電話で5題
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うきうき気分でお洒落して、最高に「ハイ」って感じで出かけた朝。
黒い雲に大雨、最悪な気分の今。
―本日は全国的に快晴。一日雨の心配はないでしょう。―
今日のお天気おねーさんはそう言っていたのに…。
杜王駅の改札を出た私は、家族に迎えに来てもらうよう電話するために、電話ボックスに入る。
しかし、財布の中にはテレフォンカードも10円も無い。
仕方なく100円硬貨を入れてから気付く―
『…あ、今日は家族みんな出かけてるんだった…。』
このまま駅で雨宿りしてみようかとも思ったが、ふいに思いついた番号をプッシュする。
すべて番号を押し終わると、無機質なコール音が鳴り始めた。
1コール、2コール、3コール……誰もいないのかな…?
そう思い、受話器を置こうとしたとき、
「…はい。東方ですけどぉ~?」
聞きなれた声が電話に出た。
『あ、仗助?私だよ、ななし』
「なんだななしかよォ~!今ゲームいいとこだったのに慌てて出ちまったじゃねぇか。」
『あはは、ごめんごめん!』
「…で、どうしたんだよ?」
『いや、どうしたんだろうね?』
「そっちから電話掛けたくせに疑問形なのかよ!」
『なんとなく掛けちゃった…かな。』
そう、なんとなく。
なんとなく彼と話してみたくなっただけ。
雨って意外に人をセンチメンタルな気分にさせるのね、なんて一瞬思ったけれど、
せっかく100円いれたんだから、その分話さないと損だよね、と現実的な思考が働く。
「ななしいま家にいるんじゃねぇの?」
『お天気おねーさんに騙されちゃって、傘を持たずに出掛けちゃってさ~。
今は杜王駅で足止めくらっちゃったんだよね。』
いや、参ったねこりゃ。と言えばいつものノリでレスポンスがあると思いきや、相手は沈黙。
『仗助?どうしたの?』
「…ちょっとそこで待ってろ。」
そう言うや否や、プツッと電話が切れる。
『…まだ10円分も話してないのに…!100円もったいないでしょうが!』
100円を使用したことも相手はわかるはずもないのだが、突然切れた通話に思わず八つ当たりしてしまう。
電話は終わったのだが、電話ボックスを一歩出たら濡れてしまいそうだったのでそのまま中で言われた通りに仗助を待つことにした。
幸いにも電話ボックスに列はできていないみたいだし。
ボーっとしているのもなんなので、黄色い電話帳で友達の家の電話番号を探してみる。
そんな遊びに耽ってしばらくすると、コンコンと外から叩く音がした。
『え?仗助…わざわざ来てくれたの?』
「…おー。」
『ゲーム、いいトコなんじゃなかったの?』
「雨ん中傘持ってなくて困って電話してくるヤツをほおっておけないだろ?フツー。」
そういうと、開いてる傘の反対の手に持った傘を差し出してくる仗助。私は素直にそれを受け取る。
彼女でもなんでもない、ただの昼食を一緒に食べるだけの女友達のために雨の中走って迎えに来てくれるなんて…
ああ、こういうところが女子に人気のある理由なのね。この天然め。
しかし私は彼が意外と純情なのを知っている。
『ね、どうせなら相合傘しよーよ?』
「ばっ…何言ってんだオメー!」
予想通り顔を真っ赤にする仗助。
冗談だよ、と言おうとしたとき片腕を引っ張られる…あれ?
『じょ…仗助!?』
「文句はナシだぜ?言い出したのはそっちなんだからよぉ。」
赤い顔をしながら、私の腕を引っ張り歩き出す彼。
誰にでもそう言われたらこういうことするの?と問えば、
「好きなヤツにだけに決まってるだろ。」
と真っ赤な顔をして答える彼をみて、私も純情なんだなぁと同じく真っ赤な顔をして思った。
2014/01/08
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