第15章
紅い鴉の夢主の名前
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京子やハルと過ごしてから数日。悧塢が玄関前を通り過ぎようとした時、彼女の視線が扉に向けられた。
「……どなたですか?」
「! 私、武器を造っている
素早く目隠しをした悧塢は女の言葉が終わる前に扉を開けて来訪者の前に姿を見せた。害意は感じられなくても突然訪問してくるならば何か腹に据えているだろうと注意深く相手の観察に努める。こんなにも早く扉を開けられるとは思っていなかった女の方は驚いて言葉に詰まっていた。
「武器職人ですか(この子の波動、どこかで見たような)」
「あ、もしかしてあなたが、“残虐で冷酷で、相手を見たら瞬殺する非道な奴”と噂の盲目の鴉ですか?」
「……よくご存知で」
殺してもいいだろうかと、悧塢は殺気を抑え込みながら目の前の女に向けた殺意をやり過ごす。初対面でそれを口にするなんてそもそも敵意がなければやらないだろう。狙いは自分かと、悧塢の雰囲気が鋭くなる。
「この世界で知らない人なんていませんよ。……で、結局のところってどうなんですか?」
「あなたみたいに害のない人を無闇に殺したりはしません。依頼がなければですが」
「やはり恐ろしいですね。あ、私の武器見ます?」
「はい、少し興味あったんです」
「何してんだ? 悧塢」
「……リボーンさん」
初対面の人間の前で名前を呼ばれて軽く殺気を放つが、当の本人は全く気にせず歩み寄ってきた。武器を売りに来た女は悧塢の殺気に硬直していたが。
「盲目の鴉に、最強のヒットマンのリボーン……流石はボンゴレ……」
「なんだ? この女」
「武器職人の珱さんです。今武器を見せてもらおうかと」
「……ほぉ、結構名の知れた職人じゃねぇか」
「まさか最強のヒットマンに知っていてもらえるなんて! 感激です!」
リボーンも珱の造った武器を隣で眺め、悧塢は差し出された武器のひとつを手に取って上に掲げた。
「……軽い」
「! はい! 私の武器は軽いのが一番の特徴なんで、」
ズガンッ。と言葉は銃声にかき消え、言い終える前に弾を込めて発砲した悧塢にリボーンは嗜めるような声を出す。
「!?」
「へぇ、いいなコレ」
「何壁に穴空けてんだ」
「ちゃんと直しますよ」
悧塢は白い炎を手に灯すと穴の空いた部分にそれを翳して再生させる。間近でそれを見ていた珱は驚いて声も出せずにいた。
「な、なおっ……穴……!」
「大丈夫ですか?」
「は、いっ」
珱を心配していた悧塢は、ふと屋敷の奥から聞こえたこちらに向かって走ってくる足音にため息を吐いた。
「……怒られるだろうな……」
「さっきの銃声何!?」
「(お、例のイケメンだ)」
「すみません、私です」
「…………」
「ちょっと試し撃ちしてました」
「……お前なぁ……」
「すみません」
「で? そっちは?」
「彼女は、」
「私! 武器職人の珱って言います!! あのっ私の造った武器見てもらえませんか!?」
「……いいよ、俺自分の銃あるし」
「じゃ、じゃあナイフとかっ他にも色々っ」
「いらない」
「そ、そうですか……」
取り付く島もないほどきっぱりと断られ覇気を無くした珱を綱吉は冷たく見下ろして言葉を紡ぐ。
「用事、それだけなら帰ってくれないかな」
「ぁ、えと……」
「ボス、私が彼女の武器を見たいんですけどいいですか?」
「ぇ……?」
「……終わったらすぐ帰せ」
「はい」
珱が屋敷の奥へ行ってしまった綱吉から悧塢へと視線を移すと、彼女は先ほど試し撃ちをしていた銃を見ていた。
「やっぱりこれ欲しいな。いくらですか?」
「……さっき庇って頂いたお礼に差し上げますよ」
「? ありがとうございます」
「(なんかイメージと違うなぁ……)あの、鴉さんはなんでボンゴレに……?」
「えーと、仕事中にスカウトされて」
「そうなんですか!? 自分から入ったんじゃなくて?」
「おいおい、フリーのヒットマンは依頼がねぇと組織内で活動できねーぞ?」
「そ、そうだったんですか……」
「はい、珱さんなら個人的に依頼受けてもいいですよ」
「え……?」
「他の方の依頼受けるとボスに怒られちゃうので内緒でですけど。武器を無償で頂きましたし」
