第33章
紅い鴉の夢主の名前
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水の中から見える誰かの視線を受けて、悧塢はまたこの悪夢かと嘆息したくなっていた。
『よし、つぎはお前の番だな、早く始め……』
悪夢は見るごとに鮮明になっていき、ぼやけていた言葉がはっきりと聞こえるようになっている。
『……成功だ! なんば、0……ロー、を急いで精密機器に繋げて……』
けれど鮮明になったおかげで、恐らく知らなくてはならない事実も浮かび上がってきた。
『……ひぃ!? ……何故私を……来るな! ……っ……作め!』
夢に映る場所は、幻術で見せられた、昔骸がいたファミリーの実験室だ。
『来るなぁ! バケモノォ!!』
実験室にいたということは、何かしらの実験に関わっていた可能性もあって、何故ここに居たのかと疑問が浮かぶ。
『なん……、……まさか……』
間を置いて現れたガラス越しにこちらを見つめる少年の姿は自身の兄を彷彿とさせて目を見開いた。
『……よし……おいで……』
手を伸ばす兄の姿に、この実験室で兄に拾われたのだと気付かされる。
『なまえ……“悧塢”』
「っ!」
誰かが笑って手を伸ばす姿が見えた瞬間、悧塢の意識は覚醒し飛び起きる。その誰かは、もう確かめるまでもなく育ての親なのだと理解した悧塢は自分の両手を見つめた。
「……龍兄に聞けば……私が“何か”解る……」
自分の中でやるべき事が見つかった悧塢は自分に言い聞かせるように口に出して目を閉じる。その直後、扉をノックする音の後に綱吉が顔を覗かせて彼女が起きていると判ると部屋に入ってベッドへと歩み寄った。
「もう起きて大丈夫か?」
「……はい」
「……すごい汗だけど」
「……またあの夢を見てたんです……」
「また……」
「……夢の場所……骸さんが昔いたファミリーの実験室でした」
「!?」
綱吉が驚いて目を見開き、その反応を予想していた悧塢は微笑んで先ほど決めたことを口にする。
「だから、龍兄に私が何か聞こうと思います」
「そんな危険なこと!!」
「大丈夫です」
「っ」
「私から探したりしません。近くに来たら綱吉さんに知らせてから会いに行きます」
「……それが、悧塢の“ケジメ”?」
「はい」
以前悧塢にボンゴレのヒットマンとして働く契約書を渡そうとした時、彼女はケジメをつけさせてほしいと言った。恐らく龍羽との関係に自分で決着をつけたいのだろうと綱吉はその提案を蹴ってしまいたい気持ちを必死で呑み込んだ。
「…………分かった」
「ありがとうございます」
「ただし!」
「!」
「盗聴器だけは付けていけ。悧塢に何かあっても俺達が状況を把握できるように」
「……いつもヒバードが付いてきてるのにですか?」
「ヒバードがやられたらアウトだし、連れ去られてからじゃ遅い」
「……分かりました」
「不満か?」
「いえ、優しいなと思っただけです」
「悧塢にだけな」
「違いますよ」
間髪入れずに否定され驚く綱吉に笑みを浮かべながら、悧塢は琥珀色の瞳を真っ直ぐ見つめた。
「皆さんに優しくて強くて頼れる人だから、ボスでいられるんです。優しいだけのボスだったら今頃寝首を掻かれてます」
「……」
「……何か気に触ること言ってしまいましたか?」
「好き」
「ぇ……?」
突然の告白に思考が追い付いていない悧塢はしどろもどろになりながらも綱吉に問い掛けるが、彼は優しい表情で想いを伝えるだけだ。
「悧塢が好き。大好き」
「ぁ、の……なに、言って……」
「愛してる」
「っ……か、からかわないでくださいっ!!!」
「本気だよ、今まで何回も言ってきただろ?」
「綱吉さんっ、なんか変ですよっ!」
「日本には、恋は盲目って言葉があるんだよ。俺には悧塢以外何も見えない」
「っ」
告白の途中からみるみる真っ赤に染まっていく顔に綱吉の口角は上がりっぱなしで、悧塢の顔は比例するように下を向いていく。
「あぁ可愛い」
「……今日の綱吉さん、意地悪です……」
「俺をそうさせる悧塢のせいだよ」
「……理不尽」
「まぁね」
心配をかけたと自覚している悧塢は抱き締められても抵抗せずに腕の中で大人しくしており、それに気を良くした綱吉は今どれほど彼女に許されているのだろうかと悧塢の耳元に唇を寄せた。
「悧塢は俺のこと好き?」
「……はい」
「今まで会ってきた奴らの中で一番?」
「一番……」
「……悧塢?」
「…………」
「いや、無理に今答えを出さなくて大丈夫だから」
「……………………」
「……(やべぇ、真剣に考える悧塢も可愛いけどフリーズしちゃった)」
返事が返ってこなくて腕の中を覗き込めば今までにないくらいに悩んで固まってしまった悧塢を見ていた綱吉はふとある結論に至る。
「……ってか、そんなに悩むほど悧塢の中で俺の存在が大きくなってるって思っていいのかな?」
「…………」
素直に思ったままを口にした綱吉の発言を聞いて、悧塢が今度は首までを一瞬にして真っ赤に染めて顔を覗き込もうとする綱吉から直ぐ様顔を背ける。
「……え、マジで?」
「何も言ってません!!」
「いやいや顔見れば分かるよ」
「じゃあ見ないでください!!」
「墓穴……」
「!!?」
もう下手なことは言わないようにと口を押さえるが、それを見た綱吉が堪えきれずに再び悧塢を抱き締めた。
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