっと、こう、ここまで大袈裟に言われると面倒くさいな……。
どうして平々凡々な私がスケッチ王子に
人、それを現実逃避という――――
※※※
6月某日。仕事が終わり、私はいつも通りに渋谷駅の改札に向かっていた。会社を出てすぐに降ってきた雨に辟易しながら、早く家に帰ってDVDでも見ようと小走りしていると、人波を睨むようにして立っている青年を目の端に捉える。
色白で青みがかった黒髪を左に流し、群衆を眺める青紫色の瞳は憂いを湛えていて、なかなかの美青年だ。身長も高い。それだけなら、私の記憶には残らなかっただろう。
ただ彼は人混みの中、その一瞬を取り逃がすまいと、一心不乱に手を動かしその様子をスケッチをしていたのだ。その何者をも寄せ付けない気迫のようなものを纏った彼が、私の記憶に強く残った。
その日から、彼を駅前で見かけることが多くなった。ある時は気分が乗るのかスラスラと筆を動かし、ある時は行き詰まっているのかスケッチブックすら開いていない時もあった。
友達と待ち合わせをしているのも見かけた。勝手に友達がいないと思っていたからビックリ。と、失礼な想像をするくらいには彼を見かける頻度は高かった。
※※※
休日である今日、私は癒しを求めて井の頭公園にきていた。新緑の中で食べる為の手作り弁当を持って。
公園内を適当に散歩し、ベンチで昼食を取ろうと思ったら―――居た。いつも渋谷駅でスケッチしている彼が。
スケッチ王子――と、私が勝手に命名した――は、題材を今日は池にしたらしい。ベンチに座り、景色をみながら鉛筆をスケッチブックの上で滑らせている。
しばらくボーっとその様子を眺めて居たら、突然うっ……!といううめき声と共に、彼はゆっくりとベンチに横になった。えっ…!ちょっと大丈夫なのか彼…?!
人が倒れるところに遭遇したことが無い私は、若干パニックになりながらも彼に急いで近寄る。
「あの、大丈夫ですか…?!」
「……あぁ、ちょっと腹が……」
「お腹痛いんですか?……どうしよう、救急車呼ばないとかな……」
「いや、腹が減って……」
「え?」
「昨日……、一昨日だったか……?そこから何も食べていなくて……」
なんということでしょう。スケッチ王子は絵を描く事に夢中で、食事を取っていないと言うではありませんか。
お弁当に手をつけてなくてよかったと思いつつ、水筒と合わせて彼に渡す。
「お口に合うかわからないですけど、これ良かったらどうぞ。」
「これは、貴女の昼食だろう?……受け取れません。」
「空腹で倒れてる人を放っておいて、自分だけ食べるわけにはいかないでしょ?それに、あなた高校生ですよね?ここは素直に大人に甘えとけばいいんです。」
こんな状態でも遠慮する彼に若干の呆れを交えつつ説得する。すると、素直な性格なのか私の押しが強かったのか、はたまた空腹に耐えかねたのか、いただきますと手を合わせお弁当を食べ始めた。
※※※
「ご馳走様でした。」
「お、お粗末様でした〜。」
びっくりした。最初遠慮してたのが無かったかのように、勢いよくお弁当食べ始め、そして終えた。……まあ、倒れるほどの空腹じゃそうなるか。
私も若干の空腹を覚え、仕方ないからおやつ用に持ってきたじゃがりこを開ける…………めっちゃ見てくるな、スケッチ王子。もしかして、好物だったりする?
