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02
「はっ、ちょろいな」
小走りする彼の薄桃色の髪がさらさらと風に流れた。穏やかな気候の観光島は、日中お店に通う家族連れやカップルで混み合っていた。その人混みのひとつにさらりと紛れ込むと、リタはややとすればくつくつとした笑い出してしまう恭悦を噛み殺した。
「あの金髪野郎、ぱっと見はなかなかのやり手に見えたが、俺の姿見た瞬間鼻の下伸ばしやがって。やっぱ、この格好は便利なよな」
人知れずそんなことを思いながら、さも出店を物色する体を取りながら財布の中身を手早く確認する。
「うわ、しけてんなァ。もう1人くらい掻っ払ってくるか」
今時の若者は懐が寂しいのだろうか。まぁ、人のこと言える年齢でもないがね。そんなことを考えつつ、人気のない裏道に飛び込んだ。
念には念を入れて。長く泥棒家業をやっていた上で身につけた特技だ。
人気がないのを確認し、立ち止まることなく歩きながら自然の流れで薄桃色の髪に指を突っ込んで一本一本絡ませた地毛から剥がしとる。この痛さには慣れねぇんだよな、と愚痴りながら、さらに人気がないのを確認するとカツラを取り去った。
後ろのリュックの背面ジッパーを開けて手早く突っ込み、代わりに茶色のエクステを取り出す。手早く装着すれば、成る程遠めに見れば先程の人物と同一とは思われまい。
落ちかけていたリップを掌でゴシゴシと拭って、これまた背面のリュックの中で器用に指先に取り出した桃色のリップで上書きした。
「まぁ、こんなもんかな」
だいぶ距離が出来たし、先ほどの男と会う確率も極めて低いだろう。最後に2way仕様のリュックのアジャスターを切り替え、ウエストポーチとして身体の前面に着用し直した。リタは鏡を見なくても自明の自分の容姿を想像して「やっぱこの格好もイケてるよなぁ、オレ」と惚れ惚れし次のカモを見つけて裏道を飛び出した。
「んんん、これもかわいい!」
元気なオレンジ色ショートヘア、同性から見ても美しいスタイルを誇るのナミは、アクセサリーを並べる出店を物色していた。
「これにしようかなぁ、そうだ、本当は一緒に船番だったのに遊びに行っていいって送り出してくれたロビンの分も買って行こう!」
可愛らしいものにときめく女性の姿は、いくつになっても可愛らしい。
そんな状態でフラフラと幾つもの出店を立ち回るナミに、軽い衝撃が走った。
「いたっ」
「あ、ごめんなさい! 私、急いでて……!」
「いや、思わず反射しちゃったけど痛くなかったわ。そんな謝らないで!」
自分の背丈と同じかそれより少し高いくらいの少女がぶつかってきたのだ。
「ありがとうございます」
申し訳なさそうに眉毛を寄せ、走り去る少女。彼女を笑顔で見送るナミ。
ことはそれで済んだはずだった。
が。
「えっ」
ナミから幾分離れたところで、少女が先の声からは幾分か低く、そして素っ頓狂な声を上げた。
「かかったわね、他の奴らは知らないけどこの私から財布を奪おうったって、そうはいかないわ」
奪い取ったはずの財布からキラキラとか細く伸びた透明な鎖。一瞬の動揺が見逃される訳はなく、気付いたときにはリタはナミにギリギリと小さな頭を押さえつけられていた。
(「このオレが……?」 盗賊家業でこれまで生きてきたリタにとっての、最上級の不覚であり忸怩)
「はっ、ちょろいな」
小走りする彼の薄桃色の髪がさらさらと風に流れた。穏やかな気候の観光島は、日中お店に通う家族連れやカップルで混み合っていた。その人混みのひとつにさらりと紛れ込むと、リタはややとすればくつくつとした笑い出してしまう恭悦を噛み殺した。
「あの金髪野郎、ぱっと見はなかなかのやり手に見えたが、俺の姿見た瞬間鼻の下伸ばしやがって。やっぱ、この格好は便利なよな」
人知れずそんなことを思いながら、さも出店を物色する体を取りながら財布の中身を手早く確認する。
「うわ、しけてんなァ。もう1人くらい掻っ払ってくるか」
今時の若者は懐が寂しいのだろうか。まぁ、人のこと言える年齢でもないがね。そんなことを考えつつ、人気のない裏道に飛び込んだ。
念には念を入れて。長く泥棒家業をやっていた上で身につけた特技だ。
人気がないのを確認し、立ち止まることなく歩きながら自然の流れで薄桃色の髪に指を突っ込んで一本一本絡ませた地毛から剥がしとる。この痛さには慣れねぇんだよな、と愚痴りながら、さらに人気がないのを確認するとカツラを取り去った。
後ろのリュックの背面ジッパーを開けて手早く突っ込み、代わりに茶色のエクステを取り出す。手早く装着すれば、成る程遠めに見れば先程の人物と同一とは思われまい。
落ちかけていたリップを掌でゴシゴシと拭って、これまた背面のリュックの中で器用に指先に取り出した桃色のリップで上書きした。
「まぁ、こんなもんかな」
だいぶ距離が出来たし、先ほどの男と会う確率も極めて低いだろう。最後に2way仕様のリュックのアジャスターを切り替え、ウエストポーチとして身体の前面に着用し直した。リタは鏡を見なくても自明の自分の容姿を想像して「やっぱこの格好もイケてるよなぁ、オレ」と惚れ惚れし次のカモを見つけて裏道を飛び出した。
「んんん、これもかわいい!」
元気なオレンジ色ショートヘア、同性から見ても美しいスタイルを誇るのナミは、アクセサリーを並べる出店を物色していた。
「これにしようかなぁ、そうだ、本当は一緒に船番だったのに遊びに行っていいって送り出してくれたロビンの分も買って行こう!」
可愛らしいものにときめく女性の姿は、いくつになっても可愛らしい。
そんな状態でフラフラと幾つもの出店を立ち回るナミに、軽い衝撃が走った。
「いたっ」
「あ、ごめんなさい! 私、急いでて……!」
「いや、思わず反射しちゃったけど痛くなかったわ。そんな謝らないで!」
自分の背丈と同じかそれより少し高いくらいの少女がぶつかってきたのだ。
「ありがとうございます」
申し訳なさそうに眉毛を寄せ、走り去る少女。彼女を笑顔で見送るナミ。
ことはそれで済んだはずだった。
が。
「えっ」
ナミから幾分離れたところで、少女が先の声からは幾分か低く、そして素っ頓狂な声を上げた。
「かかったわね、他の奴らは知らないけどこの私から財布を奪おうったって、そうはいかないわ」
奪い取ったはずの財布からキラキラとか細く伸びた透明な鎖。一瞬の動揺が見逃される訳はなく、気付いたときにはリタはナミにギリギリと小さな頭を押さえつけられていた。
(「このオレが……?」 盗賊家業でこれまで生きてきたリタにとっての、最上級の不覚であり忸怩)