暗黒武術会編
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「ぬうううう!」
爆拳の妖気が霧状にリングを覆い隠していく。
「なんと爆拳選手、大量の汗を霧に変えて身を隠しましたーーー!!これでは浦飯選手相手がどこから攻撃してくるかわからない!!」
……この妖気量じゃ大した使い手でないことは明白ね。
しゃがんで蔵馬の手を取り、少しずつ妖気を送る。
「……凛?」
「……!!蔵馬!」
「いけない……人ですね、こんな所にまで……。」
聞こえてきた声の方向へ顔を向けると今にも消えそうな弱々しい笑顔で笑う蔵馬に涙ぐみそうになり唇をかみしめる。
直後凄い音と共に客席の壁に爆拳が吹っ飛ばされた。
「場外カウント数えます!!…………
喜ぶでも無くスタスタとリングを降りて歩いていく浦飯くんを不思議そうに見る。
「……蔵馬。」
「すまないな……予定では三人はオレで倒したかったが……。」
「ケガは大丈夫か?」
「ケガよりも自分で植えたシマネキ草が厄介だな。魔界の植物だけに枯らすのに時間と体力がかかる。まさに自分で蒔いたタネ、だけどね。でも凛のおかげで思ったより早く枯らせそうだ。」
にっこりと笑いながら冗談を言う蔵馬に少し安心する。
「ゆっくり休んでていいぜ残り二人もオレがきっちりカタはめる。」
「油断だけはするなよ、前の三人は出てくる順番も強さもバラバラだったが残る二人は確実に大将クラスだ。」
「どんな奴が相手だろーが負ける気はねー!!」
そう宣言してまた浦飯くんはリングへ戻っていった。
……風使いの陣がまだ残ってる。
どうしても気になってリング上にいる浦飯くんをじっと見つめた。
「……大丈夫ですよ、幽助ならやってくれます。」
不安が顔に出ていたのか蔵馬に声をかけられた。
「そうだね。……浦飯くんならやってくれるよね。」
「続いて第5試合!!」
コールがされた瞬間会場が大きなざわめきに包まれた。
「陣がやっと出てきたぜーー!」
「陣が出りゃこっちのもんだァーー!!」
そしてまた殺せコールが始まる。
「風使いの陣……。」
戦闘が始まるとリング上にすさまじい風が吹き始めた。
「蔵馬、ちょっと桑原くんの様子見てくるね。」
「……あぁ。」
目を閉じて枯らすのに集中しているようだ。
妖気ができるだけ体にとどまり続けるように小さな結界を張る。
「……ありがとうございます。」
「!う、ううん。」
気づかれるとは思っていなくて体が揺れた。
その様子を感じていたのかクスクスと笑う蔵馬に恥ずかしくなって早足で桑原くんの方へ歩みを進めた。
桑原くんの前に膝をつくと、とりあえずどんな状態なのか把握するために注意深く見る。
傷の具合を観察すると左の脇からあばら当たりが一番ひどそうだと感じた。
掌から血を出すと傷がある場所へ少し塗る、気休め程度の痛み止めだけど……。
あまり強い麻酔を使うと体に負担がかかってしまう。
治療してあげられないのを申し訳なく思う。
「……。」
「お疲れ様、桑原くん。」
身じろぎ一つしない桑原くんにそう言って蔵馬の方へ戻る。
じっと観察するとさっきよりシマネキ草が萎れてきているのがわかる。
激しい攻防が繰り広げられているリングへ目を向けると、空中で腕を回している陣と目が合った。
陣はにかっと太陽のように笑うと右腕に竜巻をまとわせた。
「ケリつけてやるだ!!」
陣はそのまま浦飯くんに向かって急降下していく。
「浦飯選手微動だにしませんーー!!まさか覚悟を決めたのかーー!?」
あたる瞬間素早く浦飯くんは霊丸を撃つと陣の技とのぶつかり合い爆風がおこり、リングの破片が飛んでくる。
瞬時に妖気で蔵馬と自分の周りに結界を張って石の飛来を防ぐ。
あまり強いのは張れないけど……小石程度なら……。
隣にはリング上にいた実況の女の子が飛ばされて転がってきた。
しかし流石プロ、すぐさま立ち上がり実況を続ける。
「あたた……!?ああっとふたりの姿が見えません!?激しい力のぶつかり合いで両者ふっとんだ模様です!!浦飯選手は場外にふきとんでいます。一方陣選手は、上!!上です!!」
吹っ飛んだ方向を見ると浦飯くんと飛影が何か話していた。
……!?
