暗黒武術会編
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じゃんけんで勝った桑原くんは円闘場の上へと進んだ。
桑原くんの前には半透明の布を上から羽織った死々若丸が立っている。
「おっと浦飯チームがじゃんけんをしている間に死々若丸選手すっかり戦闘準備完了です!!」
「ではっ!始め!!」
開始の合図でまず桑原くんが霊剣を出してつっこんでいくが、死々若丸はひらりとかわして持っていた布を桑原くんにかぶせる。
……え?
マジックのように一瞬で桑原くんの霊気ごと消えてしまった。
「桑原選手行方不明により、死々若丸選手の勝利でーす!!」
「キャー!!」
審判から勝利宣言が出た途端、観客から黄色い歓声が上がった。
そのあと他の妖怪からも声が上がる。
「やったァーまずは1匹ィ!!」
「今度はオレ達にも見えるように八つ裂きにしてくれよー!」
「な……死々若丸選手まるで煙のように桑原選手を消してしまいました!!」
「よっしゃァア次も殺せェ!八つ裂きだー!!」
「八っつ裂き!八っつ裂き!!」
「会場全体から割れんばかりの八つ裂きコール!さて次の対戦はー!?」
え、いや、桑原くん消えちゃったけど!?
ど、どうしよう。
どうしようもないけど!
軽くパニックに陥りそうになったが、感じた霊気に驚いて下を見た。
あれは、師範!!
覆面をした小柄な人物が飛影と蔵馬に話しかけていた。
師範がここに来たってことは浦飯くんは乗り越えたのよね?
……よかった、本当に。
でも桑原くんはどこに?
人一倍危機回避能力が高いからなんとか無事でいてほしい。
集中してみてもわたしが感知できる範囲にはいないみたいだ。
サイコロで相手を決めていたようだが、出た目は覆面だったようで師範が円闘場へ上がって行った。
「始め!!」
先制攻撃を仕掛けたのは死々若丸。
刀で師範へ斬りかかった。
「死々若丸選手、鋭い居合の連続攻撃!!覆面選手よけるのが精一杯です。が、徐々にその間合いをせばめられつつあります!!」
口だけじゃなくそれなりに強い……。
思ったより鋭い攻撃だったのか師範の覆面が切られて落ちる。
その顔を見て会場内がどよめいた。
「イチガキ戦の若い女と違うぞー!!」
「きたねぇぞ浦飯チーム!死ねー!」
「ルール違反は死刑だーー!!」
死刑コールが鳴り響く中、後ろにいたはずの戸愚呂がいつの間にかいなくなっていた。
師範……前の状態で顔見られてたのか。
イチガキ戦の時はいなかったから知らなかったな。
「こ、これは信じ難いのですがー……。浦飯チームに不正があったとのクレーム!!試合が一時中断しております。あっと今大会本部より裁定が下るようです。」
会場内は鳴りやむことのない死刑コールで異様な雰囲気だ。
同一人物だから違反でも何でもないんだけど、説明したところで分かってもらえないよね……。
「お静かに願います。ただ今の協議について、説明いたします。裏御伽チームより違う選手を使っているとのクレームがつきましたが、協議の結果……処罰無し、このまま試合続行といたします。」
その結果を受けて激しいブーイングが響き渡る。
まさか左京さん?
影響力のある人で知ってそうなのって彼くらいしか思いつかないけど。
「お静かに願います、お静かに!!今の協議内容について戸愚呂選手に説明していただきます。」
次いで説明された内容にブーイングがピタッと止まり、会場内はざわつきはじめた。
戸、愚呂?
「説明しよう。」
戸愚呂、いないと思ったらあそこにいたのか。
説明って師範のこと知ってるの?
前にポロっと出した戸愚呂って名前、やっぱりこの人の事だったんだ。
「ルール違反とのクレームだが、浦飯チームは違反はしていない。遅刻はしたがね。なぜなら、イチガキ戦の女とそこの女は同一人物だからな。霊波動の使い手はその力を最大限に使うとき、細胞が活性化し肉体がピーク時の年齢に戻る。つまり今の姿が本当の奴の姿ということだ。……そういうことでいいかねェ、幻海……!」
師範の名前が出た瞬間、会場がまたざわめきだす。
二人の間で何かあったのかな……?
