暗黒武術会編
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起きたのは日も高くなりかけた時間だった。
掛け布団をめくりベッドサイドに座る。
また蔵馬に迷惑をかけてしまった……。
急に泣き出すとか、もう!
恥ずかしすぎる。
誰も居ないのにゴホンと咳払いをして誤魔化す。
……もう浦飯チームの二回戦は終わってしまっただろうか。
そう考えてふと自分の妖気がかなり回復していることに気づく。
妖気どころか身体も軽い。
蔵馬が言っていた通り全部このバングルのせいだったわけか。
もう何の効力もないけれど忌々しいバングルを目の前まで持ってきて眺める。
すぐ取ってしまいたいけれど左京さんに見つかると厄介だな。
ギリギリまで妖気のレベルを下げて戸愚呂たちの目も欺かないと。
もうしばらくは呪霊錠の体の重さと付き合わないとか……。
妖気のレベル調節は十八番だ。
一時期全く調節できないようになってしまったけれど、師範のおかげで元に戻すことができた。
……よし、会場へ行こう。
できるだけ同じ事をしていないと様子を見に来られても困る。
うーん、2ヵ月ぶりの健康?
制限のかかった重さはあるものの普通に動けることがこんなに有り難いなんて……!
森を抜け会場の前のスクリーンで今の状況を確認すると
浦飯チームがDr .イチガキチームに勝ったと表示されていた。
やっぱり間に合わなかった……。
って何このトーナメント表。
ベスト8が出そろったら公平な抽選で最終的な組み合わせが決まるって聞いたけど。
どう見たって公平な抽選じゃなかったでしょこれ。
浦飯チームと戸愚呂チームの位置はどう考えたって決まっていたとしか。
浦飯チームが優勝するにはDr.イチガキチーム、シードの魔性使 いチーム、裏御伽 チームか獄界六凶 の勝者と戦って勝って、最後に反対側の戸愚呂チームに勝つことが条件だ。
呆れてため息をついていると会場の方がすごい盛り上がりを見せていた。
「聞いたか!?浦飯チーム連戦だってよ!!」
「まじか!!これは浦飯チームがくたばる所見られるかもしれねーな!」
「誰かチケット売ってくれ!!10倍でもいいぜ!!!」
浦飯チームの連戦!?
なにそれ、裏の金持ちってほんとキタナイ!!
ポケットからチケットを取り出すと慌てて入場ゲートまで走る。
中に入って少し暗い廊下を走り、観客席のある場所までの階段を駆け上がった。
久しぶりに走った所為で息が上がったがそんなのお構いなしに今度は客席を駆け下り最前列に出る。
桑原くん!?
下を覗くと客席に一番近い場所の壁に桑原くんが寝かせられているのが見えた。
ひどい傷……見ているだけしかできないの?
今の状態なら治癒能力も使えるのに……!
「陣だ!風使いの陣だぜ!!」
……陣?
聞き覚えのある名前に相手サイドを見る。
あの人、あの時の!
風使いの陣……。
どおりで聞いたことあると思った!
魔界の忍の人たちだったのね。
妖怪同士の勢力争いの陰で暗躍する戦闘集団、魔界忍者。
その中でも最も恐れられている"修羅"の怪……。
それにしても大丈夫かな。
回復して気がよめるようになったからわかるけれど。
助っ人と飛影、桑原くんは戦える状態じゃない。
っていうかあの助っ人……、師範?
稽古をつけてもらっていた時とは比べ物にならないほど強い霊気だけど、本質は変わっていない。
どういう原理かは、わからないけれど。
「対戦方法は1対1の勝ち抜き戦と決定しました!えーーここで2回戦の前に運営本部によるメディカル・チェックを行います。日程の都合上連戦となる浦飯チームの体調を考慮しての特別処置です。しばらくお待ちください。」
メディカル・チェック?
ナース服を着た髪の長い女の人が歩いてテントの方から出てきて飛影と師範を指名する。
テントの下まで二人を連れて行くとテントごと強い結界が覆った。
あれは束呪縄 !!
呪文を連ねた特殊な糸、あれじゃ今の2人では動くのも危ない。
「メディカル・チェックの結果、飛影選手と覆面選手が総合的に判断し2回戦を戦うには不適合とみられ治療のため欠場といたします!」
ほんっとにきったない!!!
治療なんてするつもりないくせに。
……ただの罠に違いないけど、実際2人とも戦うには結構危ない状態ではあるのよね。
戦えるのは蔵馬と浦飯くん、か。
魔忍を相手に2人で勝てるの?
いや、勝たなきゃいけないんだけど……。
リングに初戦の二人が上がっていく。
最初は蔵馬、か。
「蔵馬V.S.画魔、始め!!」
なりやまない"殺せ"コール。
……非常にうるさい。
画魔は筆を取り出すと自分に化粧をしだす。
「なんとォ全身に模様をほどこした画魔選手!!妖気が急激に高まっていきます!!」
パワーもスピードも上がったけれど蔵馬は見切ってる。
それでもあのスピードじゃ武器を出す隙が作りにくい。
!
