再会編
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チャイムがなり、今日最後の授業が終わる。
教室内は一気に騒がしくなって部活へ行く生徒などは用意し始めた。
「今日と明日コーチ来るらしいぜ?」
「マジかよ、だりぃな。」
そんな声も聞こえる。
羨ましい。
明日、私生きてここに来られるかどうかもあやしいのに。
そんなことを考えながら帰りの用意をする。
先生が入って来て明日の事を伝えると帰りの挨拶と同時にみんな解散した。
南野くんの方を見ると彼も立ち上がってこちらを見る。
やはり目が笑ってない。
蛇に睨まれた蛙だ。
こわい。
手に持った鞄が手汗で湿る。
そして彼は動けない私の前まで来た。
「では、帰りましょうか。」
その声を無視するわけにもいかず、震える足を叱咤して立ち上がる。
「……うん。」
やっとの思いで一言声を絞り出した。
顔を上げるとすでに目の前にはいない。
南野くんが廊下へ歩き出したのを見て追いかける。
そして廊下へ出て階段に差し掛かった時、完全に委縮している私を見て彼は言った。
「別に今すぐどうにかしようと思っている訳では無いですよ、今日はいろいろと知りたいだけです。」
返答次第ではどうなるか知らんよ。
みたいなそういう感じですよね?それ。
それでも少し緊張はとけた。
問答無用で処されるわけでは無さそうだ。
学校から出て少し歩くと南野くんの提案で公園で話をする事になった。
ここは……。
いつか子犬を助けるために力を使った場所だった。
「覚えていますか?この公園。」
「え?」
ドキッとした。
この公園を覚えているか?
思い当たるのは一つしかない。
「何のこと……かな?」
「あなたが能力を使った場所です。」
ごまかしを許さないというかのような即答を聞いて背筋が凍った。
顔を見るとまたあの冷たい目をしていた。
ごまかせない。
「えっと、見て、いたんだね。」
「はい、妖気を感じたものですから気になって気配を追ったんです。」
「じゃ、あの時……。力を使った時にした気配って南野くんだったんだね?なにかの気配がしたとは思ったんだけど探ってみても感じられなかったから気のせいだと思ってた。」
「こちらを向いた時はバレたかと思いましたけどね。」
少し苦笑いをして私がいたであろう場所に視線をやった。
そう、あの照明の下で倒れていた子犬を助けたのだ。
「それで、本題ですが。」
南野くんの目はやはり蔵馬そっくりだ。
一瞬の隙も見逃さない鋭い目。
「まず1つ目、入学当時は隠していた妖気……。それを今隠さなくなった理由はなんです?」
「えっ……と。恥ずかしながら入学当初のように力を、抑えられないの。」
そう正直に答えると南野くんは探るような視線を向けた。
「抑えられない?制御ができなくなっているということですか?」
「そう、身体が成長するにしたがって段々と妖力も強くなってきて……。入学当時がギリギリ隠せていたくらいで最近はもうどうしようもなくて諦めちゃった。」
「他意はない、と?」
「他意……?自分の妖力のはずなのに巡りを感じないの。修行もどうすればいいか分からないし今は少し漏れているだけだからこのくらいなら大丈夫かなって……楽天的に考え過ぎたかな。」
バツが悪くて目線を下げると、納得はしていなさそうだが2つ目の質問へうつった。
「オレを見て蔵馬、だと言いましたよね?正直にお願いします。藍田さん、あなたは……何者ですか?」
「う、うーん……。」
これを説明するには正体を明かさなければならないけれど、迷ってる場合じゃない。
生きるか死ぬか、ここにかかっているような気がする。
偽りは死を意味する。
意を決してありのままに話した。
自分が珍しい妖怪であった事。
その能力はまだ健在である事。
蔵馬という妖狐と出会った事。
どういう関係だったかという事。
表情を見るのが怖くてまた目線を足下に向けていたのだが、全部話し終わっても無言の南野くんが気になって見上げると彼は顎に手を当て考え込んでいた。
5分くらいだっただろう。
私には永遠に感じるほどの沈黙が続いた後、彼から大きなため息が聞こえた。
私が恐る恐る表情をうかがうと、彼は少し柔らかく微笑んで呟いた。
「……そうですか、凛……名前は、一緒なんですね。」