第29章
紅い鴉の夢主の名前
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「…………綱吉さん」
「ん?」
「この体勢は何ですか?」
「仕事頑張ったんだから悧塢の補充させてよ」
「…………何言って……」
「返事は?」
「……はい」
綱吉の仕事も終わって守護者たちが続々と帰ってくる中、綱吉はデスクの横に悧塢を立たせて彼女のお腹の辺りに抱き着いていた。若干離れようと試みた悧塢だったが、有無を言わせない上司の言葉によって渋々諦める。
「あー癒される……やっぱ仕事終わりは悧塢で充電に限る」
「意味がわかりません」
「さっきまでの優しさがない……」
「あ、いえ……あの……」
「膝の上に座ってくれたら許してあげるけど?」
「………………失礼します」
恥ずかしがりながらも恐る恐る綱吉の膝の上に座ると、待ってましたとばかりに後ろから抱き着かれて小さくため息を吐く。
「悧塢ー」
「……はい?」
「……ずっとこのままでいろよ」
「……」
「ずっと、このまま……俺の傍にいて……」
「……綱吉さん……」
綱吉の弱々しい声を間近で聞いて自分の決断を待ってくれているのだと思い至った悧塢は更に強く抱き締め自分の肩に額を押し付ける綱吉の手に触れた。
「ごめん、なんでもない。今の忘れ……」
綱吉が前言撤回しようとすると腕の中の悧塢が体を預け寄り掛かる。普段ならあり得ない行動に綱吉の思考が一瞬停止しかけた。
「……」
「悧塢?」
「……寄り掛かるの、たまになら、悪くないです……」
「……ありがとな」
「……夕飯、何が食べたいですか?」
「悧塢の得意料理」
「わかりました……綱吉さん、作ってくるので離してください」
「……もうちょっと」
「……はーい」
綱吉のわがままに頷いてもう一度体を預ける。結局三十分ほど自由にさせてからリクエストされたものを作って、今いる人達だけで夕飯済ませた後自分の部屋に戻った。満腹感と最近の疲労からベッドに横になるとすぐに瞼が落ちる。それからどれくらい時間が経ったのかは分からないが、ふわふわとした感覚を感じつつ夢と現実の間をさ迷っている間に近くから人の声が聞こえて意識が浮上するも何故か見慣れぬ車内にいた。守護者全員集合で。
「……どこ……?」
「あ、悧塢さんおはようございます」
「……おはようございます。あの、ここは……?」
「リムジンの中」
「……いえ、外はどこかと……」
「まだ出発したばっかりだからイタリア」
「……行き先は……」
「忘れちゃったの? タヒチに行くの」
「……え、出発って今日だったんですか?」
「だってこれ以上寒くなったら泳げなくなるぞ?」
「……いえ、私もとから泳げないので……」
「え、泳げないんだ?」
「……はい……」
視線を逸らしながら呟く悧塢に守護者たちは彼女にも出来ないことがあったのかと驚く一方で、泳げなくて恥ずかしがる姿も可愛いと心の中で悶えている。
「では僕が泳ぎ方を教えてあげますよ。手取り足取り……」
「「「「却下」」」」
「……クフン……」
「じゃあ私が砂浜での遊び教えてあげるね!」
「……ありがとうございます……」
「砂浜なら極限にスイカ割りだな」
「スイカ?」
「あー、楽しそうだね。隼人持ってきてたりしない?」
「ありますよ。日本産の甘いやつです」
「サンキュー。さっすが」
「……なんでスイカ割るんですか?」
「そういう遊びだよ。ちゃんと最後に食べるし面白いよ?」
「……そうですか……?」
疑問符を飛ばしながら見回せば顔に真新しい傷が増えている山本と目が合う。そういえば珍しく会ってから一言も発していないなと思いつつ悧塢は声をかけた。
「……武さん」
「ん?」
「どうしたんですか? その傷」
「あ、あはは~……」
「ボンゴレの忠告無視して寝ている悧塢さんに近付いたんですよ。そしたらこのザマです」
「ラーンボ? あとで稽古付き合ってくれな?」
「いやですよ、自業自得じゃないですかぁ……」
「す、すみません。私また寝ている間に……」
「……また?」
それまで黙っていた雲雀は人数の多さにイライラしていたが悧塢の発言に漸く口を開く。だがその質問に答えたのは悧塢ではなかった。
「あ、最初俺」
「……その割りには無傷だったよね」
「だって首筋に短刀宛がわれただけだもん」
「え、じゃあなんで俺だけ斬られたんだ?」
「そ、それは私にも……」
「「「邪念でしょ」」」
「!?」
クロームと雲雀とランボに同時に突っ込まれて山本が盛大に項垂れた。
「そんなハモることないだろ~……」
「……獄寺さん、あとどれぐらいかかりますか?」
「しばらくは着かねぇよ」
「……なら寝ます」
「では僕の胸に「クロームさん、隣いいですか?」!?」
「うん、おいでー」
「……」
「ほらボス、妬かないの」
「うるさい」
まだ深夜で仕事に関係することでも無かったため眠気に勝てそうもなかった悧塢は、まわりがうるさいのも気にせずクロームの肩に頭を乗せて目を閉じた。
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