暗黒武術会編
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試合が終わり気が抜ける。
なんだか戦ったわけでもないのにすごく疲れてしまったな。
戦闘の終わったリングを見てため息をつく。
「大丈夫か、蔵馬。肩貸すぜ。」
「すまない、幽助。……凛、行きますよ。」
「あ、うん。桑原くん……えっとお疲れ様。」
「ってえぇ!?凛さん!?」
リングから降りて隣にいた桑原くんに声をかけたのだが、すごく驚かれた。
「あ、気づいてなかった感じ?最後凄かったね……?すっごく強くてびっくりしちゃった。」
「いやぁ!オレにかかればあんな奴どうってことないですよーー!!」
ワハハハと笑いながら一緒に出口に向かい、しばらくして雪菜ちゃんや螢子ちゃん達と合流した。
桑原くんは見つけた瞬間、ケガなんて無かったという感じで走って行ってしまった。
瀕死だったんだよね……?
自分の見立てが間違っていたかのような様子に改めて疑問がわく。
「幽助、オレたちは先にホテルへ戻りますね。」
「あ、責任もって蔵馬は部屋まで連れて行くから心配しなくてもいいよ。螢子ちゃんのとこ行ってあげてよ。」
「お、おう。そ、そうか?じゃまたあとでな。」
少し視線をずらして頬をかく浦飯くんに笑みが漏れた。
きっと2ヵ月間修行してて会うの久しぶりだろうしね。
ニコニコしながら見送る。
周りを見回すと飛影はいつの間にかどこかへ行ってしまっていた。
「ありゃ、部屋に戻るのは蔵馬だけか。」
少し高い位置にある顔に目を向けると少し表情を硬くしているように見えた。
「やせ我慢も程々にしたら……?凍矢にやられた傷とか痛くないわけないでしょう?」
「……バレてましたか。」
「見ればわかるよ。っていうかあの傷がそんなにすぐに治るはずないじゃない。何年の付き合いだと思ってるの!ほら肩貸すからいこう?」
身長差があるとはいえ少しくらい体重をかければ楽になるはずだと腕を持つがやんわりと断られてしまった。
結局部屋に帰るまで私の力は借りずに自力で歩いたのだけれど、着くなりどさりとベッドに倒れてしまった。
「く、蔵馬!?もう!意地はって……!」
「……とりあえず傷の手当をしたいので手伝ってください。」
「あー、そうだ。シマネキ草、完全に枯らしてしまおう?……うーん、久しぶりにやるけど大丈夫かなぁ。」
蔵馬をベッドの縁に座らせて自身は変身して妖怪の姿に戻る。
膝立ちになって蔵馬の腕を持つと妖気を高めて自分の牙に集中する。
「蔵馬、腕借りるからね。最初ちょっと痛いけど許してね。」
感知能力で一番効率のいい場所を探す。
ここかな……。
「……っ!」
かぷりと蔵馬の腕に牙を突き立てて妖力で変化させた血液を入れていく。
やはり痛かったのか蔵馬が息をのんだのを感じた。
最初は麻酔、次は枯らすための薬、そして止血剤。
ふと頭を撫でられる。
目線だけ蔵馬に移すと以前ぼたんさんに向けていたような視線と絡み合う。
蕩けるような、それでいて熱い視線。
された事のない慣れない視線にどぎまぎして顔が熱を持つ。
治療が終わって口を離すと唇を親指でなぞられた。
こんな蔵馬知らない、甘やかで、酔ってしまいそうな……。
フッと笑って手が離れていく。
「大胆ですね?」
「なっ!!む、昔もやったことあるでしょう!」
「そうでしたっけ?」
さっきの空気は幻だったかのようにサッと消えてしまった。
