短編
お名前
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
会社終わり、待ち合わせ場所へと急ぐ。
こんな時に限っていくつもの信号にひっかかり憂鬱な気分になる。
待ち合わせ時間まであと10分。
お互いに社会人になり、会える時間が学生の時より減ってしまった。
彼は再婚したお母さんの夫、つまり義理のお父さんの会社を手伝っているそうだ。
っと、この角を曲がれば……。
路地の角を曲がって大通りへでると大きい時計の下に紅色を見つける。
うーん……わかってたけど……。
目線の先には愛想笑いを浮かべた彼が居た。
逆ナンされてる……。
まぁあの容姿じゃしかたないんだけどさ。
なんかこうモヤモヤっとするよねえ。
「……ねえねえおにーさん、私と一緒にお茶でもいかがですか?」
後ろから近付いて蔵馬に声をかけた。
蔵馬は振り返るとにっこり笑って私の手を取り、かわいい女の子達に頭だけでお辞儀をすると歩き出した。
「お待たせ、相変わらず人気だね。よかったの?かなり可愛かったけど。」
そういうと困ったように笑った。
久しぶりに会ったのだ、別にこんなことを言いたかったわけではないのに。
わかっているのに、我ながら可愛くない……。
小さく息をついて気持ちを切り替える。
「すみません、少々話しかけられたのでお話していました。」
「あ、いや、こっちこそごめんね。その、子供っぽくて……。」
「フッ……。大丈夫、貴方より優先するものなんてないですよ。」
蔵馬の言葉に顔が赤くなるのを感じる。
私が何に対してモヤモヤしているのか分かった上で欲しい言葉をくれる。
ホントこの人にはかなわないな。
黒くドロッとした感情は彼の言葉ひとつでコロッと変わる。
なんて現金なヤツなんだろう。
……せっかく夜をあけてくれたんだもの、楽しまなくちゃね。
「それじゃ、行きましょうか。お店、予約してあるんですよ。」
「えっ!?」
何も聞かされていなかったから、家でゆっくりするものだと思っていた私は思わず声をあげてしまった。
「大丈夫、フレンチですがこのままでも行けるような場所ですよ。」
クスクスと笑いながら手をつないだまま駅の方へ向かう。
嬉しくなって少し強く手を握ると蔵馬も握り返してくれた。
にやけ顔を隠すようにマフラーで口元を隠す。
この駅の付近にフレンチのお店があるなんて知らなかったな……。
よく通る道のはずなのに気づかなかった。
仕事でよく使う道から一本入ったところにそのお店はあった。
お店自体は地下にあるようで蔵馬に続いて階段を下りた。
レンガ造りの壁に磨り硝子のはまった木製のドア。
なんていうか入り口からして洒落た感じがする。
中に入ると落ち着いた間接照明に照らされ、4人掛けのテーブル席が2組あるだけのこじんまりしたお店だった。
クリスマス特有のにぎやかな空気が一切感じられない落ち着けるような場所だ。
「予約していた南野です。」
「南野様、お待ちしておりました。すぐに用意いたしますので、こちらにおかけになってお待ちください。荷物はテーブルの下にかごを用意しておりますのでそちらをお使いください。」
お店の人はそう言うなりカウンターの奥へと入っていった。
「そんなに落ち着かない?ゆっくりできるところを選んだつもりだけど。」
「っ!」
「そういう貴方を見ているのも楽しいからオレはいいんですけどね。」
座ってみるとなんだかソワソワしてしまったのを見透かされて言葉に詰まった。
そんな私を見て楽しそうに彼は笑っていた。
いつも通りな彼を見て心が落ち着いたのか、少し余裕が出てきてクラシックの音楽が流れる店内を見まわす。
「よくこんなお店見つけたね。」
「知り合いがここの常連でね、教えてもらったんですよ。」
和やかに会話しながらオードブル、スープ、ポワソンと食べていく。
久しぶりに好きな人と素敵な時間を過ごす。
何て贅沢なんだろう。
最後のカフェ・プティフールをいただいたところで時間は21時になろうとしていた。
「そろそろ帰りましょうか。」
「あ、うん。今日は泊っていくでしょ?」
「はい、そのつもりでした。」
お店の人に声をかけて支度を済ませるとドアへと歩いていく。
えっ……?会計は?
