第28章
紅い鴉の夢主の名前
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「…………八時十分……遅いな……」
最初に八時に起こしてと伝えて以来、必ず八時少し前には部屋に起こしに来てくれるのに今日はそれがない。昨夜のこともあるからと心配になって隣の彼女の部屋の扉をノックしに行った。
「悧塢、起きてるか?」
「あ、はい……」
悧塢の返事が聞こえた直後にガタンと何かが倒れる音が聞こえて冷や汗をかく。まるで椅子と人間が倒れた時の音のように聞こえてドアノブを回して押し入った。
「悧塢!?」
「……いたた……」
「大丈夫か!?」
「はい、だいじょう……」
「っと!」
音のしたほうへ行くと椅子と一緒にひっくり返ってる悧塢が見えて直ぐ様駆け寄り背中に手を添えて抱き起こすが、立ち上がろうとした瞬間にフラついた悧塢を抱き止めて動きの鈍さと力の入っていない様子から悟る。
「悧塢、まさかまだ薬が……」
「……そうみたいですね……すみません、ご迷惑おかけして……」
「それはいいから寝てろ」
「でも」
「命令」
「……はい」
抱き上げてベッドに下ろし、抵抗しようとする悧塢の肩を軽く押して無理矢理寝かせてから大股で食堂に向かう。いつもと逆で不思議な感じがするけど、今日は何も出来なさそうな悧塢を思いっきり甘やかせると思うと悪い気はしない。……いつも甘いとか言われると思うけど気にしない。
「あれ? ツナ、悧塢まだ帰ってきてねーの?」
「いるよ。でも動ける状態じゃないから」
「「「!?」」」
今日は非番で食堂にいた武とクローム、あと朝食を作っていた隼人が俺の発言に物凄く驚いていたけど、やはり一番食いついたのはクロームだ。
「ボス! 悧塢大怪我なんてしてないよね!?」
「してない。ただ薬を少し吸ったみたいでフラついてんだよ。今あいつ歩けない」
「私も悧塢の部屋に行く!」
「俺も行くぜ!」
「あんまり騒ぐなよ。隼人、なんか食いやすいもんない?」
「……では小さめのサンドウィッチでもお持ちします」
「ん。お兄さん……は、いないか」
「ボス! 先に行くからね」
「だから騒ぐな」
隼人が素早くサンドウィッチを作ってくれて悧塢の部屋に持っていくと、予想通りクロームが悧塢ににじり寄っていた。
「悧塢、やっぱり頭フラフラしてるよ? 横にならなくて大丈夫?」
「はい、ご心配おかけしてすみません」
「クローム、悧塢困ってるから」
「あ、綱吉さん」
「……羨ましいだけのくせに」
「また飛ばすぞ?」
「まあまあ、悧塢もそんなに酷い状態でもなかったんだしケンカすんなよ」
「悧塢、メシ食えるか?」
「はい、すみません」
一触即発の雰囲気から意識を逸らすように悧塢に朝食を差し出す隼人が視界に入ってひとまず落ち着こうと改めて悧塢に視線をやると、ベッドの上で上半身を起こしているが頭がフラフラと定まらない為に武に背中を支えられていた。然り気無く触るな、俺のだぞ。
「私が幻術で何とかしてあげられたら良かったんだけど……悧塢には見えちゃうから……」
「大丈夫ですよ、視界が定まらないだけで苦しくはないですから」
「よかった……」
「熱があるわけでもないからな。もうすぐ引くとは思うけど、しばらくは様子見で仕事休め」
「う……」
「返事は?」
「…………はい……」
仕事が貰えないことに本気で落ち込む悧塢の頭を撫でてから彼女の前に食事を置いてそれを勧める。と、薬のせいでまさかの事態発生。
「「え」」
「ぁ……」
小さめのサンドウィッチを手に持ったところまではよかった。んだけど口に持っていった瞬間口を開けるタイミングが合わなくて唇に衝突した。
(((いや可愛いけど!)))
「……大丈夫か?」
「……」
「ほら、貸して」
「え……?」
分かっていなさそうな顔で口を拭いている悧塢に笑いかけながらその手にあったサンドウィッチをするりと奪い取った。
「食わせてやるから」
「え!?」
「「ちょっと待った!!」」
「うるさい。食べられないんだろ? ほら、あーん」
「……ぁ、あー……」
羨望の眼差しで俺を邪魔しようとする武とクロームの手を受け流して悧塢の口にサンドウィッチを持っていくと、パンを食んだ時にちょっとだけ指に唇が当たって思わず口角が上がる。
「……美味しい?」
「……ふぁぃ、おいひぃでふ……」
「(やっべぇ可愛い、てか唇柔らかくって……)……もう一口食べる?」
「ん、はい」
「ボスばっかりずるい!」
「そうだぜー? ちょっとは代われよツナ~」
「やだ」
「おーおー、今日の悧塢の部屋は賑やかだなぁ」
「ん、リボーンさん、おはようございます」
何の気配もなく現れたリボーンはおかしそうに笑いながら悧塢に近寄って彼女の症状を見る。
「薬のほうはまだ切れてねーみてーだな」
「……はい……」
「…………こりゃダメだな」
「っ!」
フラフラと定まらない頭の悧塢を見て呟いたリボーンの一言に肩が揺れて動揺しているのがすぐに伝わる。だが、その直後に放たれたリボーンの言葉に今度は悧塢の目が見開かれた。
「ちょうどいいじゃねーか。この際だから休暇取って遊びに行ってこい」
「……え?」
「10月か……こっちなら海とか行けそうだな?」
「え」
「……よし、休暇とろう」
「あ、あの……」
「フランスの別荘の中にプライベートビーチついてるとこあったよな」
「確かタヒチ……」
「タヒチなら海水浴できんじゃん、行くか」
「ボス、いくらなんでも……」
「悧塢の水着はクロームに任せる」
「早速行ってくる」
悧塢を心配して渋るクロームの耳元で彼女が絶対に頷いてくれる提案を口にすれば、一瞬で扉まで移動したクロームが部屋を出る直前で立ち止まって振り返る。
「ボス! 楽しみにしててね♪」
「期待してる」
「え……え……?」
「よっしゃー! 久々の休暇だー! 泳ぐぜー!!」
「武、気が早い」
「ワリ」
「はい悧塢、あーん」
「え、あ、はい……」
理解しきれないままサンドウィッチをくわえる悧塢を眺めて目の前の休暇に想いを馳せる。
(あー、早く見てー……)
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