今日から仕事に出ているゆりが心配でしかたなかった。

ゆりの治療が終わって、また同じベッドで寝られる日が戻ってきても、やっぱり以前よりも弱っている彼女を見ていると抱きしめることしかできなかった。
もう殆ど痛みもないし動けるよ、と出掛けた次の日には少し長めに休む事があってますます過保護になった。

内心は早く結婚して正式に僕の手元に置いておきたくて仕方なかったけど、そこは抑えて冷静でいる様に努めた。

もちろん彼女に余計な気苦労を掛けたくないのが一番、でも高専で硝子に治療してもらった後、プロポーズとまではいかないが、そこそこ真剣に結婚を持ちかけた時、予想に反して及び腰だった事に実はショックを受けていた。

僕と結婚したくないと言うより、私でいいか不安だと思っていることは理解している。それを差し引いてもやっぱりもっと喜んでくれるだろうと期待していただけに、彼女の翳った顔が忘れられなかった。

ゆりに愛されてる自信はある。でも家とか立場とかそんなくだらない事、僕の愛情の深さに折れて考えられなくなるまでさらにとことん大事にしてやる。

まず仕事が終わったらすぐ帰って出張なんてもっての外。家ではめちゃくちゃ甘やかして、逆に動かないと回復しないと怒られた。それから、しばらくは身体を求める事はしないと決意した。

最初のうちはさすがに傷も治りたてでそんな状態じゃなかっただろう。でも徐々に回復してきた彼女は、夜ベッドに入ると明らかに欲しがる素振りを見せるようになってきた。
上目遣いで見詰められ、熱い吐息が肌にかかって、クラクラしてくる。
気付かないフリをして額にキスを落として、眠れない夜が何度かあった後、僕の決意は終わりを迎えた。

「抱いて欲しい」

ずっとずっと我慢してた僕にはどんな強敵の必殺技よりも重い一撃だった。
「痛かったら言うんだよ。優しくできる自信ないから」
最初にそう宣言したけど、なんとか暴走しないようにあまり顔を見ないようにして堪えた。
だって、、、彼女の目を見てしまうともう、全てを吐き出さずには居られなかったから。


「悟……さ…と…」
名前を呼ばれて彼女の顔を覗き込む。
寝言でも僕を虜にさせるんだな。

「ゆり、愛してる」

寝息を立てる彼女の耳元で暗示をかけるように囁いた。