短編
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「おい、カマ野郎ヘマすんじゃねぇぞ」
「その言葉そっくりそのままお返しするわ」
普他所行きのドレスに普段以上に粧し込んだオレの隣にはホワイトのスーツを着込んだサンジ。
その逞しい腕に指を絡めたら嫌そうな顔をされた。
(見た目は)こんな絶世の美女というのに失礼な話だ。
時刻。夜19時。グランドラインのとあるとある島のとあるパーティー会場にオレとサンジは乗り込んだ。
数々の富豪らが呼ばれる本日のパーティーに、内密で最悪の世代ほどではないが、それに近しい海賊たちが出入りするとの情報。
「折角停泊しているんだし、敵船の情報を知ることも生き残る術!」というナミの命令により、海賊という身分を隠し、潜入捜査とあいなったわけだ。
男女のカップルが大半のこのパーティーで、潜入にいかにもムカなさそうというか潜入をそもそもする気のないルフィやゾロ、顔が割れているナミやロビン、人型ではないチョッパーを候補から外し、ウソップの「リタとサンジでいいだろ、リタは変装で女になるし、サンジは顔割れてねーし」という一声で、人選は決した。
ナミの命令ならば靴でも喜んで舐めるだろうサンジと、情報掴んだら小遣いあげるわという言葉に唆されたリタは、当然のようにお互いを詰りながら美男美女としてごく自然に会場に溶け込んでいた。
「やぁ。見ない顔だね。はじめましてということでどうだね、いっぱい!」
数分後、洒落たスーツを着込んだ恰幅の良い男と、すらりとした長身に真紅のドレスを纏った女が近づいてきた。
うーん。
困った、めんどい
オレ酒はあまり強くねぇんだよなぁ。
然しここで疑われては元も子もない。仕方ねぇか。
リタがうっそりとした笑みを浮かべて返事をしようとしたところで
「彼女はオレの連れでしてね。あまり飲ませるわけにはいかねぇが、代わりにオレがお相手しますよ」
鳥肌が立つようなイイ声で、サンジが間に入ってきた。
普段の態度を考えればその甘い態度はキモいことこの上ないが、今回ばかりは助かった!
◇
「君、いい飲みっぷりだねぇ」
「まだまだありますよ」
知らなかった、サンジって酒強いんだ。
男とそつなく会話をしながらグラスを煽るサンジを横目に捉えつつ、リタは男の連れの女と会話していた。
その多くはブランド物の話だとか、このパーティーの顔見知りは誰だとかいう話で、リタもリタで人当たりの良さを生かし、女性らしい柔和さを持って返答していた。
しかし。
「……」
どうも雰囲気がおかしい。
楽しげに男たちは会話をしている物の、飲むたびにグラスに注がれる。そのピッチは明らかに上がっており、サンジもなかなかキツいのではないだろうか。
「あの、わたしにも少し……」
と空のグラスを差し出されたところ、サンジが手で制した。
男が楽しそうに「そういえば」と柔らかく言うや否や、
「お前ら、麦わらの一味だな」
と続けた。
ばれてた!?
刹那、サンジがガシャンとテーブルを蹴り倒した。相次ぐグラスの破裂音。
どうやら、今日のパーティー会場に集まる海賊どもは、オレたちを抹殺することで徒党を組んだらしい。
「リタ、逃げるぞ」
「ええ」
目の前の女にパシャんと酒の入ったグラスを振り撒き一瞬の隙を作ると、パンプスを掻き鳴らして、オレはサンジと共に走り出した。
走り出して数分も経たないうちに、サンジがふらついた。
「酔ってんの!?」
「酔ってねぇよこんなの平気だ」
「酔ってんじゃねぇか!!」
見れば顔が青ざめている。
このやろう、やっぱり無理してたな!