そこまで詳しく知っているだなんて。
考えていると死々若丸が妙な剣を振り回し始めた。
柄の部分が半分ずつ上下にのび、薙刀のような形状だ。
伸びた部分にはどくろのようなものがついており見るからに不気味。
「風前の燈火といったところか。あれでは死々若丸にさえ通用しそうにない。」
「答えは浦飯が持ってくるだろう。その答え次第では……そうだな、幻海は決勝の前に死ぬことになるね。」
鴉と帰ってきた戸愚呂の会話を聞いてバッと勢いよく後ろを向く。
「師範が死ぬことになるってどういう事……。」
「さてね。」
戸愚呂を睨みつけるが軽くはぐらかされた。
見つめても視線が交わることはない。
教える気はないようだ。
……師範が死ぬ?
そんなはず、ない。
時折感じていた胸のざわめきが大きくなるのを感じる。
この変な胸のざわめきは一体……?
「見るからに不気味な死々若丸選手の魔哭鳴斬剣 !!はたしてどのような技が飛び出すか!?」
頭をむしばむようなうめき声や悲鳴が剣から発せられている。
何て耳障りな音なの。
近場の観客たちが倒れていくのが見える。
「死々若丸選手の刀から発せされる音で観客の中に倒れるものが続出しております!」
死々若丸は高く跳びあがって、師範に斬りかかった。
地面と接触すると同時にたくさんの髑髏のような妖気が観客席へと向かってくる。
弱い妖怪はそのままその妖気の餌食だ。
こっちにも3つほど飛んできたのを攻撃しようと構えた瞬間、目の前で爆発した。
何が起こったのかわからず、後ろを振り向くと鴉と目が合った。
この人、一体どういう原理で……。
鴉を睨んでいると会場内が騒がしくなる。
「おっと、あまりの技の恐ろしさに逃げ出す客が後を絶ちません!!かく言う私もちょっと逃げ腰!残る者、強がるものなど様々ですが……、試合はもちろん続行です!!」
師範はもちろん当たっていなかったようで死々若丸の背後にいた。
会場内は多くの逃げる客で騒がしくなっている。
円闘場では死々若丸が一撃を避けられたことに気づき、もう一度攻撃をしようと刀を頭上で回していた。
また耳障りな音が響く。
その声が妖気と合わさって師範と死々若丸のまわりに壁を作っていく。
声が可視化されるなんて……。
あれじゃ間合いを取るどころか避ける事もかなわない。
死々若丸はさっきの技を仕掛けようとまた斬りかかったが驚いた事に師範は刀を白刃取りし、その妖気を跳ね返した。
すごい……これが[#ruby=霊光波動拳_れいこうはどうけん]伝承者……。
波長を合わせて取り込み反射させるなんて。
「見ただろう。対妖気の技術戦で幻海を倒すのは至難。やつをくだくのは技を超える限りない力 !!」
戸愚呂は拳を顔の前に出し、握りながらそう言った。
なんだかすごく嫌な予感がする。
やつをくだくのは?
決勝の前に死ぬ?
まさか……。
「10 !!幻海選手の勝利です!!」
師範の強さを見て一瞬静かになったものの、裏御伽チームの残っている選手の見た目が年寄りのような選手のみで大丈夫なのかとざわついていた。
残った選手が相手を決めるためのサイコロをふる。
審判はのぞき込むと考えるような仕草をしたあとマイクを取った。
「桑原選手の目が出てしまいました。彼は帰らぬ人となりましたので振りなおしでーす!」
「ちょっと待てや、ねーちゃん!!誰が帰らぬ人だてめー。」
この声は……!
「キャ、びっくり。」
「桑原和真ふっかーーーつ!!!確か生きてりゃなん度でも出られるハズだったな!!」
く、桑原くん!!
よかった!!
