第27章
紅い鴉の夢主の名前
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ラルに頼まれた悧塢の任務を明日に控えた日の夕方頃、突然骸が執務室に顔を出した。
「沢田綱吉」
「何? 骸」
「次の悧塢の任務、僕も同行しますから」
「は? なんで?」
「調べたいことがありまして」
「……帰ってきたら調査内容報告書書けよ」
「これは僕らのことに関係するのであまり公言したくはないのですが」
僕らのこと。骸がそう言う時は大抵エストラーネオファミリーで実験台にされていたことに関する何かを調べる時。だから嘘を吐いている時以外は、それ以上何も言うことが出来ない。
「…………わかった。何をしたかだけ書け、内容は詮索しない」
「クフフ、ではこれで」
「……」
でも今回は、嘘を吐いている気配は無かったけど何故か腑に落ちなかった。だがそれを考えようとした途端、執務室の扉をノックする音と悧塢の声が聞こえて考えるのを中断する。
「あの、ボス今大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ。なに?」
「……リボーンさんのお部屋に、ラルさんがいるんですけど……」
「あ、リボーン帰ってたんだ。それで?」
「……二人の他にも、何人か……」
「え、何色?」
「……マーモン様とコロネロさんと……赤と緑と紫と橙です……」
「ラルとリボーンとマーモンとコロネロに……ってアルコバレーノ勢揃いしてんじゃん」
「え?」
「行くぞ悧塢」
「あ、はい」
わけのわからないまま目隠しをした悧塢を引き連れて早足でリボーンの部屋へ向かう。だって連絡もなしに最強の七人(プラスもう一人)が全員屋敷の中にいるってどういうことだ。
「リボーン、アルコバレーノ呼ぶとか聞いてないんだけど」
「俺じゃねぇ、ラルだ」
「ラル?」
「沢田には前に言っただろう、大きい仕事があるからアルコバレーノに声をかけていると」
「あぁ……あれか……。ユニ、久しぶり、元気そうだね」
「はい、沢田さんもお元気そうで何よりです」
微笑んで頭を下げたユニは俺と悧塢を見て楽しそうに笑った。なんか恥ずかしいこと見られたか?
「……ふふ」
「なんで笑ったの」
「いえ、沢田さんの好みの女性は素敵だなと」
「ちょっ!」
「おやおや、そういうことですか」
「(あれ、この方恭弥さんと声そっくり……)」
「ボンゴレもまだまだ青二才ということか」
「あーもー黙れって!」
波動を探りながら俺達の話を聞いていた悧塢のそばにラルとマーモンが歩み寄ってきて彼女に話し掛ける。この二人は無闇に下手なことは言わないから警戒する必要もなくて少しだけ場所を空けてやった。
「鴉、パーティー以来だね」
「はい、お久しぶりですマーモン様」
「今度の仕事はこのメンバーで行くからな」
「あ、はい。盲目の鴉……の、羽鳴邪 悧塢です」
「…………あ!」
名乗った悧塢を見て普段は煩くてよく追い出してるくらいなのに今日は結構静かにしていたスカルが思い出したように声をあげる。
「俺コイツ見たことある!」
「「「「「え」」」」」
「あれだろ? 漆黒の龍にくっついてた赤い目の……」
スカルは言葉を途中で切った。いや、切らざるをえなかった。悧塢がスカルの喉元目掛けて構えた短刀には黒い炎が灯っていて、その腕を俺が掴んでなんとか止めている状態だったから。なんでこいつら悧塢の地雷踏むかな。
「……はぁっ……はぁっ……」
「大丈夫。お前を貶めたいわけじゃないから」
「……すみま、せ……」
「よし」
息を吐きながら炎を消して短刀をしまった悧塢の頭を撫でてアルコバレーノを窺えばコロネロ以外全員が彼女の反応速度に感心していた。
「相変わらずおっかねー」
「コロネロ?」
「……ワリ」
揶揄うつもりで言ったであろうコロネロの言葉に思わず睨みを利かせる。そうさせたことがあるお前に茶化す資格はないし悧塢にとっては嫌な言葉であることに違いはない。一言目で追い返さなかっただけ有り難く思え。
「そーいや紹介してないよな。橙がユニ。赤が
「何だその紹介の仕方は」
「炎の色。悧塢は人の波動が見えるから」
「え、すげぇ!」
「ほぅ、それは興味深い……」
「……はじめまして羽鳴邪さん」
「え、あ、はじめまして……」
「……今回の任務、あなたには少し辛いかもしれません」
「え?」
「ユニは少しだけど未来が見えるんだよ」
「!? すごい……」
「……任務中に、術士とは会わないでください……正確には、六道さんとお兄さんに」
「!? 龍兄……来るんですか……?」
「すみません、そこまでは……」
「……わかりました、善処します」
龍が来るかもしれないと聞いて覇気をなくした悧塢の目の前で聞くことではないのは分かっているがユニがいるうちに聞いておかなければならないため、彼女にとってはあまり聞きたくない質問を口にした。
「ユニ、骸と龍は悧塢に何かする気なのか?」
「……はい、正確に何をするのかはわからないのですが……羽鳴邪さんにとってあまり良くないことのようです」
「……」
「あと……これは言いづらいのですが……」
「?」
「貴女がご自分の瞳を嫌っているのは重々承知なのですが……目隠しを、外してはいただけませんか?」
「!」
「お願いします」
