第47章
紅い鴉の夢主の名前
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「十代目、ヴェルデの言っていた女って……」
「ああ、エストラーネオの被験者で、おそらくクローン実験に細胞を使われた被害者だ」
「その女が行方不明ってのは、タイミングが悪いな」
「……まだ、大丈夫だと思ってたんだけどな」
時折見かける悧塢とよく似た容姿の女が行方不明になったとヴェルデから連絡がきたのはつい先ほどである。それに加えて齎された情報。幼い悧塢が採血に協力してくれたおかげで炎のパラメータが解析出来たと。つまるところ白い炎を構成する晴、雨、霧と調整の役割がある大空の属性をもつ者はなるべく悧塢に触れていろ、とのこと。ここで問題なのは、過去にいる悧塢の側には霧の属性である龍羽しか居ないということ。調整役の大空が居ないのは痛手だった。
「無事でいてくれ……」
悲痛な声は、遠い場所にいる彼女の耳には届かない。
急な通り雨が窓を叩く音に、悧塢の瞼がゆっくり持ち上げられる。目が覚めて最初に映ったのは揺らめく橙色。ナッツの
「んー……ナッツ……?」
『がう』
「……ツナさん?」
目が覚めてもまだ執務室に居るということは近くに綱吉も居るはずだと首を回すが見当たらない。焦ってソファーを降りようと体勢を崩し掛けた悧塢の服を引っ張って落下を防いだナッツは視線をデスクのほうへと向ける。その視線を追いかけた悧塢は探していた姿を見つけて安堵した。
「ツナさん……寝てる……?」
『がお』
ソファーの位置からではデスクに伏せている綱吉が見えなかったようで回り込んで寝顔を見上げた。その際デスクの上に広げられた大量の紙が綱吉の忙しさを物語っており、疲れて眠ってしまったのだと理解した。
「…………」
起きないだろうか。それならばもう少し近くに、と綱吉のすぐに横に立って自分もデスクに頬を乗せる。お互いの顔の距離はとても近い。
「……りおは、ツナさん好き……」
綱吉が好きだと言ってくれて、喜んで、恥ずかしがって、自分はちゃんと面と向かって言ったことはなかったように思う。言わなければ、思っているだけでは、伝わらない。練習だと呟いて綱吉の目の前でもう一度音を紡いだ。
「ツナさん、大好き」
「…………悧塢?」
「!?」
目を開けた綱吉から飛び退こうとした体を片腕で抱き寄せられる。聞かれてしまったと焦る心臓はこれまでにないくらいばくばくと音を立てていたが、そこからの綱吉の反応が全くない。
「……ツナさん?」
「…………」
「ツナさん? 寝てる?」
抱き寄せた力強さに起きたものだとばかり思っていたが、寝惚けているのだとわかって安堵しゆっくりと息を吐き出した。その時の綱吉の顔は赤く染まっていたというのに悧塢がそれに気付く余裕は残念ながら無かったのだった。
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