電話で5題
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受話器から
久しぶりに聞いた声は、
彼女がどこか遠いところに行ってしまう……
そんな気がした
"親友の徐倫がグリーン・ドルフィン刑務所に送られた"
そんな知らせを聞いたのは、彼女が刑務所に送られてから一週間経った日の事だった。
彼女は絶対にやってない―っ!
そう思った私は、徐倫の元彼氏だというロメオに詰め寄った。
一週間前に彼女との連絡が途絶えたのは、新しくできた彼氏とよろしくやっているからなのね、なんてのんきなこと思ってた。
ちょっと寂しいけど…彼女が幸せならばそれでいいって、そう思っていたのに……。
それから私は手紙、電話、また直接刑務所に赴いたりしたけれど、彼女と繋がることができなかった。
彼女は強いけれど、あれで結構寂しがり屋だから――
徐倫を支えてあげたい…支えなければならない、と
ある種の使命感を帯びたその感情は、私の寂しさの裏返しだったのかもしれない。
彼女が投獄されてから年を越し、新しい春を迎えようとしていた頃、ロメオの番号からの着信があった。
いまさら何の用なのかと思い、出てみると――
「もしもし…ななし?」
『……っ!じょ…徐倫…っ!?』
ずっと聞きたかった親友の声が聞けた…!
その感情だけで、私はいろいろ尋ねたいことがあったのも忘れて泣きじゃくる。
受話器の向こうから徐倫の笑った声が聞こえた。
「あら、そんなに私が恋しかった?」
『当たり前でしょ!私がどんな思いで過ごしていたか…っ!』
「まるで、遠距離恋愛してる恋人みたいな反応ね。案外、ななしは寂しがりやなトコあるのねぇ。」
クスクスと、前と変らない調子で話す徐倫。
ホントにどれだけ心配したのか、わかってるのかしら…。
『ねぇ、徐倫なんでロメオの電話からかけてるの?なにしてるの?もう「ななし」――!』
「ごめん。いまはやらなきゃいけないことがあるの。」
今まで聴いたことのない、凛とした彼女の声がした。
運命と立ち向かう強さを表したような―そんな声。
寂しがり屋だったはずの彼女はもうそこにはなく、美しい強さを、そして…どこか遠くに行ってしまうような儚さを感じさせた。
彼女は一呼吸置き、そして
「全てが…全てが終わったらまたショッピングに行きましょ!」
――電話は途切れ――
――その約束は果たされないまま――
――時は加速する――
2014/09/08