凄い妖気、もう術者もろとも消せる妖気が戻ってる。
これで浦飯くんが負けたりしたら確実に飛影は殺し合いを始めるつもりだ。
「凛。」
「……どうしたの?」
「少し妖気を分けてもらっても……?」
「もちろん、ちょっと待ってね。」
近くまで行き正面に座ると掌をかざす。
「それだと治療しているのがバレてしまいますよ、こちらへ。」
蔵馬は私の手を握ると横まで引き寄せる。
こんな怪我してるのに意外と力ある……。
隣同士で座っている形だ。
確かにこれなら一緒に座っているようにしか見えないけど……!
なんで恋人つなぎする必要が!!
赤くなっているであろう顔を隠すために体育座りをして膝に顔を埋める。
浦飯くんが必死に戦ってるっていうのにこんな浮かれて……。
浮かれて……?
なんで浮かれてるの。
スッと頭が冷えて冷静になる。
うずめていた顔をあげると、浦飯くんの攻撃が決まったのか、すさまじい風と音と共に陣が客席の一番上まで吹っ飛ばされていった。
「クリーンヒットォ!!陣選手、風を使う間もなく観客席に激突ーー!!
「浦飯くん!」
手をほどくと立ち上がって叫ぶ。
会場内は激しいブーイングの嵐だ。
「なんてザマだ!!とうとう残りひとりになっちまった!!」
「2対5だったってのによォー!!」
リングの向こうの残り1人を見るとスポンサーらしき男と何かを話しているのが見える。
「魔性使いチーム、大将!前へ!!」
確か吏将と呼ばれていた男……。
「私も予告しよう、私に指一本触れることなくお前は負ける。」
リングに上がるなり吏将はそう宣言した。
「なにィ~~~?」
見たところ陣より強い感じはしないけれど何か隠してるっていうの?
「始め!!」
「おもしれェ!!試してやんぜ!!」
「その試合STOP!!」
挑発された浦飯くんは開始の合図とともに殴りかかりに行くが、本部からの制止により勢いよくこけた。
……まさか、さっきスポンサーと話してたのって。
「なんと、VIP席のある本部よりものいいです!!」
「ちくしょオ!いったいなんだァ?」
「さきほどの陣V.S.浦飯戦で浦飯選手が場外に落ちた際、審判のカウントの取り方が遅かった疑いがあり……。」
「フニー!?あたしすかー!?」
「協議の結果、陣・浦飯両選手場外
間違いなくカウントは遅くなかった。
やっぱりキタナイ。
ざわざわと会場内はどよめく。
「カウント、遅く感じたか?」
「いや普通だと思ったが……。」
「つまり陣と浦飯の試合は両方とも場外ってことか。」
「ということは……浦飯チームの負け……?」
一番近い観客席からそんな会話が聞こえてくる。
「
そんなことが許されていいっていうの?
体が熱くなるほど腹が立つ。
今にでも叫びだして暴れてしまいそうだ。
「フ……そういうことだ、どうした審判やつらの負けを宣言しろ。」
「な、納得できません!本部、再考をお願いします!!」
「裁定はくつがえりません!!」
じわじわと自分の妖気が膨らむのを感じる。
「り、吏将!オレもこんな勝ち方は納得できない。命をかけた画魔に何と言えるのだ!!」
「甘ったれたロマンチシズムは捨てろ。言ったはずだ目的は勝つこと、無駄な殺し合いはせずに楽に勝てればいいのさ。」
凍矢が叫ぶが吏将は腕を組みながら鼻で笑って言葉を返す。
「なにをしている、オレ達の勝ちを宣言しないか!お前を殺して新しい審判を連れてきてもいいんだぞ。」
「…………。」
吏将に脅されて手を上げようとしたところで浦飯くんが前へ出る。
「一番納得いかねーのはだれかわかってんのかコラてめー。」
地を這うような浦飯くんの声に彼がぶちギレそうなのを感じる。
私だってそろそろ我慢の限界だ。
「幽助、勝ちなんざやつらにくれてやれ。奴を見ていかに意味のないバカげた遊びかわかっただろう。こんなヤツらのルールに付き合うことなどない。ここからはオレのルールでやってやる。本当に強い奴だけが生き残るサバイバル・ゲームだ。」
振り向くと飛影の右腕から黒く禍々しい妖気を感じる。
妖気は渦を巻いて結界を破壊しかねないほど大きくなっている。
「……確かにな、オレもぶっちぎれる寸前だぜ。付き合うぜ飛影!派手に暴れてやる!!」
「……浦飯チーム、戦闘可能選手不在のため魔性使いチームの勝……。」
「待っったあーーーー!!さっきからきいてりゃてめェら全く、このオレ様の存在をすっかり忘れやがって!!」
勝ちが宣言される瞬間待ったの声が聞こえる。
声の聞こえる方を見ると仁王立ちした桑原くんがいた。
く、桑原くん!?
