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Short story



あの女が貴族と見合いをする予定があると
作戦室で話を聞いた。

それを聞いてから俺らしくもなく。
手が動かない。
自室での仕事が行き詰まる。

そもそも見合いをするからと言って
俺にはど関係ない。
俺はあの女への愛を俺の婚約と共に
断つと決めた。
これ以上、俺があの女に対してする
ことはない。これで俺も俺の道が拓ける。

「エセン。
悪いが休憩だ。外に出てくる」

エセンに告げ、俺は廊下に出た。

心臓が痛い。
あの女が他の男のものになると考えると
不快でうまく息ができなくなる。
1人の女を諦めることがこんなにも
苦しいのか…

「早く楽になりたい」
そんな思いが足を早める。
どこに行けば楽になれる。
どこに行けばこの不快な心臓をとめられる。

どこに行けば…
あの女に…

俺の中で天秤にかけた結果が揺らいでいる。
会いたいの言葉が、認めまいとしまい込んだ
想いが天秤の器から溢れる。俺の中で
大切だったものたちが変わっている。

「アリパシャ?
どしたの?そんなに急いで」

長い廊下の窓辺に女は座っていた。

いつの間にか息が切れるほど走っていたらしい。肺に入れようとした空気が喉を詰まらせる。

これは俺の最後の叛逆だ。
言わないほうがいい。
感情に流されれば戦争は長引く。
わかっていた。わかっている。
そんなものは理解した上で俺はこの女が他の男のものになる事を認められなかった。

窓から差し込む夕日は廊下をオレンジに染めた。夕日を背にした彼女の表情は走ってきた俺を心配そうに眉を下げていた。

「お前は…」

俺の発した言葉は小さかった。
俺らしくもなく、こわいと思いながら彼女の指にひとつ、またひとつと触れた。

「誰のものになるな」

触れた瞬間、認めざるを得なかった。

あぁ、認めよう。
俺は不要だった感情を欲していると

認めよう。
お前の事を愛していると

認めよう。

「俺はお前が欲しい…」


長い間、否定し続けた想いを吐き出すともう、止まらなかった。
欲しい…欲しい…とその言葉しか出てこない。左耳に口を寄せ、囁く。
それでは足りなくなり、包むように腕を回し抱き寄せる。それでも溢れた愛は止まらない。
右手の人差し指で女の耳から顎までのラインをなぞり上を向かせる。
瞳が繋がりようやく女の顔が鮮明に見えた。
瞳は夕日と俺を写し、涙で濡れていた。

やらないと決めていた最後を破る。
瞳を閉じ、女の唇にキスを落とした。


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あとがき
(私の超個人的な感想なので
読まなくて全然okです。)

アレからこの話の続きを書くかすごく悩みました。
この話を読んで、結果にがっかりする人もいらっしゃると思います。
でも、わたしの中でこの話の2人は幸せにしたい!という想いもあったので書かせていただきました。(それはそれとして死ネタとか悲恋とか好きですけど…)

アリパシャのやらないと決めていた言葉全部やらせました。
(前作で愛を囁かない!抱きしめない!キスしない!と言っていました。)
個人的に肉体的接触をして欲しかったのでやらせました。わたしの欲です。
ひとつ破ってしまったら雪崩のように欲は溢れるものですよね。(物欲と一緒)

それと1つの疑問なんですが貴銃士と人間って婚約するの?笑
書いててずっと疑問でした。
彼らも某刀ゲームのように付喪神という設定だったなら婚約とかは無理かなって思ってたんですけど…
公式hpとかいって探したつもりなんですけど明確な答えが出ずに「まぁいっか!」で今に至ります。

これからもふわふわしてやっていきます。
またまた長くなってしまいました。
今回も小説を読んでくださりありがとうございました。
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