第21章
紅い鴉の夢主の名前
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パーティー当日の朝。といってもパーティー自体は夜から始まるので夕方まではいつもと同じように過ごすために悧塢はいつものように綱吉を起こしに部屋へ向かった。部屋に入った悧塢はベッドに近付き綱吉の肩を揺するが、彼の目の下にある隈に視線がいって手を止めた。
「(……寝不足?)綱吉さん、起きてください」
「ん……あぁ、おはよ……」
「……眠れなかったんですか?」
「いや、昨日のメイドの家族に事情を話して書類纏めてただけだよ、ちゃんと寝たから……」
「でも、目の下に隈ができて……」
綱吉の頬に手を伸ばして、しっかりついてしまっている隈に触れた悧塢は自分の行動に驚いて勢い良く後退る。
「すみませんっ! 出過ぎた真似をしましたっ!!」
「いや、大丈夫だよ。寧ろ朝から嬉しいかな?」
「っ、朝食の準備してきますねっ、失礼しますっ!!!」
「……可愛いなぁ……」
笑みを溢しながらゆっくりとベッドから下りた
綱吉の表情は柔らかかったが、一瞬後には真面目な顔付きになり扉を見つめた。
「……俺が気付かないとでも思ったのかな、昨日のこと」
見る者が見れば恐怖の対象でしかない、ボンゴレ十代目ボスの顔で。
何も起こらなくて良かったと悧塢は胸を撫で下ろしていた。メイドの死体のこともあり襲撃される可能性も考えていたが何事もなく太陽はオレンジ色になるまで傾いている。皆パーティーへ出るための準備に取り掛かり、悧塢も例外ではなくクロームと共にドレスへと着替えていた。
「悧塢、着れた?」
「はい」
「うん、何度見ても可愛い」
「可愛い、ですか? クロームさんのほうが素敵ですよ」
「ふふ、ありがとう」
黒のドレスに身を包む悧塢と藤色のドレスに身を包むクロームは一言で言ってしまえば美しい。だが、その賛美の言葉を“盲目の鴉である悧塢”にも言うかと問われれば話は別だ。それを理解しているから悧塢はパーティーを嫌い、ここ最近の表情も優れないのだ。
「背中のやつ結ばなくていいの?」
「はい、私は鴉ですから」
「ふふ、悧塢らしい」
微笑んだクロームは何かの道具を手に悧塢をソファに座らせて彼女の目の前に向き合う形で座る。
「悧塢、化粧しよっか」
「え、私やったこと……」
「大丈夫、やるのは私だから」
「……お願いします……」
「はーい、じゃあ目瞑ってね」
「はい」
「あ、軽くでいいからね」
「えっ、あ、はい……」
化粧をすること自体初めての悧塢はどうすればいいのか分からず混乱するばかりでスムーズにとはいかない。だが道具を持つクロームはそれすら楽しんでいるように見える。
「(戸惑う悧塢可愛い)唇少し開けてね」
「はい……」
「(予想以上にエロい……)……ここにボスが居なくて良かったね」
「え!? 私そんなに変な顔してました?」
「ううん、逆。可愛すぎる悧塢がボスに食べられちゃいそう」
「え!? 食べる!!??」
驚いて困惑している悧塢は素直に“食べられる”と受け取ったのだろうが、クロームが言ったのは勿論違う意味。そんな悧塢を目を細めて眺めるクロームは穏やかな表情をしている。
「うん、悧塢はそのままでいてね」
「あの、話が見えないんですが……」
「悧塢が可愛いってこと」
「はぁ……?(何がどうなってそういう結論になるの……?)」
「はい、おしまい。鏡見てごらん?」
「……わぁ……」
クロームに背中を押されて鏡の前に立った悧塢は思わず感嘆の声を洩らす。鏡に映った姿は自分であるはずなのにまるで別人だと錯覚してしまったからだ。
「綺麗でしょ?」
「これ、私……?」
「うん」
「……」
「悧塢?」
「ありがとうございます、クロームさん」
「(喜んでるの可愛い)どういたしまして」
そう言いながら悧塢の髪を結い上げたクロームは彼女の仕上がり具合に満足げに頷いた。
「もうみんな待ってるかな……悧塢、いけそう?」
「あ、はい」
太股に着けたベルトに武器を仕舞った悧塢は扉を開けるクロームの後に続いて部屋を出た。
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