「(ユニさん……綱吉さんとは少し違うけど……暖かい橙色……)…………わかりました」
少し間を空けて頷いた悧塢はゆっくりと目隠しを外して目を開く。彼女を刺激しないようにと気を遣ったアルコバレーノたちは遠目に見た悧塢の瞳に感嘆の息を溢した。
「!」
「おや、綺麗じゃないですか」
「ええ。……でも、あまりいい思い出はないようですから」
「……何故そこまで……」
「羽鳴邪さんは素直ですから。瞳を見れば伝わりますよ」
「!」
「皆さんは貴女を恐れたりしません。だから、心配しなくても大丈夫ですよ」
「……はい」
悧塢の手を包むように握って微笑んだユニに警戒心を解いたのか、嬉しそうに微笑んだ顔が可愛い、ってかなんだこの小さいの二人可愛すぎだろ。
「きめぇぞダメツナ」
「ダメツナ言うな心を読むな。ってか黙っとけよ!」
「「…………」」
「鴉」
「あ、はい」
リボーンと睨み合いの最中、気にすることなく目の前を横切ったヴェルデが悧塢に歩み寄り紙切れを渡す。そういやコイツは滅多に臆したりしないんだった。
「体に異変を感じたらここに電話しろ」
「え?」
「いいね?」
「あ、はい……」
「ヴェルデ、どういうこと?」
「……それはまたの機会に」
「……」
こっちを横目で見ながら意味深な言葉だけ呟いて、あとはうっすら微笑んでる口元が癇に障る。なんか“せいぜい嫉妬でもしてろ”とか副音声が聞こえてきそうで。そんなことを思いながらヴェルデを睨んでいたら視界の端から紫色が走り寄ってきた。スカルだ。
「なぁなぁ悧塢!」
「!」
「さっきの炎もっかい見せ……」
「……」
「……なんで俺様だけ警戒されてんだ」
スカルが興奮気味に近付く度に悧塢は後退りながら俺の後ろに移動してきた。いつもより動きが固くて可愛い。……いや、そうじゃなくて。
「お前が悧塢の地雷踏んだからだよ」
「悪気は無かったのにか?」
「安心しろ、コロネロも同じことして嫌われてるからお前だけじゃない」
「は? 嫌われてはいねぇよな? 悧塢」
「……」
「え、なんで視線逸らすんだよ」
「……」
「喋るのも嫌なのか!?」
「自業自得だよ」
「初対面でそんなの知るかよ」
「安心しろ悧塢、コロネロは俺がお前に近付けさせない」
「ありがとうございますラルさん」
「そこ礼言うとこなのか!?」
「黙れコロネロ訓練の的にするぞ」
「ひでぇ!!」
「(やっぱりラルさん、良い人だなぁ……)」
ラルの言葉に安心して尊敬の眼差しを向けた悧塢が珍しく目を見開いた。見上げた先にいた
「え」
「はい?」
「……恭弥さん……の、ご兄弟ですか……?」
「ふふふ。いいえ、全くの赤の他人ですよ?」
「え!? そんなに似てるのにですか!?」
「はい、生まれた国も違いますからね」
「あ、えっと、
「はい、私は嵐属性です」
「獄寺さんと一緒の色で恭弥さんと同じ顔……」
「大丈夫か?」
「……頭がぐるぐるしそうです……」
二人の瓜二つぶりに混乱して軽く目元を覆う悧塢のポーズが可愛くて見つめていれば呆れた視線をこちらに寄越しながらもラルが悧塢の肩をポンと軽く叩く。
「悧塢、明日は頼むぞ」
「は、はいっ!」
「話は終わったな。じゃあ帰れ」
「なんでだよ、客室くらいあんだろーが」
「文句あんの?」
「アリマセン」
圧をかければすぐに押し負けるくせに毎回強気に出てくるスカルを今回も言い負かしてリボーンの部屋を出ようと踵を返せば
「ああそうだ、雲雀君に挨拶してきてもよろしいですか?」
「何の」
「いえ、久しぶりに手合わせを……」
「駄目。つかそんなことするなら明日の為に温存しとけよ」
「それもそうですね、残念です」
「ほらさっさと帰れ」
「ああ、邪魔したな」
「羽鳴邪さん、また明日」
「じゃあまたね」
「はい、よろしくお願いします」
「悧塢、行くぞ」
「はい」
一番最後に部屋を出ていったユニとマーモンに手を振られて頭を下げた悧塢に声をかけ執務室へ戻る。扉を閉めて二人になってからデスクの前で声をかけた。
「悧塢」
「なんですか?」
「悪かったな」
「え?」
「瞳、見せたくないんだろ?」
「……仕事ですから」
「俺らの前では辛いって言っていいんだぞ」
「……だって、いつかはここを離れるんですよ? 慣れたら、」
「そのことなんだけどさ」
予想通りの返答を遮ってデスクの引き出しからある紙を取り出して悧塢に見せながら言葉を繋げる。
「悧塢、正式にボンゴレのヒットマンとしてここにいてくれないか?」
「……え……?」
「間が悪いのはわかってる。でもだいぶ前からこの話は上がってたんだ……この前のラルとの仕事が終わった時に、話すつもりだったんだけど」
「…………め、す……」
「え?」
「だめ、ですよ……私なんかがボンゴレにいたら……いつ同盟ファミリーからの裏切りに遇うか……」
「悧塢、それは……」
「謙遜しすぎとか、そんなんじゃないんです……!」
「……」
「明日早いので、失礼します」
「え、ちょ……」
感情が昂って声を張ったことに罪悪感を感じたのか、逃げるように執務室を出ていく悧塢の背中を見つめながら思わず呟く。
「……もう少し、押してみるか」
ユニの話を聞いて、今回は引くわけにはいかないと確信したから。
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