第36章
紅い鴉の夢主の名前
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悧塢が了平の傷を治してから何時間経っただろう。流石にソファーでは体に負担がかかるだろうと彼女の自室に移動してベッドに横たえてから更に時間は過ぎ、太陽は隠れ闇が広がり始めていた。そんなとき、待ち焦がれた声が微かに鼓膜を震わせる。
「……ぅ……」
「! 悧塢!?」
「……つなよし……さん……?」
「良かった……目が覚めて……無理させてごめんな?」
「……いえ……私が勝手にやったことですし……」
「……ありがとな」
綱吉が目を細めると悧塢が波動を探って問い掛けた。
「……笹川さん……大丈夫でしたか?」
「皮下組織もほとんど治ってたよ。ただ胸の辺りは熱傷が治りきってなかったみたいで、あとは本物のボンゴレの医療班がやったから」
「そうですか……」
綱吉の“本物の”という単語に悧塢の表情が翳り、悔しさで拳を作ろうとした手に温もりを感じて自分の手を見る。
「……手……握っててくれたんですか……?」
「ああ、八時間くらい眠りっぱなしだったからな。もう辛くないか?」
「はい、大丈夫です」
上半身を起こして座り直すと、すかさず綱吉が背中を支え彼女を労る。仕事中に薬を誤って吸引してからというもの、こういう時の対応が過剰になってしまっているらしい。
「起きて大丈夫か?」
「……なんか、今日は調子がいいんです……」
「そっか、良かった」
「……」
「悧塢?」
いつものように無理をしたにも関わらず、何故か白い炎を使った後の気だるさはなくむしろスッキリしていた悧塢は一応辺りを見回すが、いつもと違うのは綱吉の手だけだ。
「きっと綱吉さんが手を握っててくれたからです」
「!」
「ありがとうございます」
少しの間ではあるが声を聞けなかった後のタイミングで、素で綱吉が喜ぶ言葉を口にしている辺り本当に質が悪いと思いながらも、今はそれを手放しで喜べるほど気楽な状況でもなく、一度大きく息を吐いてから悧塢の頭を撫でた。
「悧塢はもう少し休んでろ」
「ぁ……」
「……ん?」
「いえ、何でもないです」
「甘えたいのは分かるけど、今はちゃんと休んでおけ」
「そんなんじゃないです!」
「はいはい、一段落したらまた来るから」
「……はい」
「いい子だ」
「!」
撫でていた頭を引き寄せ悧塢の額に口付けた綱吉は、慌てる彼女を見てから気持ちを切り替えて部屋を出た。
モニター室では入江と獄寺が何かの画面を慌ただしく操作していて、山本がまだ見つかっていないのだと悟る。
「隼人、正一君、どう?」
「待って、あとちょっと……いた!!」
「!」
「大丈夫、生きてるよ! 武君! 聞こえるかい!?」
『っ……入江か……?』
「良かった、意識もはっきりしてるみたいだね」
「武!!」
画面の向こうの山本は瓦礫に身を潜めながら傷の応急措置を施していたが、体のあちこちから出血していて相当傷が深いことが窺える。それを鎮静の炎で何とか保たせているようだ。
『ツナか……? ワリィ、このザマだ……』
「っ……生きてて良かった」
『…………』
「(キレてる、そりゃそうか)」
「武君、すぐ救護班向かわせるからそこでもう少し待ってて」
『……おぅ』
綱吉の声を聞いてめくりあげたシャツの下の傷も了平ほどではないが酷い有り様で、悧塢を部屋に置いてきて正解だったと胸を撫で下ろす。雲雀から彼女がキレたと聞いて暫く龍羽に関わる話題は控えたほうがいいと感じたのは間違っていなかったようだ。
「……ありがとう正一君、俺だけじゃこんなに早く見つけられなかったよ」
「僕はこういうところでしか役に立てないから、力になれたなら何よりだよ」
「みんなもありがとう。少しだけでも体を休めてくれ」
「有り難きお言葉です、ボス」
その頃、ボヴィーノファミリーの屋敷の中ではランボが外に出ようと建物の壁を叩いたり物を投げ付けたり試行錯誤を繰り返しているが
「ボス、大丈夫? 顔色悪いもんね……どうしようっ」
「大丈夫だよ、何とか出られればいいのだが……」
「でもっ……早く、出なきゃ!」
「……」
「っ! なんで壊れないんだもんね!!?」
何も出来ない自分が歯痒くて唇を噛んだランボが部屋の中にあった椅子や斧で壁も扉や窓ガラスまでも壊そうと奮闘するが一向に傷がつく気配すら感じられない。そんな時、弱々しい声がランボの耳に届いた。
「すまないランボ……」
「……え?」
「私が不甲斐ないばかりに……こんなことになってしまって……」
「そんな、ボスのせいじゃ……」
「すまない……」
「っ」
申し訳なさそうに頭を下げる自らのボスの姿に悔しくて涙が溢れそうになる。あなたは悪くないのに、そう言いたくても優しい彼は首を横に振るのが分かっているから、口に出せない。
助けなくちゃ……ボスを、みんなを、ボンゴレを、悧塢さんを……!
「俺だって……ボンゴレの守護者なんだもんね!」
「! ランボ……」
「ボンゴレ
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