桑原くんは実況の子兎ちゃんの隣の人のマイクをぶんどって実況席に乗り上げていた。
あ、かわいそう頭踏まれてる。
「最後をしめくくるのはこのオレ様だ!!」
あちゃー、帰ってこれたのはよかったけど……。
大丈夫かな?
最後の人、見た目はお爺さんだけど多分違う。
妖気はそれっぽいけれど肉体が若いままだもの。
両者とも円闘場の上に立ったところで開始の合図がされる。
仕掛けたのは桑原くん。
だけど……。
「試合開始と同時に突っ込んでいった桑原選手ですが、怨爺選手の発した黒い球体の中に閉じこめられてしまいましたァ!!」
あの黒い球体ってまさか、死々若丸の使っていた布と同じ……。
そう思っているとシュッと黒い球体ごと桑原くんは消えてしまった。
あー……。
た、たぶんまた帰ってこれるよね?
運はやっぱり強そうだし……。
……おんじい、だっけ?はやっぱり変装だったのね。
彼は顔に手をやり、マスクをはがして変装を解いた。
どんな素顔なのかと思ったけれど、見えたのは派手なピエロの格好をした人物だった。
「怨爺の時とは一転して派手な装いとなりました鈴木選手!え~~なんと申しましょうか形容しがたいフンイキをかもし出しております。」
急にここにも届くくらいの大声で怨爺、じゃなくて鈴木?は語りだした。
「私は宣言する!!私が優勝したあかつきにはまず手始めに老いたる者は皆殺し!!それに反対するものも皆殺し!!私に従うものにのみ生きる権利を与える!!」
何アイツ……。
「馬鹿野郎ふざけんなーー!」
「だれがてめぇに従うかよ!!寝ぼけんじゃねェ!!」
観客からそんな声が聞こえてきた。
鈴木は大真面目だったようで聞こえてきた方向に向かって妖気の玉を投げつけて客席に大きな穴をあけた。
「マッド・ピエロ……。」
まぁ、残念ながら次は師範みたいだからそこで終わりだろうけど。
まだ喋り足りないようで段々飽きてきた。
「もういいや始めましょーーー!!」
審判のいい判断に心の中でナイスとつぶやく。
開始と同時にゆらゆらと変な動きをし始め、妖気の性質を何度も変える。
さっきの技は通じないというアピールだろうか。
鈴木は走り出して七色の妖気を師範にぶつけ、師範は客席の壁まで飛ばされた。
うーん、死々若丸の方が強かったかも。
その人の性質に合わせて魔具を作る点では天才だと思うけど。
妖気も物理も全然大したことない。
「場外ダウン!!カウントをとりまーす。1 、2 !」
師範が円闘場に上がったところで一瞬にして鈴木のピエロの鼻を取った。
鈴木はそれに気づいていなかったようで師範の持ってるものを見て驚く様子が見える。
師範に何か言われて怒ったのか凄い顔をした。
気合を入れ肉体を強化したのか、目に見えて筋肉量が増え上半身の服が飛び散る。
でも見せかけだ、大した事ない。
師範にそのまま飛び掛かるが、逆に右ストレートをくらい地面に叩きつけられ、背中から踏みつけられる。
師範の攻撃は止むことなく鈴木の顎を蹴り飛ばし、浮いたところを30発以上のパンチをいれていく。
攻撃が止むころには美しさのかけらもない、ただ血だらけでボコボコになった物体が転がっていた。
いやもともと美しいかと言われれば違うって答えるけど。
……容赦ない。
ふと後ろで動く気配がして振り向く。
鴉と鎧の人は準決勝に行くのだろう、階段を下っていく姿が見えた。
戸愚呂はいつの間にか消えていた。
試合終わったし、私も蔵馬たちに会いに行こうとその場を後にする。
集中して妖気を探ってみるが会場内で見つかったのは蔵馬だけだった。
「蔵馬。」
「凛……。」
「久しぶりに妖狐の姿、見た。やっぱり強いね。」
この会場の人の量から探し当てるのは大変だったけれど、なんとか席の後ろの方で見ていた蔵馬を見つけて声をかける。
蔵馬は1度私を見たが、重々しい顔をしながら始まりそうなもう一つの準決勝へ目を向けた。
桑原くんの前には半透明の布を上から羽織った死々若丸が立っている。
「おっと浦飯チームがじゃんけんをしている間に死々若丸選手すっかり戦闘準備完了です!!」
「ではっ!始め!!」
開始の合図でまず桑原くんが霊剣を出してつっこんでいくが、死々若丸はひらりとかわして持っていた布を桑原くんにかぶせる。
……え?
