第39章
紅い鴉の夢主の名前
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自分の出生を知った悧塢は、ヴェルデの話を聞いてからずっと考えていたことがあった。
もし、自分が生まれていなかったら。
龍羽は苦労もなく、もっと自由に生きられたのだろうか。
自分が殺したあの優しいボスは、まだ穏やかに暮らしていただろうか。
自分のせいで命を狙われることになってしまった珱は、蔭は、笑っていられただろうか。
自分に優しくしてくれた京子やハル、クロームやラルはまだ無事だろうか。
ラルに至っては既に遭遇しているため、強いとはいえ不安は消えない。
自分のせいで大怪我をしてしまった了平も、山本も、ランボもまだ安心はできない。
綱吉だって、自分のせいで命を狙われている。
「(私が……そばに……いなければ……)」
意識の底で、悧塢は自分の存在を否定した。
悧塢が珱を助けに向かって、獄寺が彼女と共に帰ってきたのは深夜二時過ぎ。それから六時間が過ぎて既に朝日がカーテンの隙間から溢れているが、悧塢が目覚める気配はない。以前綱吉の傷を治した時は八時間も眠っていたが、今回はそれとは比べ物にならないだろう。いつ目覚めるのか、そもそも目覚めるだろうか、そんな不安さえ頭を過る。そんな時、悧塢の手を祈るように握っていた綱吉の携帯が鳴り、ゆっくりした動作でディスプレイを確認する。表示されていた名前は入江正一だった。
「……なに」
『クロームさんが近くまで帰ってきたから報告しようと思って……』
「……一人じゃないだろ?」
『うん、部下がいつもの車で』
「……大丈夫だろうけど迎えと監視よろしく」
『うん。……綱吉くん、少しは寝ておいたほうがいいよ』
「……ありがと正一くん……」
『つなよ、』
「じゃ」
入江の心配もわかる。それでも、今彼女から離れてしまったら、本当にそれきりになってしまいそうで怖かったのだ。幾度も死線を潜り抜けてきたはずなのに、彼女が隣にいないと考えただけで、生きた心地がしなかった。
「……悧塢……」
綱吉はベッドの縁で悧塢の手を握ったまま、仮眠のつもりで目を閉じた。
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