Water Seven
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
真っ白な氷は、降り注ぐ日華をキラキラと反射して、眩しいかった。
いつだって、楽しくて気の置けない時間というのは、いつだって終わってしまう可能性と隣り合わせだ。
今こそ実際にそうで、これまで仲良くおじいさんと馬の望みを叶えるために労働していた海軍大将の態度が豹変し、抵抗しようとしたロビンが氷漬けになり、助けようとしたサンジもゾロも戦闘不能になって、「一騎打ちをする」と決意したルフィを残して、クルーは去った。
リタはその光景を、当然のように、そして少しだけ残念そうに眺めながら、今後のことを思案していた。
「……で? お前さんの隣にいるのは?」
「こいつはリタだ! 俺の仲間だけど今は関係ねぇ! つーか何ぼーっとしてんだリタ! お前も早く船へ帰れ!」
「……と言ってますけど?」
青雉の視線を受け、リタはふーっと長く息を吐いた。
「うーん、仲間、かぁ。少なくとも海賊ではないよね。青雉さんは、僕が海賊に拉致られた哀れな民間人だって言ったら、保護してくれるの?」
「まぁ、そうなるわな」
「身寄りがないって言ったら?」
「探してはやるが……まぁ、ある程度闘う気があるのなら海兵になるのもありだ」
「……ちょっと、人様のものくすねてきたりした前歴が」
「あぁ? お前さん、掏摸なのかよ。まぁ、こんな海賊どもがのさばる時代だ。きちんと刑に付して償えば、海軍にもなれる」
「……だよねぇ」
リタは苦笑し、
「……君たちの邪魔はしない。見届けるよ。仮にも同じ船に乗っていたんだ、遠くからならいいよね」
そう言って軽やかな足取りでルフィと青雉から表情が伺うことができない程度離れた。
結果は初めから明らかだった。
リタが船長だと認めた男、ルフィだって、海軍大将を任す実力があるかといえば、そうではない。
けれど、どこかで呆然と、ルフィが勝たないかなぁだなんて、淡く期待していたのだ。
だから、パキパキとその身体の全てが氷漬けになった時、流石にリタは息を呑んだ。
「あの女を船に乗せるということは……そういう事なんだ! モンキー•D•ルフィ!」
青雉が振り上げた足でルフィの身体を砕くその瞬間、
リタは飛んだ。
飛んでくると思った足を間一髪で避けるようルフィの氷像を抱えた身を翻し、背中で地面を滑る。
「ハァ、ハァ……くそ、ハッタリかよ」
青雉の足は、ルフィではなく彼を凍らせた余波で凍てついたほんの僅か隣の空間を砕いていた。
「……民間人って言ったな。お嬢さん。…「剃」を使うなんて何もんだ、お前さん」
青雉が胡乱な目でリタを見つめる。
そのあまり代わり映えしない表情こそいつもと変わらない、だらけ切ったものであったけれど、その声音の奥には流石に海軍大将としての責任が滲んでいた。
リタ はくつくつと喉の奥を鳴らして笑った。
「……民間人には間違えねぇけど、
オレは、海軍には死んでも入らねェ」
「麦わらの仲間ってか……。ここで命は取らねえが、次はないよ」
「……ハストーン•グライド」
突如氷の世界に落ちた、この場には似つかわしくないある男の名に、青雉の眉が少し上がる。
「……海軍大将さんともなれば知ってるよな。10年前に起きた、あんたらがもみ消した不祥事!」
「お前は……」
「あいつに使役させられた女がいたはずだ。彼女、どうなった」
一面氷の世界に、沈黙が落ちる。
「あらら。ニコ•ロビンに続いて、とんでもないやつが乗ってるもんだ」
青雉はやっていられないというように、緩慢に頭をかいた。
「ここまで言えばオレが誰だかも分かるだろう。グライド教官殺しさ。知ってるなら、彼女の安否を話せ!」
さっきまでの少女らしい形姿からは打って変わったリタの表情は真剣で、深刻で、その剣幕に青雉はさも面倒だというようにため息を吐いた。
「……お前さんには悪いが、あの女の安否はしらねぇ。オレは今でこそ大将なんぞやってるが、そもそもCPは海軍というより外郭団体に近くてね。そちらのやつの上層部しか知らねえんじゃねえか」
「……そうか。悪かったな」
リタは素直に引いた。もしも知っているのなら、と一縷の望みをかけていたのだが。
「……それと、お前さんは一つ勘違いしている」
「え?」
「ハストーン•グライドは死んでねぇ」
「……!?? 嘘だ! だって、オレが……!」
顔面蒼白になって、縋るように青雉を見る。
「残念ながら嘘じゃねえよ。……オレがお前さんに伝えられるのはこのくらいだな。……お前さんの仲間が来てる、そいつを背負ってさっさと消えるこった」
「……グライドは、海軍にいるってことか……」
青雉がリタにちらりと視線を遣したが、無言でよっこいせと立ち上がる。答えがないのが、正解であると示していた。
「……」
リタは数秒、空虚な瞳で項垂れた。
しかし刹那、頭を振り、浮かべた表情はいつもの「彼女」であり「彼」のものであった。
「うわっ、冷たいっ!」
ルフィの身体を傷付けぬよう、そろそろと地面から剥がしていく。
青雉は、いなくなっていた。
「……」
(あいつが死んでないなら、オレは)