マジックのように一瞬で桑原くんの霊気ごと消えてしまった。
「桑原選手行方不明により、死々若丸選手の勝利でーす!!」
「キャー!!」
審判から勝利宣言が出た途端、観客から黄色い歓声が上がった。
そのあと他の妖怪からも声が上がる。
「やったァーまずは1匹ィ!!」
「今度はオレ達にも見えるように八つ裂きにしてくれよー!」
「な……死々若丸選手まるで煙のように桑原選手を消してしまいました!!」
「よっしゃァア次も殺せェ!八つ裂きだー!!」
「八っつ裂き!八っつ裂き!!」
「会場全体から割れんばかりの八つ裂きコール!さて次の対戦はー!?」
え、いや、桑原くん消えちゃったけど!?
ど、どうしよう。
どうしようもないけど!
軽くパニックに陥りそうになったが、感じた霊気に驚いて下を見た。
あれは、師範!!
覆面をした小柄な人物が飛影と蔵馬に話しかけていた。
師範がここに来たってことは浦飯くんは乗り越えたのよね?
……よかった、本当に。
でも桑原くんはどこに?
人一倍危機回避能力が高いからなんとか無事でいてほしい。
集中してみてもわたしが感知できる範囲にはいないみたいだ。
サイコロで相手を決めていたようだが、出た目は覆面だったようで師範が円闘場へ上がって行った。
「始め!!」
先制攻撃を仕掛けたのは死々若丸。
刀で師範へ斬りかかった。
「死々若丸選手、鋭い居合の連続攻撃!!覆面選手よけるのが精一杯です。が、徐々にその間合いをせばめられつつあります!!」
口だけじゃなくそれなりに強い……。
思ったより鋭い攻撃だったのか師範の覆面が切られて落ちる。
その顔を見て会場内がどよめいた。
「イチガキ戦の若い女と違うぞー!!」
「きたねぇぞ浦飯チーム!死ねー!」
「ルール違反は死刑だーー!!」
死刑コールが鳴り響く中、後ろにいたはずの戸愚呂がいつの間にかいなくなっていた。
師範……前の状態で顔見られてたのか。
イチガキ戦の時はいなかったから知らなかったな。
「こ、これは信じ難いのですがー……。浦飯チームに不正があったとのクレーム!!試合が一時中断しております。あっと今大会本部より裁定が下るようです。」
会場内は鳴りやむことのない死刑コールで異様な雰囲気だ。
同一人物だから違反でも何でもないんだけど、説明したところで分かってもらえないよね……。
「お静かに願います。ただ今の協議について、説明いたします。裏御伽チームより違う選手を使っているとのクレームがつきましたが、協議の結果……処罰無し、このまま試合続行といたします。」
その結果を受けて激しいブーイングが響き渡る。
まさか左京さん?
影響力のある人で知ってそうなのって彼くらいしか思いつかないけど。
「お静かに願います、お静かに!!今の協議内容について戸愚呂選手に説明していただきます。」
次いで説明された内容にブーイングがピタッと止まり、会場内はざわつきはじめた。
戸、愚呂?
「説明しよう。」
戸愚呂、いないと思ったらあそこにいたのか。
説明って師範のこと知ってるの?
前にポロっと出した戸愚呂って名前、やっぱりこの人の事だったんだ。
「ルール違反とのクレームだが、浦飯チームは違反はしていない。遅刻はしたがね。なぜなら、イチガキ戦の女とそこの女は同一人物だからな。霊波動の使い手はその力を最大限に使うとき、細胞が活性化し肉体がピーク時の年齢に戻る。つまり今の姿が本当の奴の姿ということだ。……そういうことでいいかねェ、幻海……!」
師範の名前が出た瞬間、会場がまたざわめきだす。
二人の間で何かあったのかな……?