食べる?って聞いたら、若干食い気味にいいのか?!って言われて、差し出したじゃがりこをパッケージから一本づつ取り食べ始める。
食べてる最中、お湯入れて混ぜてからチーズ入れると美味しいよ〜とか、少し炒ってから食べると風味が増すよ〜とかじゃがりこ豆知識(?)を披露すると、何?そうなのか?!とか、ぜひ試してみよう!って反応が返ってきた。スケッチ王子、思ってたよりも面白い子なのかもしれない。
「満足できました?私用のお弁当だったから、量少なかったかもだけど……。」
じゃがりこも食べ終わり、お弁当箱を片付けていると突然両手を掴まれた。びっくりして、スケッチ王子を見ると――
「貴女は俺の
私の両の手をぎゅっと握りながら、彼は呟いた。感謝されるのは嬉しいが、ちょっと、こう、ここまで大袈裟に言われると面倒くさいな……。
回想も終わり、この状況をどうしたものかと考える。目の前の彼は何やら下を向きながら、ブツブツと呟いて自分の世界に入っちゃってるし……。
「――人の心を描くには彼女のような――慈愛も愛の形の一つであるし――ぜひモデルに……いや、先ずは礼だな」
自分の中で納得する答えが出たのか、再び私に視線を合わせると私の両手を解放した。
「俺は、洸星高校二年の喜多川祐介です。よければ、連絡先を教えてくれませんか。」
「え?」
「ぜひ、今日の礼がしたいので。」
「別にお礼して欲しくってした事じゃないですし、よくないので連絡先は教えません。」
「えっ?!」
まさか断られるとは思ってなかったのか、何故だ?!って表情を浮かべるスケッチ王子――もとい喜多川くん。
「いやぁ……大人が高校生と連絡取り合うのは、ちょっとマズいんじゃないかなぁ。」
「倒れたところを救われたんだ、礼をせねば俺の気が収まらん!それに、俺の方から提案したんだから問題ないだろう。――――せっかく絵の着想のヒントを得たんだ……この機を逃すものか…っ」
最後の方はゴニョゴニョとして分かりにくかったが、敬語が無くなるほど必死な彼の様子に……折れた。
「……わかりましたよ。」
私がそう言うやいなや、喜多川くんは嬉しそうにポケットからスマホを取り出し、操作し始める。
「最近の高校生はみんなこうなの?」
「?何のことです。」
「こうやって強引にIDを交換するの。」
「それはわからないが、礼をするのに連絡がつかないと困るでしょう。……他意はない。他意は。」
「(……なぜ二回?)ですよねー。」
他意なんてあったらたまったもんじゃない。そう思いながら、自分のスマホをカバンから取り出す。
「その絵は……」
すると、私の待ち受け画面に目を留めて呟く喜多川くん。やはり、芸術家は絵に意識を向けるのが得意なのかもしれない。
「ああ、これですか?ちょっと前に逮捕された斑目って人の作品なんですけど、なんかこの絵だけ妙に気に入っちゃって画集から撮って待ち受けにしてるんですよね。」
スマホの画面が見やすいように、喜多川くんに向ける。
「まぁ、盗作してたって事みたいだから本人が描いたヤツじゃないのかもしれない――」
「俺が――だ――」
「ん?」
「いや……なんでもない。」
そう言って優しく、しかし、哀愁を漂わせながら微笑む喜多川くん。こんな表情もできるのか……と見惚れていると、今度は不思議そうな表情を浮かべる。
「どうしました?」
「……えっ、あ、IDの交換ですよね。」
スマホを素早く操作し、IDの交換を終える。まさかここ数日で、高校生のアドレスを二人分も手に入れるとは思わなかったなぁ。
「……名もなき ななしさん。」
「うん。無事ID交換できましたね。まぁ、お礼とかそんなに気にしないで下さい。喜多川くんが元気になっただけで嬉しいですから。」
片付け終わったお弁当を持って立ち上がる。おやつもなくなっちゃったし、今日はもう帰ろう。
「必ず連絡します。」
「わかりました。じゃあ、また。」
手を振ると、喜多川くんは手を上げて応えてくれた。
※※※
夜、夕食を終えて一息ついているとスマホが震える。画面を確認してみると、喜多川くんだ。早速、連絡くれたんだ。
内容は改めて今日のお礼と、自分は年下なので敬語は不要……と、彼の律儀さが伺える内容だった。
「"どういたしまして。成長期なんだから、ちゃんとご飯は食べるんだよ!あ、喜多川くんも敬語使わくていいからね。"……と。」
私もメッセージを送り返し、スマホを机に置こうとすると、メッセージの着信を知らせる。やけに返信が早いな……と思いながら確認すると――
『明日、仕事が終わったら会えない?』
そこには"雨宮 蓮"の名前とともに、私を悩ませるメッセージが表示されたのだった。
――――――
2025/03/02