第11章
紅い鴉の夢主の名前
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夕食の下ごしらえをしようと厨房へ向かう途中、突然聞こえてきたのは派手に何かが倒れる音とガラス製品が倒れて割れる音。悧塢の視界で何かから逃げるような動きをしているのは緑、ランボの色だった。敵が侵入している訳でもなさそうなのに何をしているのかと、音の発生源である部屋の扉に一応ノックをしてから入室する。そこには涙目で部屋の隅に蹲っているランボの姿があった。
「ランボさん?」
「あっ悧塢さ、ひいぃぃぃっ!!!」
「……」
ランボの視線を追って足元を見るとそこで動き回っていたのは嫌われる虫の代表格であるゴキブリだ。悧塢としては虫は虫だろうと怖がることもなく近付いて黒い炎で消し去ってやる。震えながらも一部始終を見ていたランボはポカンと間の抜けた顔で悧塢を見つめる。
「……ランボさん、もう大丈夫ですよ」
「、悧塢さぁぁん! ありがとうございますー!!」
泣きながら抱き着いてきたランボにどうしようと戸惑いつつも悧塢は素直に抱きとめて背中を撫でた。自分を落ち着かせてくれた綱吉を真似た形である。
「悧塢さんみたいな姉がいたら、すごく頼もしいのにな」
「姉……ですか?」
「はい!」
まさか自分が姉のようだと言われるとは思わず驚いて反応出来なかった悧塢の脳裏には、幼い頃に自分の面倒を見てくれた育ての親でもあり兄のようでもあった人の姿が思い起こされていた。
「龍兄……」
「悧塢さん?」
「! ごめんなさい、ちょっとぼーっとして……私、もう行きますね」
ランボの呼び掛けで我にかえった悧塢は、声をかける間を与えまいと体を離すとすぐさま小走りで部屋を後にした。
「……りゅうにい、って誰だろ?」
部屋に響いたのは、ランボの小さな疑問だけだった。
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