第9章
紅い鴉の夢主の名前
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ストーカーの一件から数日。その日は早朝から呼び出しを受けた悧塢が執務室へと赴いていた。これまでは離れている時間が多いのは嫌だというボスの職権濫用によって依頼と呼べるような依頼はあまり出していなかった。しかしそろそろ腹を括らなければと思い立った綱吉は重要度の高い仕事の話をするために執務机を挟んで悧塢に向き合った。
「失礼します。ボス、何かご用でしょうか?」
「悧塢、仕事「やります!!」……即答」
相変わらず仕事という単語には素早く反応する悧塢に苦笑するも、今回は時間を無駄にするわけにはいかないのだと思い直して深く息を吐き出した綱吉の様子に悧塢も背筋を伸ばした。
「早速なんだけどさ、イタリアの南端にある街に行ってほしいんだ」
「イタリア南端……フェリアーナファミリーですか?」
「……流石」
地域だけでどの組織か言い当てた悧塢に称賛を送りつつ不敵に笑う綱吉だったが、表情が優れない悧塢の様子に何か不安要素でもあったのだろうかとその顔を覗き込んだ。
「……どうした?」
「あのファミリーは最近拠点をずらしつつあるんです。イタリア南端というのは二ヶ月前の話ですし、一度偵察を向かわせてからのほうが得策かと」
「なるほどな」
悧塢の提案に返って来た相槌はたった今執務室に入って来たリボーンのもので、どこか得心がいったという様子で溜め息を吐く姿に眉間に皺を寄せながらも綱吉は報告をと声をかけた。
「リボーン終わった?」
「ああ。今帰ってくる途中でその南端の街に寄ってきたが、悧塢の言う通りもぬけの殻だったぞ」
「えー、次の会合までにあのファミリー潰しておかなきゃなのにな……」
「……リボーンさん、地図はありますか? イタリア南端とその近辺が拡大されているものがあるといいのですが」
「ほれ」
すぐに渡された目当ての地図を空いていたローテーブルの上に広げてペンを持ち出し、地図に何かの印を書きながら悧塢は己の知っている知識との擦り合わせを綱吉達へと提示し始めた。
「あのファミリーの拠点は移動するごとに南下しているんです。それを考えると今回の移動地点は……前の地点より南下した場所に別荘を持つファミリーを襲撃して奪い取った可能性があります」
「!」
「ほう……」
悧塢が説明しながら書き示した場所に弱小ファミリーの別荘がある事は把握していた綱吉達は急いで部下へと情報を伝達して偵察に向かわせる。ここまで的確に求めていた情報を提示されるとは思わず彼女の有能さに舌を巻くしかない。
「サンキュー悧塢」
「いえ、お役に立てて光栄です」
「リボーン、ついでに雲雀さん呼んできて」
「……雲雀さんなら一階にいますね」
「便利だな、それ」
何気無く言ったであろうリボーンの呟きを聞いた悧塢は、何も答えず再び地図に視線を落とすだけだった。
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