「おいで、大丈夫。済ませてありますよ。」
困惑している私の様子を理解したのか、安心するような声で言いながら微笑みを浮かべ手招きしていた。
い、いつのまに?
「ごちそうさまでした、美味しかったです。」
「それはよかったです。とてもいい彼氏さんですね?半年前から予約してくださっていたんですよ。」
「え、半年?」
「店長……。それは内緒にしておいてくれないと……。」
私は衝撃の事実に目を丸くしながら、ため息をついて店長と呼んだ人をジト目で見ている蔵馬を見た。
彼は私の視線に気づき、俯き加減に視線をそらした。
あの蔵馬が照れてる……。
その瞬間、喜びで心がいっぱいになり、言い表せないような幸福感に蔵馬のところまで走った。
「ありがとう。」
「……どういたしまして。」
まっすぐ目を見てお礼を言うと困ったように頭をかいて笑った。
「行きますよ。」
そういうとドアを開けて外へ歩いて行った。
こちらへ来た店長さんと顔を見合わせて笑うと蔵馬の後を追った。
「……南野くんっ!」
声をかけて背中に引っ付く。
「凛、手を出して。」
「うん?」
背中に引っ付いたまま、言われた通り前に向かってに手を差し出すと手首あたりにひんやりした物が当たった。
「いいですよ。」
手を見える位置に戻すと、赤と緑の石のついたポインセチアをモチーフにしたブレスレットが付けられていた。
「可愛い……。すごく嬉しい!ありがとう。今日は幸せを貰ってばかりだ。帰ったら私からもあるからね。」
「楽しみにしています。」
人通りのない路地でキスを交わす。
普段なら絶対に外ではしない事だ。
でも今は凄く愛しく思う心を止められない。
ポインセチアの花言葉は「私の心は燃えている」
こんな時に限っていくつもの信号にひっかかり憂鬱な気分になる。
待ち合わせ時間まであと10分。
お互いに社会人になり、会える時間が学生の時より減ってしまった。
彼は再婚したお母さんの夫、つまり義理のお父さんの会社を手伝っているそうだ。
っと、この角を曲がれば……。
路地の角を曲がって大通りへでると大きい時計の下に紅色を見つける。
うーん……わかってたけど……。
目線の先には愛想笑いを浮かべた彼が居た。
逆ナンされてる……。
まぁあの容姿じゃしかたないんだけどさ。
なんかこうモヤモヤっとするよねえ。
「……ねえねえおにーさん、私と一緒にお茶でもいかがですか?」
後ろから近付いて蔵馬に声をかけた。
蔵馬は振り返るとにっこり笑って私の手を取り、かわいい女の子達に頭だけでお辞儀をすると歩き出した。
「お待たせ、相変わらず人気だね。よかったの?かなり可愛かったけど。」
そういうと困ったように笑った。
久しぶりに会ったのだ、別にこんなことを言いたかったわけではないのに。
わかっているのに、我ながら可愛くない……。
小さく息をついて気持ちを切り替える。
「すみません、少々話しかけられたのでお話していました。」
「あ、いや、こっちこそごめんね。その、子供っぽくて……。」
「フッ……。大丈夫、貴方より優先するものなんてないですよ。」
蔵馬の言葉に顔が赤くなるのを感じる。
私が何に対してモヤモヤしているのか分かった上で欲しい言葉をくれる。
ホントこの人にはかなわないな。
黒くドロッとした感情は彼の言葉ひとつでコロッと変わる。
なんて現金なヤツなんだろう。
……せっかく夜をあけてくれたんだもの、楽しまなくちゃね。
「それじゃ、行きましょうか。お店、予約してあるんですよ。」
「えっ!?」
何も聞かされていなかったから、家でゆっくりするものだと思っていた私は思わず声をあげてしまった。
「大丈夫、フレンチですがこのままでも行けるような場所ですよ。」
クスクスと笑いながら手をつないだまま駅の方へ向かう。