(ルフィと自身の名を遠くサンジとゾロが叫んでいたが、リタには聴こえなかった)
いつだって、楽しくて気の置けない時間というのは、いつだって終わってしまう可能性と隣り合わせだ。
今こそ実際にそうで、これまで仲良くおじいさんと馬の望みを叶えるために労働していた海軍大将の態度が豹変し、抵抗しようとしたロビンが氷漬けになり、助けようとしたサンジもゾロも戦闘不能になって、「一騎打ちをする」と決意したルフィを残して、クルーは去った。
リタはその光景を、当然のように、そして少しだけ残念そうに眺めながら、今後のことを思案していた。
「……で? お前さんの隣にいるのは?」
「こいつはリタだ! 俺の仲間だけど今は関係ねぇ! つーか何ぼーっとしてんだリタ! お前も早く船へ帰れ!」
「……と言ってますけど?」
青雉の視線を受け、リタはふーっと長く息を吐いた。
「うーん、仲間、かぁ。少なくとも海賊ではないよね。青雉さんは、僕が海賊に拉致られた哀れな民間人だって言ったら、保護してくれるの?」
「まぁ、そうなるわな」
「身寄りがないって言ったら?」
「探してはやるが……まぁ、ある程度闘う気があるのなら海兵になるのもありだ」
「……ちょっと、人様のものくすねてきたりした前歴が」
「あぁ? お前さん、掏摸なのかよ。まぁ、こんな海賊どもがのさばる時代だ。きちんと刑に付して償えば、海軍にもなれる」
「……だよねぇ」
リタは苦笑し、
「……君たちの邪魔はしない。見届けるよ。仮にも同じ船に乗っていたんだ、遠くからならいいよね」
そう言って軽やかな足取りでルフィと青雉から表情が伺うことができない程度離れた。
結果は初めから明らかだった。
リタが船長だと認めた男、ルフィだって、海軍大将を任す実力があるかといえば、そうではない。
けれど、どこかで呆然と、ルフィが勝たないかなぁだなんて、淡く期待していたのだ。
だから、パキパキとその身体の全てが氷漬けになった時、流石にリタは息を呑んだ。
「あの女を船に乗せるということは……そういう事なんだ! モンキー•D•ルフィ!」
青雉が振り上げた足でルフィの身体を砕くその瞬間、
リタは飛んだ。
飛んでくると思った足を間一髪で避けるようルフィの氷像を抱えた身を翻し、背中で地面を滑る。
「ハァ、ハァ……くそ、ハッタリかよ」
青雉の足は、ルフィではなく彼を凍らせた余波で凍てついたほんの僅か隣の空間を砕いていた。
「……民間人って言ったな。お嬢さん。…「剃」を使うなんて何もんだ、お前さん」
青雉が胡乱な目でリタを見つめる。
そのあまり代わり映えしない表情こそいつもと変わらない、だらけ切ったものであったけれど、その声音の奥には流石に海軍大将としての責任が滲んでいた。
リタ はくつくつと喉の奥を鳴らして笑った。
「……民間人には間違えねぇけど、
オレは、海軍には死んでも入らねェ」
「麦わらの仲間ってか……。ここで命は取らねえが、次はないよ」
「……ハストーン•グライド」
突如氷の世界に落ちた、この場には似つかわしくないある男の名に、青雉の眉が少し上がる。
「……海軍大将さんともなれば知ってるよな。10年前に起きた、あんたらがもみ消した不祥事!」
「お前は……」
「あいつに使役させられた女がいたはずだ。彼女、どうなった」
一面氷の世界に、沈黙が落ちる。
「あらら。ニコ•ロビンに続いて、とんでもないやつが乗ってるもんだ」
青雉はやっていられないというように、緩慢に頭をかいた。
「ここまで言えばオレが誰だかも分かるだろう。グライド教官殺しさ。知ってるなら、彼女の安否を話せ!」
さっきまでの少女らしい形姿からは打って変わったリタの表情は真剣で、深刻で、その剣幕に青雉はさも面倒だというようにため息を吐いた。
「……お前さんには悪いが、あの女の安否はしらねぇ。オレは今でこそ大将なんぞやってるが、そもそもCPは海軍というより外郭団体に近くてね。そちらのやつの上層部しか知らねえんじゃねえか」
「……そうか。悪かったな」
リタは素直に引いた。もしも知っているのなら、と一縷の望みをかけていたのだが。
「……それと、お前さんは一つ勘違いしている」
「え?」
「ハストーン•グライドは死んでねぇ」
「……!?? 嘘だ! だって、オレが……!」
顔面蒼白になって、縋るように青雉を見る。
「残念ながら嘘じゃねえよ。……オレがお前さんに伝えられるのはこのくらいだな。……お前さんの仲間が来てる、そいつを背負ってさっさと消えるこった」
「……グライドは、海軍にいるってことか……」
青雉がリタにちらりと視線を遣したが、無言でよっこいせと立ち上がる。答えがないのが、正解であると示していた。
「……」
リタは数秒、空虚な瞳で項垂れた。
しかし刹那、頭を振り、浮かべた表情はいつもの「彼女」であり「彼」のものであった。
「うわっ、冷たいっ!」
ルフィの身体を傷付けぬよう、そろそろと地面から剥がしていく。
青雉は、いなくなっていた。
「……」
(あいつが死んでないなら、オレは)
(ルフィと自身の名を遠くサンジとゾロが叫んでいたが、リタには聴こえなかった)
3/3ページ