ゆりを家に誘い込む作戦は失敗したけど、第二のプラン、隠れ家的フレンチレストランでデート作戦には乗ってくれて良かった。

彼女と距離を縮めるには少し時間をかけた方が良さそうだな。
あんな目をして僕を見つめるから、一気に押し倒せるかと思っていたのに、今の僕は好物を目の前にして待てと言われた犬の様だ。

たまには追いかけて夢中になるのも悪くないか。
電話を切っても、耳に残る柔らかい声。

ゆり…もっと君が知りたいよ。
何が好きで、苦手で、楽しいのはどんな時？
笑顔も泣き顔も、困ったり怒ったりした表情もきっと愛おしくなる。
　
僕の名前を呼ぶ声で体が熱くなった。
毎日その声が聞きたくて、ついまた電話すると口にしていた。
声だけじゃなくて早く目の前でその唇が僕の名前をなぞるのを見たい。
いや、触れたい。

学生みたいな純粋すぎる願望に自分で笑ってしまう。
ハマってんのは僕の方か。

もし彼女がこのソファで隣に座って、僕を見上げて笑ってくれたなら、きっとその瞬間、呼吸を奪ってしまうだろう。
そして全てが欲しくなる。


なんて、この時は時間さえあれば絶対彼女と深い関係が持てると信じていた。