職場のストレスをあっという間に消し飛ばした、事実婚にしようという悟の提案。
　
煮え切らない私の態度を見て強行策に出た悟は終始笑顔だったけど、少しイラついてるのが言葉の端から見て取れる。

"既成事実を作る＝子供を作る"だと寝室に向かう悟の言葉で確信した。

「ちょうど良かった！僕にめちゃくちゃに抱いて欲しいんだったよね？」

うっ…、さっきまでの私の身勝手な振る舞いを逆手に取ってこられて何も言い返せない。

悟はいつも私を守ってくれて、味方になってくれる。でもそれは無償じゃない。

「いいよね。ずっと僕の側にいてくれるよね？」
応えないと、どうなるか分かってるよね？と言われているみたいに、私に詰め寄ってくる。
子供を作って逃げられないようにするなんて、一歩間違えばDVだ。

いつもより荒いキスに呼吸を奪われる。
愛情の裏返しなんだろうな。大切なものほど壊したくなるような。

私が何を言おうと彼のやる事は変わらないだろうけど、あなたが私を想ってくれている事はちゃんと分かってるから、応えたい。
最強の五条悟の妻になる覚悟は決まってなくても、私の知ってる彼とずっと一緒にいたい。
それだけは絶対間違ってない。

悟の手はすでにバスタオルの中。
唇を解放されて目が合うと涙が溢れてしまって、それを見た悟の手が止まる。

「ごめんね、私がハッキリしないせいで。結婚が嫌とかじゃないの。悟には私の全部をあげても足りないくらいだと思ってる。もし悟が他の人と結婚しても、絶対愛してる。自信ある。信じられないなら"契約"してもいい。それからね、」

「ごめん。分かってるよ、ちゃんと分かってる」

悟は私の言葉を遮って抱きしめながら、自分に言い聞かせるようにそう言った。