prologue
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「……た」
クールな女性だと思ってた。だからこそ、あのサンジが彼女を吊し上げている光景は現実味を欠いていた。彼女に対し、常ならぬ態度で「男だ」と断定したその瞬間、彼女もこれまでの掴み所のない泰然とした様子から豹変し、俯いていた。
「た?」
「煙草くさいんだよ、あんた!」
豹変したリタの言葉が、声音が、表情が、全てを物語っていた。
先ほど前の好き通った女性らしい声とは違って、ドスが効いていた。それでも、男性特有の低い声とは異なりその響きは随分と中性的であった。
先程までと顔が変わったわけでもないのに、薄い唇をきっと引き結びサンジに憎悪を滲ませるその瞳は、なるほど男性と言われれば男性らしい。表情ひとつでこうも変わるものかと、ナミは密やかに感嘆した。先ほどまでの彼女の姿は、演技力の賜物であったのだろう。
「なっ……おれがタバコ吸ってようがいまいがお前に関係ねェだろ!」
リタの豹変ぶりに思わず面食らったサンジが、我に返ったように反論する。海賊に嫌煙者など聞いたことはない。面と向かって煙草に不快を表されたのは初めてなのかもしれない。
「なんだあいつ、別人みたいに。やっぱ敵かぁ?」
思わず抜刀しようとしたゾロを
「いや、というより……」
とロビンが遮った。
「わかった! あんた、タバコ吸って頭スカスカになっちゃったんだろ! だからオレから財布盗られても鼻の下伸ばしてやがったんだ可哀想でちたね〜」
「カッチーン! 言わせておけばてめぇ、麗しいレディの姿を騙りやがって! このオカマ野郎!」
「ガーン! この多様性の時代にそんな物言いするやつがいるなんて……まるで生きた化石だな! 前衛的なのはその眉だけってわけ。がんばれおしゃれ眉毛! 時代を進めるのはお前しかいない!」
「馬鹿にしてんのかてめぇ!!」
「……両方馬鹿なだけだと思うわ」
「なんだ、馬鹿同士息ピッタリじゃねぇか」
ロビンが笑いながらいうのに対し、ナミは呆れてため息を付いた。
「ん? なんか騒がしいな」
急に街の方からガヤガヤと争いの声が聴こえる。ゾロが船縁から身を乗り出すと、船への帰還を待っていたルフィ、ウソップ、チョッパーが
海軍を大勢引き連れて走っていた。
「あ、ゾロ! ただいま! なんか海軍に見つかっちまってよ〜はは参ったまいった!」
「何やっとるんじゃお前ら!!!」
「大人しく投降しろモンキー•D•ルフィ! に長っ鼻! あとたぬき!」
「この無銭飲食! 食べた肉の代金払いなさいよ!」
「おれはたぬきじゃねぇ!」
「たっ、助けてくれ〜ゾロ君〜!」
てんやわんやである。
「ったく、仕方ねぇ。おいナミ、ロビン! ……にそこの馬鹿はいいや。アホ船長が海軍連れてきやがった、ルフィたち乗せ次第出港するぞ!」
「分かった! 全く、何やってるのよあいつら!」
ゾロの声を皮切りに、ナミ、ロビンが出港の準備に取り掛かる。
犬も食わない喧嘩をサンジと繰り広げていたリタは、そこで初めて現状に気づく。
「ん? 待てよおい、何出港しようとしてるんだあんたら!?」
「あぁ? ……あのクソ船長またか。んナミさーん、ロビンちゅあーん! おれも手伝うね!!」
今し方自分とメンチを切り合っていたはずのサンジが身を翻し、甲板をかけていく。
「は? おいあんた、オレはこの島から出る気なんてねぇぞ! 降ろせ!」
「お前なんぞに構ってられるか! 勝手に下船しとけ!」
「フザケンナ! できるかぁ! せめて縄を解けぇー!!!」
リタの痛ましい叫びが晴渡った空と紺碧の海に虚しく響いた。
(「かまわねぇ! 撃ち殺せ!」)
(そんな叫声やら銃弾やらと一緒に、甲板に人間を超えた長さまで手を伸ばしたルフィがウソップとチョッパーを抱えて到着した。)
(「あっぶねー、おれゴム人間でよかった! ん? 誰だお前?」)
