季節イベント
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秋。
それは読書の季節。
秋。
それは底知れぬ食欲を生む季節。
秋。
それは……血肉沸き、心躍る運動の季節――
『…と、いうわけで今日は運動会なんです。』
「誰に言ってんだぁ?ななし?」
いやいや、仗助君なんでもありません。そう言って笑ってごまかすななし。
ぶどうヶ丘高校では雲一つない晴天の中、運動会が行われていた。
ななしは仗助と億泰と同じ白組で、由花子と康一は紅組。紅組からは、由花子の康一へのラブラブパワーが半端なく伝わってきている。
運動会はとりわけ嫌いでも無く、特別好きというわけでもないななしは、序盤の100m走を終えて白組の応援に専念していた。
《次は、借り物競争です。出場する生徒は南門前に集合してください。》
「おっ!俺らの出番だぜぇ~、仗助!」
「そーだな、いっちょ行ってくるかぁ!」
『頑張ってね。仗助君、億泰君!』
次の借り物競争は、午前のラストを飾る目玉種目。
二人は面白そうだからと、この種目の出場に立候補し張り切っていた。
【面白そうだから】という判断基準が、見た目に似合わず少年っぽいなとななしは密かに思っていたのだった。
アナウンスに従って移動し、順に入場を終えた仗助と億泰は、自分のレースがくるまで暇を持て余し、他の生徒と同様に他愛もない話をしていた。
「もしもよォ~、拾った紙に【好きなヤツを連れて来い】って書いてあったら、億泰お前ダレ連れてくるんだ?」
「ん~~~……ななしかなぁ?」
「んなっっ!!ななしだとォ~?!」
「なにそんなに驚いてんだ?」
「い…いや、なんでななしなのかな~って思ってよぉ~…!」
「オレに声かけてくれる女なんてアイツだけだし、話すと面白いからなァななしは。だからフツーに好感持てるぜ。」
(な、な~んだ。そういうことね~ん…。)
内心ほっとする仗助は、精神的動揺を悟られないよう億泰から視線を外す。
実はこの男、ななしにベタ惚れなのである。周りにはバレバレなのだが、なぜか億泰は気づいていない。もちろん、ななし本人も……。
レースも滞りなく進んでいき、いよいよ仗助たちの番となる。
《位置について…よ~い…ドン!》
スタートの合図を聞き、勢いよく飛び出す仗助。恵まれた躯体を持ち、運動神経のいい彼は運動系の大会では大活躍だ。ほかの選手を引き離し、目標の紙の元へ近づいていく。
あちこちで黄色い声援が飛んでいるのが聞こえてくる中、この声にななしの声があればいいなと思いつつ目の前の紙を拾う。そこには――
『あ!次、仗助君だ!頑張ってぇ~!』
応援席から仗助の姿を見つけたななしは、力いっぱい応援をする。他の生徒が追いつけないまま、一番最初に紙を拾った。と、彼が一瞬固まった姿がななしの目に映った。
どうしたのだろうとななしが思っていると、仗助が白組の応援席に向かって走ってくる。その姿がだんだんと近づきて、ついにななしの目の前で止まった。
『…?何を借りることになったの?仗助君。』
「ななしっ!一緒に走ってくれ!」
『えぇっ?!』
ななしの返事を待たずに、ななしの手を取ると仗助は走り出した。
女子生徒の悲鳴と、男子生徒の冷やかしの声を後ろに聞きながら、仗助に引っ張られている腕を頼りにななしも走り出す。
お互いの握った手は確かな熱を帯びてゆく。
仗助に引っ張られながら走っても息切れしないのは、自分がついていけるペースで走ってくれているからなのだと、ななしは彼の優しさを感じていた。
だんだんとゴールに近づいていくにつれ、仗助は放したくないというように力強くななしの手を握る。
『ねっ…!仗助君!紙には…っ、なんて書いてあったのっ?』
仗助はチラリと後ろのななしを見やり、言う。
「それは、無事に1位になったら教えてあげるッスよ!」
『えぇ~?!な…なんでぇ?』
「ホラ、もたもたしてると億泰がゴールしちまうぜ?」
その言葉に、ななしは別のレーンを見ると、確かにすぐ後ろまで億泰が迫ってきていた。
お、億泰君…なんでお弁当持って走ってるんだろう…なんて呑気に考えながらも、なぜ自分が仗助に選ばれたのかを知りたいと思ったななしは抜かされぬようラストスパートをかける。
『で、でもさ…っ』
「?」
息を切らしながらにっこりと笑みを浮かべ、仗助の目をしっかりと見て話しかけるななし。
『理由はなんでも…はぁっ…こうやって…、仗助君と手をつないでっ…はぁはぁ、走るのって…結構幸せかもっ!』
「…~~――っ!グレートッ…!」
二人がゴールテープを切るまで、あと少し――
――――――――――
2018/10/31
それは読書の季節。
秋。
