最初に彼を見た時からずっと思っていた。
「悟さんって、人間じゃないの？」

「んー、何だと思う？」
ミステリアスな笑顔がさらにそう思わせる。

「最初お店に来た時は天使かと思った。」

悟さんは私の上に体を重ねて、イタズラな笑顔で吸い込まれそうな瞳を私に向けて言う。

「天使というより悪魔かな」

「知らなかった、悪魔の目は綺麗な空色だったんだ。」

空に手を伸ばす様に彼に触れる。
ゆっくり近づく唇、こんな優しいキスをする悪魔になら何をされても拒めない。

しばらくそうして頭が空っぽになるまで溶かされて、首筋に顔を埋めた彼から予想外の問いかけを受けた。

「僕が怖くない？」

「なんで？私を助けてくれたのに？」

沈黙が流れる。サラサラと掛かる白い髪を撫でて彼を抱きしめていた。

「契約を解けることを黙って君を抱いた…君を試す様なことをして…」

何も言えなくてゆっくり抱きしめていた腕を解くと、悟さんは目を逸らして、聞き漏らしてしまいそうな弱い声で言った。

「多分僕は君が死ぬと分かっていても…」
「それでも」

青く揺れている彼の目が私を捉える。

「それでも私はあなたを選ぶ。ありがとう。悪魔さん。」

貴方になら全てを捧げるつもりだったから…心からそう思っている。