彼女は何を言おうとしたのか…聞きたくなかったはずなのに離れてしまうとその事が気になって仕方なかった。
握った手の柔らかい感触を思い出して落ち着かない気持ちを紛らわせる。

内容がどうであれ、僕がゆりを嫌いになることはないだろう。
仲良くなる前に言わなければいけなかった事を言えずに会ってくれたのは、それだけ僕に惚れてるって思っていいよね？

次会う時は聞いてあげないといけないよな。
でもあの辛そうな顔をまたされたら、もう何も聞かずに戻れなくなるところまで行ってしまいそうだ。

…そんな事をしても彼女を苦しめるだけか。

夜、いつもみたいに彼女に電話した。

『悟さん？お疲れ様です。』

「ゆり…帰り大丈夫だった？」

『はい、あの、最後なんか変な話してごめんなさい。あんまり気にしないでね』

ん？あの話の事だよな…。もしかしてそんなに深刻な話じゃない？いや、あの態度はそんなはず無いだろ。
「そんな事言われたら余計に気になるよ。次はいつ会える？時間出来たら少しでも会いたいんだけど」
自分の必死さにビックリするよ…。追いかけるって結構大変。

『悟さんの休みに合わせます。私も会いたい。』
良かった。とりあえずこのまま縁が切れる事は無さそうで安心した。あとは、
「明日の夜、ゆりの仕事が終わってからでいいから、会える？話がしたい」

『近くの駅まで来れますか？』

「必ず行くよ」

あとは彼女の秘密ごとすべて手に入れるだけ。