(「はじめましてスンマセンが下船させてください」)
クールな女性だと思ってた。だからこそ、あのサンジが彼女を吊し上げている光景は現実味を欠いていた。彼女に対し、常ならぬ態度で「男だ」と断定したその瞬間、彼女もこれまでの掴み所のない泰然とした様子から豹変し、俯いていた。
「た?」
「煙草くさいんだよ、あんた!」
豹変したリタの言葉が、声音が、表情が、全てを物語っていた。
先ほど前の好き通った女性らしい声とは違って、ドスが効いていた。それでも、男性特有の低い声とは異なりその響きは随分と中性的であった。
先程までと顔が変わったわけでもないのに、薄い唇をきっと引き結びサンジに憎悪を滲ませるその瞳は、なるほど男性と言われれば男性らしい。表情ひとつでこうも変わるものかと、ナミは密やかに感嘆した。先ほどまでの彼女の姿は、演技力の賜物であったのだろう。
「なっ……おれがタバコ吸ってようがいまいがお前に関係ねェだろ!」
リタの豹変ぶりに思わず面食らったサンジが、我に返ったように反論する。海賊に嫌煙者など聞いたことはない。面と向かって煙草に不快を表されたのは初めてなのかもしれない。
「なんだあいつ、別人みたいに。やっぱ敵かぁ?」
思わず抜刀しようとしたゾロを
「いや、というより……」
とロビンが遮った。
「わかった! あんた、タバコ吸って頭スカスカになっちゃったんだろ! だからオレから財布盗られても鼻の下伸ばしてやがったんだ可哀想でちたね〜」
「カッチーン! 言わせておけばてめぇ、麗しいレディの姿を騙りやがって! このオカマ野郎!」
「ガーン! この多様性の時代にそんな物言いするやつがいるなんて……まるで生きた化石だな! 前衛的なのはその眉だけってわけ。がんばれおしゃれ眉毛! 時代を進めるのはお前しかいない!」
「馬鹿にしてんのかてめぇ!!」
「……両方馬鹿なだけだと思うわ」
「なんだ、馬鹿同士息ピッタリじゃねぇか」
ロビンが笑いながらいうのに対し、ナミは呆れてため息を付いた。
「ん? なんか騒がしいな」
急に街の方からガヤガヤと争いの声が聴こえる。ゾロが船縁から身を乗り出すと、船への帰還を待っていたルフィ、ウソップ、チョッパーが
海軍を大勢引き連れて走っていた。
「あ、ゾロ! ただいま! なんか海軍に見つかっちまってよ〜はは参ったまいった!」
「何やっとるんじゃお前ら!!!」
「大人しく投降しろモンキー•D•ルフィ! に長っ鼻! あとたぬき!」
「この無銭飲食! 食べた肉の代金払いなさいよ!」
「おれはたぬきじゃねぇ!」
「たっ、助けてくれ〜ゾロ君〜!」
てんやわんやである。
「ったく、仕方ねぇ。おいナミ、ロビン! ……にそこの馬鹿はいいや。アホ船長が海軍連れてきやがった、ルフィたち乗せ次第出港するぞ!」
「分かった! 全く、何やってるのよあいつら!」
ゾロの声を皮切りに、ナミ、ロビンが出港の準備に取り掛かる。
犬も食わない喧嘩をサンジと繰り広げていたリタは、そこで初めて現状に気づく。
「ん? 待てよおい、何出港しようとしてるんだあんたら!?」
「あぁ? ……あのクソ船長またか。んナミさーん、ロビンちゅあーん! おれも手伝うね!!」
今し方自分とメンチを切り合っていたはずのサンジが身を翻し、甲板をかけていく。
「は? おいあんた、オレはこの島から出る気なんてねぇぞ! 降ろせ!」
「お前なんぞに構ってられるか! 勝手に下船しとけ!」
「フザケンナ! できるかぁ! せめて縄を解けぇー!!!」
リタの痛ましい叫びが晴渡った空と紺碧の海に虚しく響いた。
(「かまわねぇ! 撃ち殺せ!」)
(そんな叫声やら銃弾やらと一緒に、甲板に人間を超えた長さまで手を伸ばしたルフィがウソップとチョッパーを抱えて到着した。)
(「あっぶねー、おれゴム人間でよかった! ん? 誰だお前?」)
(「はじめましてスンマセンが下船させてください」)