第25章
紅い鴉の夢主の名前
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雲雀に呼ばれたのは屋敷の中の雰囲気に合わない外国の造り(日本風)になっている部屋。こんな部屋が存在していたのかと思うほどいつも使う部屋から遠く、その部屋の隅に靴を脱いで座らされた悧塢の向かい側、低い机に散らばった書類を見ていた雲雀が顔をあげた。
「悧塢、指出して」
「あ、はい」
「…………」
雲雀は慣れたように悧塢の指のサイズを測るなりぼそりと呟く。
「……細いね……」
「え、細いですか?」
「うん、これじゃ君の指に合うように作らないと駄目だね」
「そんなに……?」
「……」
「僕のを嵌めるとしたら親指かな、それでも大きそうだけどね」
「……作って頂けますか」
「うん、じゃあそこに腕置いてて」
「はい」
「……」
「……あの」
「何?」
「なんで綱吉さん不機嫌なんですか?」
先ほどから邪魔にならない程度の距離を保ちつつローテーブルに肘をついて二人を眺め続けていた綱吉の視線に耐え兼ねた悧塢が口を開く。視線が自分に向いたことで綱吉の雰囲気が僅かに和らいだ。
「別に?」
「……じゃあ、気になるんですか? 私の指輪」
「……それもある」
「?」
「……指輪、無駄なの作られたらたまんないから」
「いいじゃないですか、指輪がいくつあっても無駄になることはないんですから」
「リングじゃなくて……」
「?」
首を傾げた悧塢の腕輪を削り取っていた雲雀はため息を吐いて呆れたように綱吉を見る。
「意味を知らない悧塢にそんなの渡しても仕事で使えなかったら捨てないとも限らないでしょ、そんな無駄なことしないよ」
「……」
「? なんのことですか?」
「君はまだ知らなくていいよ」
「……はい」
なんとなく聞きづらい雰囲気を感じて悧塢は口を閉ざすが、綱吉の表情がいまだに不機嫌なままなのが気になって彼の顔を見つめていると突然目が合った。
「俺の顔、なんかついてる?」
「いえ……」
「見惚れてた?」
「不機嫌だなって思っただけですよ」
「ムキになっちゃってかーわいー」
「……」
自分に意識が向いたためか機嫌の良さそうな表情の綱吉にからかわれた悧塢は先ほどまで彼を気にしていたのが馬鹿らしくなり、ため息を吐いて自分の手元を見やった。今までは
「……多分明日の夜には出来上がるから」
「分かりました。お願いします」
「うん」
そのまま部屋の奥へと行ってしまった雲雀を見送って悧塢も立ち上がろうとするが、足にピリピリとした痺れを感じてゆっくりとした動作で靴を履くも小上がりに腰掛けたまま動きを止める羽目になった。
「……足が……」
「ああ、痺れた? 抱っこして連れてってあげようか?」
「!? 少しですから大丈夫です!」
「遠慮すんなって」
「遠慮しますよ! あなたは私の上司なんですからね!?」
「頑固だなぁ」
「意味が分かりません」
「まぁそんなとこも可愛いから好きだけど」
「か、からかわないでください」
「あ、照れた?」
「違います」
結局足の痺れが取れてから自室へ向かうまで綱吉にからかわれてしまい、悧塢は冷静にと深呼吸をしながら自分に釘を刺す。
「(いちいち言い返してたらキリがないんだから冷静でいなきゃ……)」
明け方の五時。まだ東の空が白み始めたばかりの時間帯に、悧塢の部屋の扉が静かに開いた。
「……悧塢」
「……」
「……悧塢、起きろ」
「……ん、ラル、さん……?」
「起きたなら行くぞ」
「……! はいっ」
ラルの姿を認識した悧塢は彼女の言葉の意味を理解した瞬間覚醒しベッドから飛び降りる。
夜の屋敷に二人分の影が伸びた。
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