嬉しくなって少し強く手を握ると蔵馬も握り返してくれた。
にやけ顔を隠すようにマフラーで口元を隠す。
この駅の付近にフレンチのお店があるなんて知らなかったな……。
よく通る道のはずなのに気づかなかった。
仕事でよく使う道から一本入ったところにそのお店はあった。
お店自体は地下にあるようで蔵馬に続いて階段を下りた。
レンガ造りの壁に磨り硝子のはまった木製のドア。
なんていうか入り口からして洒落た感じがする。
中に入ると落ち着いた間接照明に照らされ、4人掛けのテーブル席が2組あるだけのこじんまりしたお店だった。
クリスマス特有のにぎやかな空気が一切感じられない落ち着けるような場所だ。
「予約していた南野です。」
「南野様、お待ちしておりました。すぐに用意いたしますので、こちらにおかけになってお待ちください。荷物はテーブルの下にかごを用意しておりますのでそちらをお使いください。」
お店の人はそう言うなりカウンターの奥へと入っていった。
「そんなに落ち着かない?ゆっくりできるところを選んだつもりだけど。」
「っ!」
「そういう貴方を見ているのも楽しいからオレはいいんですけどね。」
座ってみるとなんだかソワソワしてしまったのを見透かされて言葉に詰まった。
そんな私を見て楽しそうに彼は笑っていた。
いつも通りな彼を見て心が落ち着いたのか、少し余裕が出てきてクラシックの音楽が流れる店内を見まわす。
「よくこんなお店見つけたね。」
「知り合いがここの常連でね、教えてもらったんですよ。」
和やかに会話しながらオードブル、スープ、ポワソンと食べていく。
久しぶりに好きな人と素敵な時間を過ごす。
何て贅沢なんだろう。
最後のカフェ・プティフールをいただいたところで時間は21時になろうとしていた。
「そろそろ帰りましょうか。」
「あ、うん。今日は泊っていくでしょ?」
「はい、そのつもりでした。」
お店の人に声をかけて支度を済ませるとドアへと歩いていく。
えっ……?会計は?
「おいで、大丈夫。済ませてありますよ。」
困惑している私の様子を理解したのか、安心するような声で言いながら微笑みを浮かべ手招きしていた。
い、いつのまに?
「ごちそうさまでした、美味しかったです。」
「それはよかったです。とてもいい彼氏さんですね?半年前から予約してくださっていたんですよ。」
「え、半年?」
「店長……。それは内緒にしておいてくれないと……。」
私は衝撃の事実に目を丸くしながら、ため息をついて店長と呼んだ人をジト目で見ている蔵馬を見た。
彼は私の視線に気づき、俯き加減に視線をそらした。
あの蔵馬が照れてる……。
その瞬間、喜びで心がいっぱいになり、言い表せないような幸福感に蔵馬のところまで走った。
「ありがとう。」
「……どういたしまして。」
まっすぐ目を見てお礼を言うと困ったように頭をかいて笑った。
「行きますよ。」
そういうとドアを開けて外へ歩いて行った。
こちらへ来た店長さんと顔を見合わせて笑うと蔵馬の後を追った。
「……南野くんっ!」
声をかけて背中に引っ付く。
「凛、手を出して。」
「うん?」
背中に引っ付いたまま、言われた通り前に向かってに手を差し出すと手首あたりにひんやりした物が当たった。
「いいですよ。」
手を見える位置に戻すと、赤と緑の石のついたポインセチアをモチーフにしたブレスレットが付けられていた。
「可愛い……。すごく嬉しい!ありがとう。今日は幸せを貰ってばかりだ。帰ったら私からもあるからね。」
「楽しみにしています。」
人通りのない路地でキスを交わす。
普段なら絶対に外ではしない事だ。
でも今は凄く愛しく思う心を止められない。
ポインセチアの花言葉は「私の心は燃えている」