そこまで詳しく知っているだなんて。
考えていると死々若丸が妙な剣を振り回し始めた。
柄の部分が半分ずつ上下にのび、薙刀のような形状だ。
伸びた部分にはどくろのようなものがついており見るからに不気味。
「風前の燈火といったところか。あれでは死々若丸にさえ通用しそうにない。」
「答えは浦飯が持ってくるだろう。その答え次第では……そうだな、幻海は決勝の前に死ぬことになるね。」
鴉と帰ってきた戸愚呂の会話を聞いてバッと勢いよく後ろを向く。
「師範が死ぬことになるってどういう事……。」
「さてね。」
戸愚呂を睨みつけるが軽くはぐらかされた。
見つめても視線が交わることはない。
教える気はないようだ。
……師範が死ぬ?
そんなはず、ない。
時折感じていた胸のざわめきが大きくなるのを感じる。
この変な胸のざわめきは一体……?
「見るからに不気味な死々若丸選手の
頭をむしばむようなうめき声や悲鳴が剣から発せられている。
何て耳障りな音なの。
近場の観客たちが倒れていくのが見える。
「死々若丸選手の刀から発せされる音で観客の中に倒れるものが続出しております!」
死々若丸は高く跳びあがって、師範に斬りかかった。
地面と接触すると同時にたくさんの髑髏のような妖気が観客席へと向かってくる。
弱い妖怪はそのままその妖気の餌食だ。
こっちにも3つほど飛んできたのを攻撃しようと構えた瞬間、目の前で爆発した。
何が起こったのかわからず、後ろを振り向くと鴉と目が合った。
この人、一体どういう原理で……。
鴉を睨んでいると会場内が騒がしくなる。
「おっと、あまりの技の恐ろしさに逃げ出す客が後を絶ちません!!かく言う私もちょっと逃げ腰!残る者、強がるものなど様々ですが……、試合はもちろん続行です!!」
師範はもちろん当たっていなかったようで死々若丸の背後にいた。
会場内は多くの逃げる客で騒がしくなっている。
円闘場では死々若丸が一撃を避けられたことに気づき、もう一度攻撃をしようと刀を頭上で回していた。
また耳障りな音が響く。
その声が妖気と合わさって師範と死々若丸のまわりに壁を作っていく。
声が可視化されるなんて……。
あれじゃ間合いを取るどころか避ける事もかなわない。
死々若丸はさっきの技を仕掛けようとまた斬りかかったが驚いた事に師範は刀を白刃取りし、その妖気を跳ね返した。
すごい……これが[#ruby=霊光波動拳_れいこうはどうけん]伝承者……。
波長を合わせて取り込み反射させるなんて。
「見ただろう。対妖気の技術戦で幻海を倒すのは至難。やつをくだくのは技を超える限りない
戸愚呂は拳を顔の前に出し、握りながらそう言った。
なんだかすごく嫌な予感がする。
やつをくだくのは?
決勝の前に死ぬ?
まさか……。
「
師範の強さを見て一瞬静かになったものの、裏御伽チームの残っている選手の見た目が年寄りのような選手のみで大丈夫なのかとざわついていた。
残った選手が相手を決めるためのサイコロをふる。
審判はのぞき込むと考えるような仕草をしたあとマイクを取った。
「桑原選手の目が出てしまいました。彼は帰らぬ人となりましたので振りなおしでーす!」
「ちょっと待てや、ねーちゃん!!誰が帰らぬ人だてめー。」
この声は……!
「キャ、びっくり。」
「桑原和真ふっかーーーつ!!!確か生きてりゃなん度でも出られるハズだったな!!」
く、桑原くん!!
よかった!!
桑原くんは実況の子兎ちゃんの隣の人のマイクをぶんどって実況席に乗り上げていた。
あ、かわいそう頭踏まれてる。
「最後をしめくくるのはこのオレ様だ!!」
あちゃー、帰ってこれたのはよかったけど……。
大丈夫かな?