その変わりように少しだけホッとする。
知らない蔵馬を見て戸惑ってしまった。
でもそれと同時に少し残念だと思う自分もいて困惑する。
もう片方も同じように治療したが、髪を触ったりされるだけであんな雰囲気にはならなかった。
「もうすっかり体調はいいようですね。」
「うん、蔵馬のおかげだよ。本当にありがとう。」
心から笑ってお礼を言うと、一瞬驚いたような表情を見せた後口元に手を当てて伏目がちにどういたしましてと呟いた。
「蔵馬は休んでる?私は次の準決勝の相手を見にいってくるけど。」
「オレも行きます。手当がすんだら見にいく予定だったので。」
そう言って着替え始める蔵馬に吃驚する。
「そ、外で待ってるね!」
「居てもいいですよ?」
「ばか!」
にっこり笑いながら着替える手はとめない蔵馬に一言叫んで廊下へ出る。
以前から意地悪だったけど最近は増して私で遊んでるとこあるよね……。
ーーーーー
会場に着くとちょうど始まる所だった。
「飛影、来てたんだね。」
「フン、暇つぶしにな。」
結果は裏御伽チームの圧勝。
開始から2分で決着がついてしまった。
裏御伽チームの一人が私たちに向かって指をさす。
「笑わせるぜ。」
飛影はそう吐き捨てると会場に着いたらしい浦飯くんの方へ歩いて行った。
その後を追うように私たちも今の場所を後にした。
「し、信じられねェ。オレ達がこっちにくる5分の間に決着つけたってのか、その裏御伽チームは。」
「正確には2分だ。」
「とるに足らん。相手が弱すぎただけだ。」
桑原くんの質問に蔵馬、飛影は答える。
確かに相手が弱かったといえばそれまでだ。
見てきた中でも一番弱いのではないかというくらいで、私でも勝てるくらいの実力だとそう思った。
「どーでもいいが頭の上のふざけたものはなんだ?」
飛影が浦飯くんの上の頭に乗っているペンギンのような何かを見る。
私も気になってた、ちょっとぶさかわいいんだもん。
蔵馬と共に横目でその生物を見る。
浦飯くんはその問いに顔をしかめ、呟く。
「説明したくもねー。」
桑原くんは笑いをこらえるのに必死になっているようだ。
少し顔はにやけていて体はプルプルと震えている。
いつもの様に大笑いしないって事はここに来る前に散々笑って怒られたのかしら……。
「ところで蔵馬、ケガはいいのか?」
「大丈夫だ。明日には治る。」
話を変えるように幽助くんが蔵馬に聞くが、蔵馬はしれっと嘘をついた。
嘘つきめ。
私が治癒能力使ったってそんなすぐには治らないよ。
かなり酷いんだもの……。
「ボコボコのツラでやせ我慢はよすんだな。凍矢に貫かれた手足の痛みがそんなに早く治るものか。」
「ガマン強さは貴方といい勝負でしょ。」
「…………。」
飛影が私の心を代弁するかのように蔵馬に言うが、蔵馬はニコっと笑って言い返した。
あら、ぐうの音も出ないらしい。
どっちもどっち……。
「そーだ!!蔵馬よ、雪菜さんの治療をうけろよ!彼女の治癒能力とお前の薬草あわせりゃ鬼に金棒だぜ!」
「大丈夫ですよ、俺には今も昔も専属医がついてますから。ね、凛?」
そう言って可愛くウインクをされた。
「う、うん。」
「そうなのか?あ、実は彼女兄貴を探しにきたそうでよー。この大会終わったらオレも探すの協力すんだ!!」
「ほぉぉお!それは大変だ飛影!!オレ達も手伝おうじゃないか!!ね!!」
わざとらしく言う蔵馬に知られたと悟った飛影が、青筋をたててギロリと私を睨む。
わ、私じゃないよ!!
