第51章
紅い鴉の夢主の名前
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綱吉からの抱擁を受け入れ抱き締め返しながらもその背中を撫でていた悧塢は倒れる前のことを思い出したのかもぞもぞと辺りを見回して綱吉の服の裾を引いた。
「そうだ綱吉さん、イヤリング、ありますか?」
「、……はい」
ポケットから取り出されたハンカチを開けばイヤリングがふたつ綺麗な形で鎮座しており悧塢が安堵の息を吐き出してそれを受け取った。その様子に、綱吉が彼女の手を握りながら問いを口にする。
「悧塢、なんで白い炎を使ってまでこれを直したのか教えて?」
「……すみません」
「責めてるわけじゃないんだ。ただお前がわざわざ危ない方法をとった理由が知りたい」
「…………綱吉さんが、私に似合うって、直接つけてくれたのは、これひとつだけです」
「!」
「わがままでごめんなさい。でも似合うって言ってくれた声も、照れてる顔も、優しい手も、私にとってはぜんぶが大切なんです。違うものには代えられないんです、だから、」
言葉を遮って抱き締める。きっと無意識だろうけれど、同じ見た目の違うもの、という概念がクローンと重なって避けているのだろう。
「ごめん、俺の配慮が足りてなかった。悧塢にとっては、全部が初めてで、全部が大切なんだよな」
「はい」
「……大事に思ってくれて、ありがとな」
「いえ、心配かけて、ごめんなさい」
背中に腕を回されて抱き締め返される。そう言えばと抱き締めたまま耳元に唇を寄せた。
「悧塢、子供の時の記憶あるんだよな?」
「……はい」
「……悧塢の一番は、まだ俺ってことでいいのか?」
その問いに、背中に回された手に力が込められる。それが返事なのだと頬が緩む綱吉だったが、緩い力で胸元を押されて顔を突き合わせれば色づいた表情の悧塢が真っ直ぐ綱吉を見上げていた。
「……先日の、デート、のあと……ちゃんと、伝えようと、思ってたんです……」
「……うん」
「……あ、の……」
口にしようとしている言葉は、赤く染まった顔と切ない表情でもう充分すぎるほど伝わっている。何なら今すぐその唇を塞いでしまいたいほどだが、それでも意を決して伝えようとしてくれている彼女の口からちゃんと聞きたいと綱吉は急かすことはせずに悧塢を待つ。
「……………………綱吉さんが……好き、です……」
「うん、ありがとう悧塢。俺も、悧塢が好き。悧塢の全部が大好き。……世界で一番、愛してるよ」
「っ、うん、ツナさん、だいすき……」
「!」
感情が昂って涙を浮かべながらも言葉を返してくれた悧塢をきつく抱き竦めれば彼女も嬉しそうに微笑む。ようやくお互いの想いを伝えあって幸せを噛み締めていれば控えめにノックの音が響いて扉が開けられた。
「ボス、交代するからそろそろ休んで……悧塢!」
「お姉ちゃん」
「良かった! 目が覚めたんだね!」
「うん、心配かけてごめんなさい」
「……よかったね」
「! うん」
抱き合っている様子から想いは伝えられたのだと理解したクロームの優しい声が悧塢へと贈られる。それに幼い時と同じように受け答えしている様子を見てクロームはいつから子供の時の記憶があると気付いていたのだと綱吉の眉間に僅かに皺が寄った。
「ボス、悧塢が起きたなら連絡欲しかった」
「ごめん、それどころじゃなくて」
「イチャイチャしたかっただけでしょ」
「……それもあるけど、悧塢のことで大事な話あるから、事実確認してから守護者を招集するつもりだったんだ」
「?」
「……」
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