第49章
紅い鴉の夢主の名前
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「あ、綱吉さん、おはようございます」
「……おは、よ」
昨晩、悧塢から一緒に出掛けたいと言われて、ちゃんと自重しようとしていたのだ。ただ街に行きたいから誘ってくれた。デートだと浮かれているのは自分一人なのだからがっつき過ぎないようにと。なんなら非番のクロームが着いてくることも覚悟していた。けれど待ち合わせに現れたのは悧塢一人で。柔らかい色合いのタートルネックにロングワンピースを着て髪を編み込んでいて。カラーコンタクトもなく戦闘には向かないようなヒールブーツを履いて、本当に、どこにでもいるような女の子の格好をしていて、あまりの可愛さにまともに挨拶も出来ていなかった。
「……あの、似合いませんか? こういうのは、慣れなくて、」
「すごく似合ってる。めちゃくちゃ可愛いよ。こんなにお洒落してきてくれると思わなくて驚いてたんだ。不安にさせたならごめん」
「いえ、あの…………綱吉さん、私今日は、武器になるものは、持ってきていないんです……」
「……え?」
「……今日一日、部下でもヒットマンでもない私と一緒に過ごしてくれますか……?」
そう捉えてしまっていいのだろうか。悧塢から、デートに誘ってくれたと。嬉しくて舞い上がってしまいそうだが、少しだけ不安そうに揺れる紅い瞳に微笑みかけて最終確認だと彼女の手をとった際にふと香ったのは誕生日の時にリボーンに贈られていた自分の使っているものの姉妹商品の香水の香りで。揃いの香りを纏っていることに頬を弛ませながら悧塢の手の甲に唇を寄せた。
「じゃあ悧塢、デートのつもりでエスコートするけど、それでいい?」
その言葉に頬が赤みを帯びて、それでも確かに頷かれて心臓が跳ねた。これはもう浮かれてもいいだろう。デートだ。口づけた手を引いてそのまま指を絡めて手を繋げば控えめに握り返して隣に並んでくれる。これだけで幸せで泣きそうだ。
「街に行く以外で希望はある?」
「えと、クロームさんたちとは以前行きましたけど、綱吉さんとは仕事以外で行ったことがなかったので、一緒に行きたいな、と」
「可愛いこと言ってくれるなぁ、それじゃあ歩きながら一緒に決めようか」
「はいっ」
行き先の候補となりそうなスイーツ専門店だったりケーキを売っている店を挙げていけば悧塢の表情がみるみる強張っていって思わず列挙をやめた。
「食べ物屋さんばかり……私食いしん坊だと思われて……?」
「あははっ、違うよ、デートの定番なんだ。足を伸ばせばテーマパークとかシネマはあるけど人混み凄いしそういうの除くと自然とスイーツの店とかブティックになるんだよ」
「そうなんですね、すみません」
「いいよ。可愛い反応が見られたから」
「……忘れてほしいです」
「あはは」
気恥ずかしさから少しだけ俯いてしまった悧塢の頭を撫でようとして、踏みとどまったその手の甲を頬へと滑らせる。いつもならしない行動にどうしたのかと見上げられて目を細めた。
「せっかくお洒落してくれたのに頭撫でたらセット崩れそうだったからさ。今日はたぶん顔触ることのほうが多くなると思う。イヤ?」
「えと、少し、くすぐったい、です」
「はは、かわいい」
「っ」
照れて視線があちらこちらへと彷徨う悧塢に最初から飛ばしすぎたかと思っている以上に浮かれている自分を嗜めつつ最初の行き先の候補を提案した。
「ブティックはまだ開店前だろうから先に何か食べに行こうか。朝食べてないだろ?」
「はい、そうします」
「店は俺に選ばせて。悧塢の好きそうな店ピックアップしてあるんだ」
「! 楽しみです」
自分のために探していたのだと伝えられて素直に喜ぶ悧塢を連れて行ったのは個室になっているバール。実はここのメニューを見つけてからいつかは悧塢を連れて来たいと思っていたのだ。本来はドルチェメニューだけど大丈夫だろうかとカウンターで聞けば店員は悧塢に視線を移してから笑顔で親指を立てて承諾してくれた。チップ弾んでおこう。
「こういう場所、初めて来ました……」
「前に出掛けた時は京子ちゃんとハルいたもんな。こういう隠れ家的な店は俺たちのほうが詳しいから先に教えておけばよかったか?」
「……でも、綱吉さんと来れましたから」
「……可愛い」
悧塢の言葉に先に教えなくて良かったと心の中でガッツポーズをしながら個室で待っていれば、運ばれてきたのはエスプレッソとカフェラテ、シュークリームとブルスケッタとカナッペ。目を輝かせる悧塢に食べていいよと勧めてやれば嬉しそうにプレートに手を伸ばしてシュークリームを頬張った。イタリアのシュークリームは五センチくらいしかないのに口いっぱいなの可愛い。え、口小さくない? と思って見つめていたらふと視線が重なる。
「……綱吉さんは、食べないんですか?」
少しだけ窺うような声で問われて食べられないのに連れて来てくれたのではと不安になったらしい。気遣いが嬉しくて緩む頬をそのまま悧塢へ向けて目を細めた。
「悧塢が可愛くて食べるの忘れてたんだ。大丈夫、俺も食べるよ」
「……なら、いいです」
照れてそっぽを向きながらカフェラテが入ったカップに口をつける仕草すら愛おしくて微笑みかけてエスプレッソに口をつけた。
→
1/4ページ