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Short story

「アリパシャ」
誰もいない食堂で2人きり
新聞を片手に今後の事を考えていた俺に彼女は話しかけた。

「様をつけろ。」

「ご婦人と婚約したって本当?」

「様をつけろ。」

本当に腹の立つ女だ。
俺の話を無視した挙句、向けてきた表情は怒りと目に溜まる涙。
俺のマスターを名乗る女がこうもわかりやすくていいものか…
こいつを交渉の場に連れて行くのはやめよう。すぐに顔にでる。

「………」

沈黙が続くが、追って質問をするでもなく静かに俺を見つめる。
さて、誰が話したのか…エセンは口が固いし、マフムトにはそもそも言っていない。
恭遠の可能性は大いにあるな。
レジスタンス内部の事だから知っていて当然だ。
後は取り引き相手の皇帝様か…

「本当だ。詳しく聞いたか?」

彼女は聞いたらしく首を縦に振った。

婚約者はイギリスでも大きな力を持った貴族出身のご令嬢だ。
彼女の父は限りなくレジスタンスを好意に思っているが世界帝の恐ろしさを知ってしまったのだろう。
だから、後一歩が踏み出せず手をこまねいている。
俺は人押しがアレば覚悟も決めるだろうと、外堀から埋めていった。

先の核戦争では有利にことが運んだことによって物資は底をついてる。
だが、先の勢いに乗らなければ、また防衛にまわり不利な状況になり、戦争がズルズルと長引く。

「だからって自分を…」

「安売りしているなど言うなよ。
それがわからないお前でもないだろ」

感情のまま立ち上がる彼女に静かに返す。

「それでも
私は仲間を売るようなマネしたくないし、
なにより彼女の気持ちを弄ぶなんて最低だよ。」

怒りをぶつけられた事より
最低だと失望させた事より
彼女の頬を伝った涙が1番心臓を冷やした。

彼女は足早に食堂から出て行った。

だが、どんなにお前に最低だと罵られようともやめるつもりはない。
自覚してはいけなかった愛に報いるための行いだ。
俺はお前に愛を囁かないし、抱きしめない。キスもしない。

お前が争いのない平和な街で生きることこそが
俺が与えてやれる最低限の愛だ。


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あとがき
普段はあとがきなどあまり書く事はないのですが、
このお話に関しては小説内で表現しきれていない部分が
あるのではないかと思い、書きました。
たぶんこういうの野暮です。
てか、あとがきの使い方がこれでいいのかも不安です。笑


アリパシャには世界征服(笑)という野望があり、
その道には仲間や家族、恋人への愛はいらないと考えています。
ですが、皮肉にも人間への愛を自覚してしまった彼は
自分のいない彼女の幸せを描く事によって満足したのです。
これが彼にできる最低限の愛なのではないかなーと考えました。

世界征服(笑)より愛を取る彼を想像できなかったのですが、
なんか後一押しで攻略できそうでもありますよね笑

《愛の欲》とも繋がっていると思うので見てみてください。

長くなりましたが、見ていただいてありがとうございました。
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