最後の人、見た目はお爺さんだけど多分違う。
妖気はそれっぽいけれど肉体が若いままだもの。
両者とも円闘場の上に立ったところで開始の合図がされる。
仕掛けたのは桑原くん。
だけど……。
「試合開始と同時に突っ込んでいった桑原選手ですが、怨爺選手の発した黒い球体の中に閉じこめられてしまいましたァ!!」
あの黒い球体ってまさか、死々若丸の使っていた布と同じ……。
そう思っているとシュッと黒い球体ごと桑原くんは消えてしまった。
あー……。
た、たぶんまた帰ってこれるよね?
運はやっぱり強そうだし……。
……おんじい、だっけ?はやっぱり変装だったのね。
彼は顔に手をやり、マスクをはがして変装を解いた。
どんな素顔なのかと思ったけれど、見えたのは派手なピエロの格好をした人物だった。
「怨爺の時とは一転して派手な装いとなりました鈴木選手!え~~なんと申しましょうか形容しがたいフンイキをかもし出しております。」
急にここにも届くくらいの大声で怨爺、じゃなくて鈴木?は語りだした。
「私は宣言する!!私が優勝したあかつきにはまず手始めに老いたる者は皆殺し!!それに反対するものも皆殺し!!私に従うものにのみ生きる権利を与える!!」
何アイツ……。
「馬鹿野郎ふざけんなーー!」
「だれがてめぇに従うかよ!!寝ぼけんじゃねェ!!」
観客からそんな声が聞こえてきた。
鈴木は大真面目だったようで聞こえてきた方向に向かって妖気の玉を投げつけて客席に大きな穴をあけた。
「マッド・ピエロ……。」
まぁ、残念ながら次は師範みたいだからそこで終わりだろうけど。
まだ喋り足りないようで段々飽きてきた。
「もういいや始めましょーーー!!」
審判のいい判断に心の中でナイスとつぶやく。
開始と同時にゆらゆらと変な動きをし始め、妖気の性質を何度も変える。
さっきの技は通じないというアピールだろうか。
鈴木は走り出して七色の妖気を師範にぶつけ、師範は客席の壁まで飛ばされた。
うーん、死々若丸の方が強かったかも。
その人の性質に合わせて魔具を作る点では天才だと思うけど。
妖気も物理も全然大したことない。
「場外ダウン!!カウントをとりまーす。
師範が円闘場に上がったところで一瞬にして鈴木のピエロの鼻を取った。
鈴木はそれに気づいていなかったようで師範の持ってるものを見て驚く様子が見える。
師範に何か言われて怒ったのか凄い顔をした。
気合を入れ肉体を強化したのか、目に見えて筋肉量が増え上半身の服が飛び散る。
でも見せかけだ、大した事ない。
師範にそのまま飛び掛かるが、逆に右ストレートをくらい地面に叩きつけられ、背中から踏みつけられる。
師範の攻撃は止むことなく鈴木の顎を蹴り飛ばし、浮いたところを30発以上のパンチをいれていく。
攻撃が止むころには美しさのかけらもない、ただ血だらけでボコボコになった物体が転がっていた。
いやもともと美しいかと言われれば違うって答えるけど。
……容赦ない。
ふと後ろで動く気配がして振り向く。
鴉と鎧の人は準決勝に行くのだろう、階段を下っていく姿が見えた。
戸愚呂はいつの間にか消えていた。
試合終わったし、私も蔵馬たちに会いに行こうとその場を後にする。
集中して妖気を探ってみるが会場内で見つかったのは蔵馬だけだった。
「蔵馬。」
「凛……。」
「久しぶりに妖狐の姿、見た。やっぱり強いね。」
この会場の人の量から探し当てるのは大変だったけれど、なんとか席の後ろの方で見ていた蔵馬を見つけて声をかける。
蔵馬は1度私を見たが、重々しい顔をしながら始まりそうなもう一つの準決勝へ目を向けた。
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