Sweet pea
お名前
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蔵馬さんがいない数日の間、私についてくれるという人が来た。
名前は
年は多分400歳くらいで、一番近いって聞いている。
コンコンとノックの音がした。
「入るぜ、飯だ。」
少年声っていうのかな。
ちょっと高めのハスキーボイスだ。
「ありがとう、助かるよ。」
「お前が好きな肉だってさ。メシ係に伝えたオレに感謝しろよな。」
「流石、駁くん!感謝してます……!」
駁くんは満足そうにケタケタ笑うと机に置いてくれた。
うわー、美味しそう。
「これは総長から頼まれた飲み物な。」
コルクの栓を抜いた瓶からすごいニオイがする。
青くさくて嗅ぐだけで口の中が苦くなる。
「うっ、この匂いは……。」
「ホントこれってすげー匂いするよな。アンタなら効果わかってると思うけど……ちゃんと飲めよ?」
ニヤニヤ顔で駁くんはこちらを見ている。
わかってる、これがよく効く薬茶だってことは。
そして恐ろしく苦くて不味いことも!
駁くんの前で初めて飲んだ時、昨日なんだけど。
あまりのマズさに戻しそうになったのよね。
……いや、口から少しでてた。
控えめに言ってかなりまずい。
とりあえず量はないから最初にグイッとのんでしまえば……。
結論から言うとのたうち回った。
なんだろう最初は苦さが来て顔がゆがむんだけど後から来るのこの青臭さ!
「ぎゃはははは!アンタすごい顔してるぜ。」
私を指さしながらお腹抱えて笑っている。
おのれ……!
全力で水を口へ流し込む。
なんとか後味を消そうとしていると、ひとしきり笑い終えたのか涙をぬぐいながら駁くんがベッドに座った。
「はあーあ、笑った!この薬出る時はカワイソーだからアンタの好きなご飯にしてやってんだぜー。」
なんと……。
よく考えてみると前回も何が好きかとか食べたいもの聞かれた気がする。
「あなたが神か。」
「うむ、崇め讃えよ。」
「ははー!ありがたやありがたや……。」
駁くんの薄紫色の髪が開けていた窓からの風でサラサラゆれた。
黙っていれば天使なのに。
「そう言えば聞きたかった事あるんだけど。」
「なに?」
「アンタ名前は?総長教えてくれなかったんだよね。」
「あ、そっか……。名乗ったこと無かった……カモ。」
よくよく考えたら蔵馬さんに名乗ってない。
ここまでの過程がアレだっただけになんかね、うん。
名乗るのも忘れてたよね。
「え、アンタって総長のお気に入りなんだと思ってたけど違うのか。」
「え、お気に入り?いや、ちがうちがう!」
どうしてそうなった。
私が女だから……?
確かに女性は見かけてない気がするけど……。
「へー……。最初ここ来た時、キスマーク。首んトコついてたし、てっきりそういうのなんだと思ってたんだけどな。違うんだ?」
「へ!?」
「きづいてなかったんかよ。」
え、いつ?
……ハッ!あの時か!
チクってした時だ!?
蔵馬さん何してくれてんの……。
「あー……、総長なりの優しさなんかな。」
「どういう事?」
「自分で考えれば?で、名前は?」
総長なりの優しさ……?
よくわからない。
教えてくれる気は無いみたいだし、蔵馬さんも考えがあっての事なら……。
……まぁ、いっか。
「凛、改めてよろしくね!駁くん。」
「ああ、総長直々のご命令だからな。世話はしてやんよ。あ、ちゃんと総長には名乗っとけよ。」
「も、もちろん……!帰ってきたらちゃんと言う。」
「失礼がないようにな。オレは妖狐蔵馬に憧れてここに来たんだ。」
「そうなんだ……?」
駁くんはその後、いかに蔵馬さんが素晴らしいかということについて2時間ほど語った後、満足して部屋を出て行った。
私は辺境の地にいて、外の事について全く知らない。
人とふれあってこなかったしね。
彼がどういう存在なのか今初めて知ったくらいだ。
冷酷で極悪非道の盗賊、妖狐蔵馬。
それだけで言うとただの恐ろしい人のような気もするけど。
でも強くて頭がきれてかっこいい、駁くんのあこがれの人。
……私にはまだわからないけれどこれから知っていこうとは思った。
一応世話になるんだし。
……いや、殺されかけた上に勝手に連れてこられたんだけど。
とりあえず、私は体を元に戻す事を優先しないと。
使えるものは使う。
強くなって誰にも何も奪わせないようにするんだ。
私が弱いからこんなことになる。
強く、なるんだ。