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03
「誰だこいつ」
良い刀がないかと街に降りていた麦わらの一味剣士、ロロノア・ゾロがゴーイング•メリー号に帰ってくると、甲板の上の光景は異常であった。
帰ってきたばかりの自身に目をやるナミとニコ・ロビンはいつも通り。ただ、彼女たちに取り囲まれるようにして着座する人間の存在は常ならない。細めの腹は硬い縄でぐるぐると縛り上げられ、両手も後手に縛られていた。身動き一つしないその人間とは対照的に、項垂れた顔から落ちる茶色のロングヘアだけが風が吹く度にさらさらとたなびいていた。
「それが、彼女困ったさんなのよ。ナミが連れてきちゃって」
困ったといいながらも、その実どこか面白そうな声音でロビンがいう。
「海賊だって街中でばらされちゃたまらないからねぇ……」
どうしたものか、とナミは眉根を寄せてくだんの彼女を見つめた。
時は少しだけ遡る。ナミから金を奪おうとした少女は呆気なく同業者のナミに存在を看破され、捕まった。
混雑する街中で、大声をあげるでもないふたりのやり取りに気を留めるものはいなかった。
この街にも海軍は常住していることだろう。彼らに掏摸として突き出せればよかったのだが、いかんせんナミも海賊。海軍と接触することは避けたかった。
まあ財布も取られたわけでないし、お咎めなしで解放すると彼女の処遇を決めたところで
「すみませーん! この人、かいぞくで……」
とあろうことか街のど真ん中で要らんことを口走ろうとした彼女の口を慌てて塞ぎ、とりあえずメリー号に連行、といった経緯で現在に至る。
「お金に困っていたんです。本当に海賊だったのですね。ここに停泊していることは内緒にしますから、どうか私のことも見逃してくださいませんか?」
今までむっつりと黙り込んでいた彼女が、おずおずと口を開いた。
「なんだ、私のこと海賊だと知ってたわけじゃなかったの」
「どう見ても堅気じゃなさそうでしたから……。あなたがたにとっても悪い話ではないと思うんです」
丁寧な言葉遣いとは裏腹に、海賊に駆け引きを仕掛けるあたり肝が据わっている。海賊は彼女の言う通り堅気ではない。民間人の意識として、軽い窃盗で海軍に突き出されるのと正体のわからない海賊に喧嘩を売るのでは前者の方がよほど安全で正しいように思われるが……。
「てめえ、何者だ」
違和感を持ったゾロが尋ねた。人畜無害そうな顔をしていながら、街中で海賊だと叫ぼうとした行為と海賊船に捉えられても物おじしない態度が訝しかった。
「一般人……てわけじゃもちろんないんですけど、人様のお金を盗んで生計を立てているので。私も海軍にも目つけられているんです」
そういって、彼女は細い弓なりの眉を下げへにゃりと笑った。
「なるほどなあ。まあその話が嘘だろうが本当だろうが、今すぐ船を降ろすのは得策じゃねえな。通報されたらたまんねえ。残りのクルーがもう少しで帰ってくるはずだ。出航の直前でお前を降ろす。それで文句ないだろ?」
「ええ、ありがとうございます」
そう微笑を浮かべ答える彼女のあまりの清廉さに、どこか食えないやつだなという印象がゾロの胸中で色濃く残った。
(「ロビンちゅあん、ナミさんただいまー!」)
(いつも通り目を♡にしてときめかせながらもどこか哀愁漂うサンジの姿を見て、一瞬、彼女の表情が強張った)
「誰だこいつ」
良い刀がないかと街に降りていた麦わらの一味剣士、ロロノア・ゾロがゴーイング•メリー号に帰ってくると、甲板の上の光景は異常であった。
帰ってきたばかりの自身に目をやるナミとニコ・ロビンはいつも通り。ただ、彼女たちに取り囲まれるようにして着座する人間の存在は常ならない。細めの腹は硬い縄でぐるぐると縛り上げられ、両手も後手に縛られていた。身動き一つしないその人間とは対照的に、項垂れた顔から落ちる茶色のロングヘアだけが風が吹く度にさらさらとたなびいていた。
「それが、彼女困ったさんなのよ。ナミが連れてきちゃって」
困ったといいながらも、その実どこか面白そうな声音でロビンがいう。
「海賊だって街中でばらされちゃたまらないからねぇ……」
どうしたものか、とナミは眉根を寄せてくだんの彼女を見つめた。
時は少しだけ遡る。ナミから金を奪おうとした少女は呆気なく同業者のナミに存在を看破され、捕まった。
混雑する街中で、大声をあげるでもないふたりのやり取りに気を留めるものはいなかった。
この街にも海軍は常住していることだろう。彼らに掏摸として突き出せればよかったのだが、いかんせんナミも海賊。海軍と接触することは避けたかった。
まあ財布も取られたわけでないし、お咎めなしで解放すると彼女の処遇を決めたところで
「すみませーん! この人、かいぞくで……」
とあろうことか街のど真ん中で要らんことを口走ろうとした彼女の口を慌てて塞ぎ、とりあえずメリー号に連行、といった経緯で現在に至る。
「お金に困っていたんです。本当に海賊だったのですね。ここに停泊していることは内緒にしますから、どうか私のことも見逃してくださいませんか?」
今までむっつりと黙り込んでいた彼女が、おずおずと口を開いた。
「なんだ、私のこと海賊だと知ってたわけじゃなかったの」
「どう見ても堅気じゃなさそうでしたから……。あなたがたにとっても悪い話ではないと思うんです」
丁寧な言葉遣いとは裏腹に、海賊に駆け引きを仕掛けるあたり肝が据わっている。海賊は彼女の言う通り堅気ではない。民間人の意識として、軽い窃盗で海軍に突き出されるのと正体のわからない海賊に喧嘩を売るのでは前者の方がよほど安全で正しいように思われるが……。
「てめえ、何者だ」
違和感を持ったゾロが尋ねた。人畜無害そうな顔をしていながら、街中で海賊だと叫ぼうとした行為と海賊船に捉えられても物おじしない態度が訝しかった。
「一般人……てわけじゃもちろんないんですけど、人様のお金を盗んで生計を立てているので。私も海軍にも目つけられているんです」
そういって、彼女は細い弓なりの眉を下げへにゃりと笑った。
「なるほどなあ。まあその話が嘘だろうが本当だろうが、今すぐ船を降ろすのは得策じゃねえな。通報されたらたまんねえ。残りのクルーがもう少しで帰ってくるはずだ。出航の直前でお前を降ろす。それで文句ないだろ?」
「ええ、ありがとうございます」
そう微笑を浮かべ答える彼女のあまりの清廉さに、どこか食えないやつだなという印象がゾロの胸中で色濃く残った。
(「ロビンちゅあん、ナミさんただいまー!」)
(いつも通り目を♡にしてときめかせながらもどこか哀愁漂うサンジの姿を見て、一瞬、彼女の表情が強張った)