いたずらっぽく微笑んで人差し指を口元へ押し当てる悧塢を見て、珱の中で“盲目の鴉”の印象は一変した。
「(私の勘違いだ……こんないい人が男をたぶらかすわけない……)」
ふと、先ほどとは別の足音が聞こえてきて、間を置かずに現れたのは獄寺だった。
「おい、今日の……見ない顔だが客か?」
「あ……はい(顔合わせづらいな……)」
先日猫耳メイド服姿を見られてから、獄寺と顔を合わせるのが気まずい悧塢。だが、料理を教えると言った手前会わないわけにはいかない。
「今日は何作るんですか?」
「……クリームフィットチーネだ」
「あんな簡単なものを……」
「何か言ったか」
「いえ何も」
「盲目の鴉が、料理……?」
「変ですか?」
「いえ!ちょっと意外で……」
「だろうな、俺達も最初はこんなに料理が上手いとは思わなかったくらいだ」
「私は小さい時から料理やってたから作れるだけですよ」
「へぇ……(意外と家庭的なんだ)」
悧塢はリボーンの手首に嵌めてあった腕時計を見て珱の背中を優しく押した。
「あ、そろそろお引き取り願えますか? これ以上延ばすとボスの機嫌また悪くなっちゃうので」
「あ、はい! …………鴉さん!」
「はい?」
「また、会いに来てもいいですか……?」
「……じゃあ、今度は私の友人として呼びますね」
「! はいっ!」
「その代わり、新しい武器が出来たらまた見せてください」
「分かりました!」
珱は持ってきた武器を纏めると口元に笑みを浮かべながら屋敷を後にした。
「悧塢、そこで突っ立ってる獄寺早く連れてけ」
「え?あ、ごめんなさい」
「いや。それよりあんなこと言って良かったのか?十代目が知ったら……」
「大丈夫ですよ、彼女武器は造れても扱えないみたいなんで」
「ほう、よく解ったな?」
「持ち方を見れば扱えるかどうかぐらい解ります。獄寺さん、厨房行きましょう」
「……おう」
悧塢が獄寺と玄関前を後にしていた頃、綱吉は執務室のいつもの椅子に深く腰掛け大きなため息を吐いていた。
「……はぁぁ……」
ため息の原因は先ほどの武器職人の女だ。長くボスという椅子に座っていると自分にすり寄ろうとしている女の挙動が目につくようになり、瞳を見れば媚びを売ろうとしているかが判るようになってしまったのだ。そういう人間は早々に関係を断つに限るのだが、如何せん悧塢があの女を庇ったのが気に掛かる。
「……悧塢が絆されなければいいけど……」
ああいう女が一番面倒くさいんだよなと、これまでにも幾度かそういう経験があった綱吉はうんざりしたようにもう一度深いため息を吐いたのだった。
女が帰ってから暫くして、仄かにいい香りが漂ってくる。きっと悧塢が隼人に料理を教えているのだろうと、そんなことを考えていた矢先に執務室の扉がノックされ彼女が入ってきた。
「失礼します」
「ん、どうした?」
「えと、明日って私の仕事ありませんよね?」
「……ああ、どうしたんだよ? やけに機嫌いいじゃんか」
「はい、さっきの武器職人の子の武器を無償で頂いたんです……!」
「(嫌な予感がする)」
「それでですね、あの子がまた来てくれるそうなんです」
「(やっぱりか)何絆されてんだよ」
「? あの子の武器すごく軽いんですよ。また見せに来てくれるって言ってくれて」
「……はしゃぐ悧塢は可愛いけど、あいつはあんまり屋敷に呼ぶな」
「なんでですか?」
「駄目なもんは駄目」
「……ケチ」
「悧塢、お仕置きされたいのかな?」
「……り、理由くらい教えてくださいよ」
「……あの女、俺に取り入ろうとしてる」
「え……?」
「だからあんまり屋敷に連れてくるな。調子に乗るから」
「……」
悧塢は少し考える素振りを見せたあと、間を置いてから名案とばかりに声を弾ませた。
「じゃあ綱吉さんに会わせないようにすれば連れてきても
いいですか?」
「お前なぁ…」
「だ、だってまた武器見たくて……あの子なら、」
「駄目だって言ってるだろ、連れてくるな」
「…………失礼しました……」
拗ねた様子で執務室を出て行く悧塢を、綱吉は少しむくれながら呆れたように見つめる。
「……ったく」
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