さっきまで瀕死の重傷負ってたのに!
吃驚して怒りなんてふっとんでしまった。
「ムチャだ!バカ野郎!!オメーは1回戦でもうボロボロなんだぞ!」
浦飯くんはリングから降りると桑原くんに駆け寄る。
私は動けず呆然と2人を見守ることしかできなかった。
「オレしかいねーんだろが、ムカつくまんま暴れるだけなら奴らと変わんねーぜ。キタネェ奴らにも筋通して勝つからかっこいいんじゃねーか?大将。」
桑原くん……。
「勝てればな。」
「っちいち、っせーんだよてめーはよ!!」
浦飯くん、桑原くん、飛影のやり取りに完全に毒気を抜かれて笑ってしまった。
「ふふ、完全に引き立て役ね。蔵馬?」
「やれやれ、ですね。」
蔵馬と目を合わせて笑いあう。
「なんと驚きです!!そうですこの人がいました!!イチガキ戦でひん死の重傷を負った桑原選手、根性の復活!!両者中央へ!!」
でも目に見えてフラフラしている。
そりゃそうよね、桑原くんが驚異的な回復力を持ってるっていってもあの体の状態は……。
「きばれァ!!桑原ァァ!!きたねェ大会本部ごとぶっとばしたれ!!」
浦飯くんの激励と共に試合が始まるが桑原くんの霊剣が出ない。
……回復が追い付いていないんだ。
フラフラな桑原くんは吏将の攻撃を受け続ける。
「体は正直だな!!剣が出せない理由を教えてやる。お前のケガは普通の人間ならとっくに死んでいる程重いもの!!今は体の回復で精いっぱいなのさ!!」
言いながらも激しいパンチを入れていく。
体からは血が再び流れて赤でリングを染めていく。
「ハァハァ。」
桑原くんは荒い息と共に悔しそうな表情を見せる。
それでも必死に立ち上がり構える。
私たちはじっとそれを祈るような気持ちで見守るしかない。
「それにしても貴様の頑丈さにはヘキエキだな。よかろう冥途の土産に見せてやる。土使いの吏将の極技をな!!」
「!?吏将選手自ら場外に降りました!!いったい何を……?ああ!?なんと
実況しながらカウントするプロ根性。
あれは土の鎧……?
「
激しい一撃をまともに受けて桑原くんは仰向けに倒れる。
浦飯チームが進むにはこの勝負に勝たなければならない。
立って欲しいのにこれ以上傷つくところを見たくない。
矛盾した気持ちが頭をぐるぐると駆け回る。
「ダウン!!
「フン、これで完全に……!?な、何故だ……?」
ボタボタと血がまたリング上へ落ちる。
どれだけやられても立ち上がる桑原くん。
……尊敬するよ本当に。
本当ならもう立てないくらいのはずなのに、それなのに。
「なぜ立ち上がる!?」
「負けたくねェからに決まってんだろ、死んでもてめェは道連れだ……!引き分ければ延長決定戦。そうすりゃ幽助が今度こそケリつけてくれるぜ。」
「う……うぬう~~~。」
吏将に焦りの表情がうかぶ。
桑原くんはこっちを見てニッと笑った。
「桑原くん……?」
急激に霊力が上がる。
どこからあんな力……。
……っ!!命を燃やす気!?
「ダメ、桑原くん!!」
「桑原ァア!!」
命をかけるんだと悟り思わず声が出る。
誰も失いたくないのに……!
勢い良く突っ込んで行ったが、何かに気を取られたのか桑原くんは余所見をした。
その瞬間吏将のパンチが当たりそうになり、私は息をのむ……。
「てめーはどいてろ!!!」
「えぇ!?」
そんな心配をよそに、桑原くんは爆発的な力で吏将にエルボーをくらわす。
吏将はそのまま陣が吹っ飛ばされたような位置まで飛び、観客席へ激突した。
「雪菜さんっっっ!!!来てくれたんスか!!」
えぇ……?
えっと、何が起こったの……?
「和真さん大丈夫ですかーー!?」
「ワハハハ全っ然ヘーキですよ!!」
桑原君はリングの端まで行ってある方向に手を振っている。
あれは、雪菜、ちゃん……?
手を振って居るのは間違いなく魔界へ帰ったと思っていた雪菜ちゃんだ……。
「な、なんなんだあいつは。」
浦飯くん、私も同じ気持ちだよ……。
呆然としていると下からクスクスと蔵馬の笑い声が聞こえた。
「愛の力、ってやつですかね?」
「そ、そんな事ってある……?死にかけてたんだよ……?」
「浦飯チーム準決勝進出決定!!」
と、とりあえず勝ったんだよね……。
いまいち釈然としないままボーっとリングを見た。
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