一瞬の隙をついて画魔が蔵馬の両足に模様を描くと急に蔵馬の動きが鈍くなった。
「なんと画魔選手、敵にも呪いの化粧をほどこすことができるようです。それに加えてあのスピードと攻撃力!!蔵馬選手大ピンチ!」
なるほど、あの模様に動きを止めるような効果が……。
画魔はそのまま両腕にも模様を描いていく。
「ああっと蔵馬選手両手足を封じられてしまった!!これは万事休すかーー!?」
画魔は動かない蔵馬にとどめを刺すべく殴りかかるが、両手足が使えなくたって蔵馬には……。
髪にローズウィップを巻き付け飛び掛かってきた画魔を切った。
「ああっとまさかの大逆転ーー!!なんと髪の毛でムチを操り画魔選手に決定的ダメージを与えました!」
腹部や手足にひどい出血、あれ以上の戦闘はもう無理ね……。
そのまま倒れてリングには血が広がっていく。
しかし画魔は起き上がって蔵馬に向かって腕を振り、血がどんどん蔵馬にかかっていく。
それ以上動いたら死んでしまうのに。
ん?あれはまさか……!
化粧水の正体は血!?
血がかかった服には封印の文字が出来上がっていた。
「ダ……ダウン!カウントを取ります!!」
画魔は倒れて動かなくなった。
勝負はついたけど次の試合はとても厳しい戦いになりそう。
「……10 !!次鋒前へ!!呪氷使い凍矢!」
あの動きの鈍さ、手足は重りを付けられているような感じなんだろう。
それにあの封印の文字、一体何を封じたの?
次は呪氷使い……。
以前飛影が戦った青龍や雪菜ちゃん達雪女より位の高い氷の使い手。
氷系の能力を使う妖怪の中では最も位が上と言われてる。
そっか、あの時ぶつかった人も魔性使いチームだったのね。
画魔が命と引き換えに作った時間、何分あるかわからないけれど蔵馬にとってはかなりつらい戦いになる……。
「始め!!」
試合が始まると凍矢は手に妖気を集める。
彼の手の中には無数の氷の玉が作り出された。
そのまま口の前に持っていくとフッと息を吹きかける。
息がかかった無数の氷たちは散弾のように蔵馬へ向かって飛び、傷を作っていく。
動けないとはいえ蔵馬の近くに行くのは危険だと判断したようだ。
遠距離からの攻撃に蔵馬は急所を外すよう避けるので精いっぱいみたい……。
「ダウン!!」
蔵馬……!
膝をついてしまった姿に祈るような気持ちで戦いを見守る。
見ている事しかできないのが辛い。
浦飯くんを見ている螢子ちゃんもこんな気持ちなんだろうか。
私の場合は使える能力を持っているせいで余計なことまで考えてしまう。
早く試合に勝って戻ってきて欲しい。
そうすれば少しでも楽にしてあげられるのに。
「く、蔵馬選手立ち上がりました!」
植物の武器化をすれば少しは戦いようがあるのに使ってないってことは画魔がほどこした最後の化粧、妖気を外に出せないようなものなの……?
避けてはいるもののやはり球に貫かれてかなりダメージが大きい、何か考えているようだけどいったいどうするつもりなんだろう。
時間的にはそろそろ呪縛も切れるころだけど。
「凍矢選手、氷の剣を出しましたーー!一気に決着をつける気でしょうか!!」
妖気が出せないんじゃさっきの画魔戦のようにはいかない!!
「蔵馬……!」
ぎゅっと目をつむって祈る。
「逆転ダウーン!!カウントを取ります!!」
その声にハッとして目を開けると左手から生えたシマネキ草で剣を受け止め、右手から生えたシマネキ草で凍矢の体を突き刺していた。
体の外に妖気が出せないから中を使ったのか!
でもあれじゃ枯らすのに妖力を集中しないと自分が呂屠のようになってしまう。
「7 、8 ……10 !!」
蔵馬が目を閉じて動かない……。
妖気はかろうじて感じるから死んではいないけど、もうこれ以上は無理だ……!
「やったぜェ!!まずは一匹ィ!!残りはあと四匹だぜ!」
「……うっさいな、蔵馬は死んでないわよ。死にたいの?」
カチンときて隣の妖怪に向かって殺気を飛ばす。
近くにいた妖怪たちは一斉に大人しくなった。
「く、蔵馬選手生きています!!かろうじて……立っているのが精一杯の状態で。」
浦飯くんがリングに近づき実況の女の子に何かを叫んでいる。
リングには2メートルはある次の選手が上がってきた。
何か言っているようだが浦飯くんも負けじと訴える。
「こ……交代を認めます!!」
交代の訴えだったのね。
よかった、ちゃんと休めば……。
「なにィ!ふざけんじゃねェェ!」
「続行!」
「続行!」
「続けろォ!奴を殺すまでやれーー!」
鳴りやまない続行コール。
そんなの認められるわけないでしょ……!?
「大会本部より命令です!!交代は認めません!!」
なっ……!?