それは底知れぬ食欲を生む季節。
秋。
それは……血肉沸き、心躍る運動の季節――
『…と、いうわけで今日は運動会なんです。』
「誰に言ってんだぁ?ななし?」
いやいや、仗助君なんでもありません。そう言って笑ってごまかすななし。
ぶどうヶ丘高校では雲一つない晴天の中、運動会が行われていた。
ななしは仗助と億泰と同じ白組で、由花子と康一は紅組。紅組からは、由花子の康一へのラブラブパワーが半端なく伝わってきている。
運動会はとりわけ嫌いでも無く、特別好きというわけでもないななしは、序盤の100m走を終えて白組の応援に専念していた。
《次は、借り物競争です。出場する生徒は南門前に集合してください。》
「おっ!俺らの出番だぜぇ~、仗助!」
「そーだな、いっちょ行ってくるかぁ!」
『頑張ってね。仗助君、億泰君!』
次の借り物競争は、午前のラストを飾る目玉種目。
二人は面白そうだからと、この種目の出場に立候補し張り切っていた。
【面白そうだから】という判断基準が、見た目に似合わず少年っぽいなとななしは密かに思っていたのだった。
アナウンスに従って移動し、順に入場を終えた仗助と億泰は、自分のレースがくるまで暇を持て余し、他の生徒と同様に他愛もない話をしていた。
「もしもよォ~、拾った紙に【好きなヤツを連れて来い】って書いてあったら、億泰お前ダレ連れてくるんだ?」
「ん~~~……ななしかなぁ?」
「んなっっ!!ななしだとォ~?!」
「なにそんなに驚いてんだ?」
「い…いや、なんでななしなのかな~って思ってよぉ~…!」
「オレに声かけてくれる女なんてアイツだけだし、話すと面白いからなァななしは。だからフツーに好感持てるぜ。」
(な、な~んだ。そういうことね~ん…。)
内心ほっとする仗助は、精神的動揺を悟られないよう億泰から視線を外す。
実はこの男、ななしにベタ惚れなのである。周りにはバレバレなのだが、なぜか億泰は気づいていない。もちろん、ななし本人も……。
レースも滞りなく進んでいき、いよいよ仗助たちの番となる。
《位置について…よ~い…ドン!》
スタートの合図を聞き、勢いよく飛び出す仗助。恵まれた躯体を持ち、運動神経のいい彼は運動系の大会では大活躍だ。ほかの選手を引き離し、目標の紙の元へ近づいていく。
あちこちで黄色い声援が飛んでいるのが聞こえてくる中、この声にななしの声があればいいなと思いつつ目の前の紙を拾う。そこには――
『あ!次、仗助君だ!頑張ってぇ~!』
応援席から仗助の姿を見つけたななしは、力いっぱい応援をする。他の生徒が追いつけないまま、一番最初に紙を拾った。と、彼が一瞬固まった姿がななしの目に映った。
どうしたのだろうとななしが思っていると、仗助が白組の応援席に向かって走ってくる。その姿がだんだんと近づきて、ついにななしの目の前で止まった。
『…?何を借りることになったの?仗助君。』
「ななしっ!一緒に走ってくれ!」
『えぇっ?!』
ななしの返事を待たずに、ななしの手を取ると仗助は走り出した。
女子生徒の悲鳴と、男子生徒の冷やかしの声を後ろに聞きながら、仗助に引っ張られている腕を頼りにななしも走り出す。
お互いの握った手は確かな熱を帯びてゆく。
仗助に引っ張られながら走っても息切れしないのは、自分がついていけるペースで走ってくれているからなのだと、ななしは彼の優しさを感じていた。
だんだんとゴールに近づいていくにつれ、仗助は放したくないというように力強くななしの手を握る。
『ねっ…!仗助君!紙には…っ、なんて書いてあったのっ?』
仗助はチラリと後ろのななしを見やり、言う。
「それは、無事に1位になったら教えてあげるッスよ!」
『えぇ~?!な…なんでぇ?』
「ホラ、もたもたしてると億泰がゴールしちまうぜ?」
その言葉に、ななしは別のレーンを見ると、確かにすぐ後ろまで億泰が迫ってきていた。
お、億泰君…なんでお弁当持って走ってるんだろう…なんて呑気に考えながらも、なぜ自分が仗助に選ばれたのかを知りたいと思ったななしは抜かされぬようラストスパートをかける。
『で、でもさ…っ』
「?」
息を切らしながらにっこりと笑みを浮かべ、仗助の目をしっかりと見て話しかけるななし。
『理由はなんでも…はぁっ…こうやって…、仗助君と手をつないでっ…はぁはぁ、走るのって…結構幸せかもっ!』
「…~~――っ!グレートッ…!」
二人がゴールテープを切るまで、あと少し――
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2018/10/31
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