首をブンブンと振って違うとアピールする。
「おい、幽助……。」
「う。」
「キサマよりによって一番厄介な
「いや、蔵馬は凛と仲いいし、てっきり知ってると思って何気なーく。」
小声で言いあっている二人を横目で見ていると対面の階段の踊り場に戸愚呂チームが見えた。
観客はざわつき、戸愚呂コールも聞こえ始める。
戸愚呂は浦飯くんを指して首元をたたく。
……まるでココまで来いと言っているようだ。
浦飯くんはその挑発に拳を握り、親指をたてて首を指しながら横にスライドさせた。
「……ま、まじかよ!?前は気づかなかった。奴ら妖気は抑えてるはずだ!オレはあんなとんでもねェやつと戦ったのか!?」
「……。」
私も感じる。
前よりも鮮明に、死の恐怖を……。
目の前にいるだけで死が這いよってくるような、そんな恐怖感。
「戸愚呂の恐ろしさがわかるのはオメーが強くなったからだ、桑原。敵の強さがわかるのも強さのうち。あのヤローの受けうりだがな。」
「おいおい、オレ達を忘れてんじゃないか?」
戸愚呂に気を取られていると横から声が聞こえた。
……裏御伽チーム。
強いのには変わりないけれど戸愚呂達よりプレッシャーを感じない。
「正義の味方気取りか?ヘドが出るぜ。」
そういうと桃の印のついた鉢巻をした男は口に入っていたガムを吐き捨てた。
「あぁ?」
桑原くんは男に向かって凄むが、男はニヤニヤするだけだった。
「覚悟しとけお前らはオレ達の名を轟かすための踏み台だ。それにそこの女、その美しさ気に入った。優勝賞品の貴様は俺たちがいただく。」
腰に剣をさしたどこぞの剣客のような風貌の綺麗な銀髪の男に指をさされたが、蔵馬の後ろに隠れる。
「眼中ねーんだよ、ヒョットコがよ。名を売りたきゃTVに出ろよ、色男。」
「今の言葉必ず後悔させてやる、必ずな!!」
幽助くんの挑発がよほど頭に来たらしく綺麗な顔の男は鬼のように変身して言うとそのまま階段を降りて行った。
「……負けないでね。」
「とーぜん!っていうかオメー!優勝賞品ってなんだよ!きいてねーぞ!」
「えっ!?ま、まぁそういう事なのです。勝手に商品にされてます……。」
「垂金の時で知られたせいか……?よけェ負けられねーな。」
「……とりあえず戻りましょうか、雨も降りそうですし。」
見上げるとさっきまで晴れていた空は重そうな雲に覆われ始めていた。
今日の試合も全て終わりここにいる理由もない。
蔵馬の提案でホテルに戻ることになったが、浦飯くんと師範は用事があると別行動になった。
私は蔵馬の血がついた服のままうろうろしていたことに気づき一度自分の部屋に戻ることにした。
2人とも大丈夫かな。
部屋で着替えながら雨が降りはじめた外を見つめる。
真っ暗な森を見て不安は募るばかりだ。
……考えても答えは出ない、か。
深いため息をついて触れていた窓から手を引く。
4階までエレベーターで降りると404号室の方から楽しそうな声が聞こえてきた。
皆、来たんだ。
一応扉をノックすると蔵馬の声でどうぞ、と返事が聞えた。
「おじゃま、しま、す?」
部屋に入ると飛影以外が輪になって楽しそうにトランプゲームをしていた。
ああ、なんて平和なんだろう。
ざわついていた心が少し凪いだ。
とりあえず邪魔にならないように飛影のそばに行く。
「飛影はやらないの?」
「やらん。」
「ま、そうだよね。そういえば手の具合どうなの?ちょっとくらいなら治せるから見せて。」
「……。」
ややあって大人しく私に右手を出す。
……私に出すくらいだから本当に痛いんだろうな。
妖気を集中して能力で手のダメージを測る。
……!
こんな状態でよく平然としていられるな。
本当にガマン強さは蔵馬といい勝負なのかも。
「最初ちょっと痛いかもしれないけど我慢してね。」
力を使うと飛影の腕がピクっと反応した。
あ、痛かったんだ。
クスリと笑うと一瞬睨まれたがすぐに目をそらされた。
かなりダメージが深いから最奥から治そうとするとちょっと痛いんだよね。
表面からゆっくり時間をかけて治すだけなら痛くもないと思うけど。
「おい、もういい。」
「えっ?」
5分ほど力を送り続けていると飛影が口を開いた。
驚いて飛影を見ると何とも言えない顔をして私の後ろを見ていた。
「だってまだ始めたばっかり……。」
「オレの事より後ろのアイツをどうにかしてこい。」
「……アイツ?」
後ろを振り向くとニコッと笑った蔵馬に手招きされた。
