第35章
紅い鴉の夢主の名前
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ユニは通信を切って怒りを抑えようと努める綱吉の様子を見つめながら声をかけた。
「…………」
「沢田さん、羽鳴邪さんは……」
「……重傷だったお兄さんの傷を治したらしい……多分暫く起きられない」
「……そうですか……」
「……ユニ、眠ってる間は何もされないんだよな?」
「はい、私が視たのは怯える羽鳴邪さんですから……」
「……」
医務室に治療の準備をするよう連絡を入れた綱吉は大きく息を吐き出して先ほどユニに聞いた一人になってはいけない理由を思い返していた。
「イナセさんが怯える羽鳴邪さんを無理矢理連れて行こうとするのが視えました。でも誰かに逃がしてもらえたようです……」
「……その後に何かあるのか?」
「……心を壊して連れて行くんです」
「!?」
「沢田さんはご存知ですよね、彼女にはフラッシュバックを起こす言葉があるのは……」
「……ああ」
「それを利用して……」
「っ」
龍がこれからするであろう行動に怒りが抑えきれず実務机を殴り付けたのは記憶に新しい。大事なら、何故。
「(家族なんじゃないのかよ……!)」
『…………沢田』
「……雲雀さん? どうしました?」
『……笹川が倒れた』
「……はぁ!?」
『煩いよ。悧塢が治したって言っても完治してるわけじゃないからね』
「すぐ医療班向かわせるからそのままこっち向かっててください!」
『もう見えてるから治療の準備済ませといて』
「あっ、ちょっと雲雀さん!?」
通信を切られて急いで屋敷の入口に向かおうとするとユニにやんわりと止められ数秒後に執務室の扉が開いた。本当に近かったらしい。
「雲雀さんお兄さんは!?」
「ロールに医務室運ばせた」
「……悧塢、は?」
「……」
腕の中でぐったりしている悧塢に視線を落とすと、雲雀は状況を説明するためにソファーに彼女を横たえてから報告を始めた。
「……龍は首に爆弾を付けた子供を使って笹川を消そうとしたんだよ。その子供を庇って爆発を至近距離で食らったみたいだ」
「子供……」
「個人の識別も難しいほどの全身火傷を悧塢はほとんど治したからね、こうなっても仕方ないよ」
「……医療班そっちに行かなかったのか?」
「途中ですり替えられてたよ。それで悧塢がキレた」
「え?」
「……笹川もこいつらにって思ったんじゃないの。それで無理に一度に治そうとして倒れた」
「…………」
「危ういよ、この子」
「わかってる」
「……僕は
「……はい」
雲雀の言葉の意味は分かっている。放っておいたらいつの間にか居なくなってしまうのではないかと思うほど悧塢は自分の身を削ることを厭わないのだ。悧塢のまわりには彼女を心配する人間がいなかったために、本当に大事だと思ってくれている人には身を捧げようとする生き方になってしまったのだろう。
「(兆候はあった。悧塢がお礼って言う時はこれでもかってくらいにもてなされたし……)」
「沢田さん」
「……守るよ。何があっても」
「……」
綱吉はソファーに横たわる悧塢の手を祈るように握りながら、瞳に決意を滲ませた。ユニにはそんな二人の姿が、垣間見えた未来の“横たわる二人”と重なる。
「(どうか……死の暗示でありませんように……)」
屋敷内の一角にある和風の造りになっている部屋。その室内では雲雀とその部下の草壁が
「哲、この前のデータ出して」
「へい」
「(白い炎の仕組みさえ解れば、あの子の負担を軽くできると思うんだけど……)」
「恭さん! 大変です!!」
「何?」
「何者かにハッキングされています! このままだと乗っ取られます!!」
「……次は僕ってことか」
雲雀は静かに呟くと目を細めて自分の愛用の武器を手に立ち上がった。
「恭さん!」
「逆探知は?」
「……逆探知は出来ました。しかし……」
「何?」
「……三ヵ所からの同時ハッキングです」
「……全部潰せばいいだけでしょ。ウイルス送り込んでおいて」
「へい!」
ハッキングの位置情報だけ確認した雲雀は不敵な笑みを浮かべながら裏口から屋敷を出た。
「悧塢の分まで、咬み殺す……!」
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