「途中からやたら度数高くなったんだよ。素性がバレてんのはそこで気づいたが、こっちから仕掛けるにはタイミング取れなくてな……」
なるほど、それでオレが助け舟出そうとしたとき制したのか。
追手の声が聴こえる。パーティー会場から船まではなかなかの距離で、夜も更けて視界も暗く、この状態では逃げ切れそうにない。
「あそこだ」
オレは咄嗟に裏路地へふらつくサンジを連れ込んだ。
人気がないことを確認すると、サンジはずるずるとへたり込んだ。呼吸が少し浅い。相当アルコールが回ってるんだろう。
「水でもあればいいんだけど……。大丈夫か?」
「全くもって大丈夫だ。余計な心配すんじゃねぇ」
うざったそうに答えるが、あまり頭は回っていなさそうである。いちいち癪に触る野郎だが、今は喋るのも辛いのだろう。相手にしている場合ではない。
窮屈なスーツは厳しいだろう。サンジの側にしゃがんで、ぶちりと丁寧に締められていたシャツの第一ボタンを外す。
「……」
胡乱な目で、サンジはこちらの手元をずっと見据えている。
「なんだよ」
「いや、……お前女みてぇだなって」
「そりゃそうだろオレは可愛いから」
「……」
「なんか言えよ、キモいな」
生産性のない会話をしながら、オレは天を仰ぐ。
オレたちを見守っているのか、或いは照らして敵に居場所を伝えようとしているのか、ゾッとするほど明るく月が輝いていた。
(続く)
「その言葉そっくりそのままお返しするわ」
普他所行きのドレスに普段以上に粧し込んだオレの隣にはホワイトのスーツを着込んだサンジ。
その逞しい腕に指を絡めたら嫌そうな顔をされた。
(見た目は)こんな絶世の美女というのに失礼な話だ。
時刻。夜19時。グランドラインのとあるとある島のとあるパーティー会場にオレとサンジは乗り込んだ。
数々の富豪らが呼ばれる本日のパーティーに、内密で最悪の世代ほどではないが、それに近しい海賊たちが出入りするとの情報。
「折角停泊しているんだし、敵船の情報を知ることも生き残る術!」というナミの命令により、海賊という身分を隠し、潜入捜査とあいなったわけだ。
男女のカップルが大半のこのパーティーで、潜入にいかにもムカなさそうというか潜入をそもそもする気のないルフィやゾロ、顔が割れているナミやロビン、人型ではないチョッパーを候補から外し、ウソップの「リタとサンジでいいだろ、リタは変装で女になるし、サンジは顔割れてねーし」という一声で、人選は決した。
ナミの命令ならば靴でも喜んで舐めるだろうサンジと、情報掴んだら小遣いあげるわという言葉に唆されたリタは、当然のようにお互いを詰りながら美男美女としてごく自然に会場に溶け込んでいた。
「やぁ。見ない顔だね。はじめましてということでどうだね、いっぱい!」
数分後、洒落たスーツを着込んだ恰幅の良い男と、すらりとした長身に真紅のドレスを纏った女が近づいてきた。
うーん。
困った、めんどい
オレ酒はあまり強くねぇんだよなぁ。
然しここで疑われては元も子もない。仕方ねぇか。
リタがうっそりとした笑みを浮かべて返事をしようとしたところで
「彼女はオレの連れでしてね。あまり飲ませるわけにはいかねぇが、代わりにオレがお相手しますよ」
鳥肌が立つようなイイ声で、サンジが間に入ってきた。
普段の態度を考えればその甘い態度はキモいことこの上ないが、今回ばかりは助かった!
◇
「君、いい飲みっぷりだねぇ」
「まだまだありますよ」
知らなかった、サンジって酒強いんだ。
男とそつなく会話をしながらグラスを煽るサンジを横目に捉えつつ、リタは男の連れの女と会話していた。
その多くはブランド物の話だとか、このパーティーの顔見知りは誰だとかいう話で、リタもリタで人当たりの良さを生かし、女性らしい柔和さを持って返答していた。
しかし。
「……」
どうも雰囲気がおかしい。
楽しげに男たちは会話をしている物の、飲むたびにグラスに注がれる。そのピッチは明らかに上がっており、サンジもなかなかキツいのではないだろうか。
「あの、わたしにも少し……」
と空のグラスを差し出されたところ、サンジが手で制した。
男が楽しそうに「そういえば」と柔らかく言うや否や、
「お前ら、麦わらの一味だな」
と続けた。
ばれてた!?
刹那、サンジがガシャンとテーブルを蹴り倒した。相次ぐグラスの破裂音。
どうやら、今日のパーティー会場に集まる海賊どもは、オレたちを抹殺することで徒党を組んだらしい。
「リタ、逃げるぞ」
「ええ」
目の前の女にパシャんと酒の入ったグラスを振り撒き一瞬の隙を作ると、パンプスを掻き鳴らして、オレはサンジと共に走り出した。
走り出して数分も経たないうちに、サンジがふらついた。
「酔ってんの!?」
「酔ってねぇよこんなの平気だ」
「酔ってんじゃねぇか!!」
見れば顔が青ざめている。
このやろう、やっぱり無理してたな!
「途中からやたら度数高くなったんだよ。素性がバレてんのはそこで気づいたが、こっちから仕掛けるにはタイミング取れなくてな……」
なるほど、それでオレが助け舟出そうとしたとき制したのか。
追手の声が聴こえる。パーティー会場から船まではなかなかの距離で、夜も更けて視界も暗く、この状態では逃げ切れそうにない。
「あそこだ」
オレは咄嗟に裏路地へふらつくサンジを連れ込んだ。
人気がないことを確認すると、サンジはずるずるとへたり込んだ。呼吸が少し浅い。相当アルコールが回ってるんだろう。
「水でもあればいいんだけど……。大丈夫か?」
「全くもって大丈夫だ。余計な心配すんじゃねぇ」
うざったそうに答えるが、あまり頭は回っていなさそうである。いちいち癪に触る野郎だが、今は喋るのも辛いのだろう。相手にしている場合ではない。
窮屈なスーツは厳しいだろう。サンジの側にしゃがんで、ぶちりと丁寧に締められていたシャツの第一ボタンを外す。
「……」
胡乱な目で、サンジはこちらの手元をずっと見据えている。
「なんだよ」
「いや、……お前女みてぇだなって」
「そりゃそうだろオレは可愛いから」
「……」
「なんか言えよ、キモいな」
生産性のない会話をしながら、オレは天を仰ぐ。
オレたちを見守っているのか、或いは照らして敵に居場所を伝えようとしているのか、ゾッとするほど明るく月が輝いていた。
(続く)
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