こんなのあんまりだ、どこが公平な、純粋な戦いの場なのよ。
殺し合いの場であることは重々承知だけれどそれでも……。
じんわりと目の端に涙が浮かぶ。
審判兼実況の女の子も納得いかないのか渋い顔をしている。
「第3試合、蔵馬V.S.爆拳!!始め!!」
容赦のない本部のアナウンスと共に爆拳は女の子を掴んでリング外へと投げ飛ばす。
アイツ……!
ふと大きな気を感じて源へと目をやる。
……飛影、妖気が大きくなってきている。
戻りつつあるんだ……。
「殺せー!」
「殺せ!!」
一斉に殺せコールが巻き起こる。
爆拳は蔵馬に近づくと頬にパンチを入れる。
……!!
すかさず蹴り飛ばしてリング上に転がした。
「蔵馬選手ダウンです!!爆拳選手はなれて!カウントを数えます!1 、2 …………8 、ナイ……。」
もう少しでカウントが終わる所で蔵馬を掴んで立たせる。
この……!!
爆拳が腕を振り上げたところで観客席から飛び降り走りながらナイフで掌を傷つけ、浦飯くんの隣に並び構える。
「やめろ爆拳!!」
「吏将!なぜ止めた。」
「……殴ればお前はやられていた、後ろを見ろ。」
後ろには霊丸を構えた浦飯くんと周りに血の玉を浮かべた私がいる。
「奴らは本気だ、大会のルールを無視してこの会場の妖怪全てを相手にすることになっても撃っただろう。我々の目的は勝ち残ることだ。無駄な殺し合いをする必要はない。」
「ケッ甘いぜ吏将、いや凍矢も画魔も陣もだ。邪魔な奴は全部殺せばいいんだよ。まあいいこいつは返してやる!!上がってきな。」
爆拳は蔵馬を浦飯くんに放り投げた。
「……場外10カウントで爆拳選手の勝ちです!」
「凛こんなとこに来させてわりィな、蔵馬を頼む。」
「……まかせて。」
客席は私の存在にざわざわしているようだ。
そりゃそうよね。
「蔵馬……。」
リングの横に蔵馬を座らせると浦飯くんはリングへ上がっていった。
とりあえず傷口に私の血を送り込み毒を練る。
人体には全く影響のない除草剤みたいなものだ。
……さっきのでバレちゃったよね。
とっさに攻撃態勢に入ってしまったせいで妖気を開放してしまった。
少し覚悟した方がいいかもしれない。
でも蔵馬が最悪死んでしまっていたかもしれない場面で前に出たことを後悔はしない。
「続いて第4試合!!浦飯V.S.爆拳始め!!」
場内は私の事でざわついていたが試合が始まったことで徐々にまた殺せコールが戻ってきた。
大会本部が何も言わないところを見ると今はお咎めなさそうだ。
掛け布団をめくりベッドサイドに座る。
また蔵馬に迷惑をかけてしまった……。
急に泣き出すとか、もう!
恥ずかしすぎる。
誰も居ないのにゴホンと咳払いをして誤魔化す。
……もう浦飯チームの二回戦は終わってしまっただろうか。
そう考えてふと自分の妖気がかなり回復していることに気づく。
妖気どころか身体も軽い。
蔵馬が言っていた通り全部このバングルのせいだったわけか。
もう何の効力もないけれど忌々しいバングルを目の前まで持ってきて眺める。
すぐ取ってしまいたいけれど左京さんに見つかると厄介だな。
ギリギリまで妖気のレベルを下げて戸愚呂たちの目も欺かないと。
もうしばらくは呪霊錠の体の重さと付き合わないとか……。
妖気のレベル調節は十八番だ。
一時期全く調節できないようになってしまったけれど、師範のおかげで元に戻すことができた。
……よし、会場へ行こう。
できるだけ同じ事をしていないと様子を見に来られても困る。
うーん、2ヵ月ぶりの健康?
制限のかかった重さはあるものの普通に動けることがこんなに有り難いなんて……!
森を抜け会場の前のスクリーンで今の状況を確認すると
浦飯チームが
やっぱり間に合わなかった……。
って何このトーナメント表。
ベスト8が出そろったら公平な抽選で最終的な組み合わせが決まるって聞いたけど。
どう見たって公平な抽選じゃなかったでしょこれ。
浦飯チームと戸愚呂チームの位置はどう考えたって決まっていたとしか。
浦飯チームが優勝するにはDr.イチガキチーム、シードの
呆れてため息をついていると会場の方がすごい盛り上がりを見せていた。
「聞いたか!?浦飯チーム連戦だってよ!!」
「まじか!!これは浦飯チームがくたばる所見られるかもしれねーな!」
「誰かチケット売ってくれ!!10倍でもいいぜ!!!」
浦飯チームの連戦!?
なにそれ、裏の金持ちってほんとキタナイ!!
ポケットからチケットを取り出すと慌てて入場ゲートまで走る。
中に入って少し暗い廊下を走り、観客席のある場所までの階段を駆け上がった。
久しぶりに走った所為で息が上がったがそんなのお構いなしに今度は客席を駆け下り最前列に出る。
桑原くん!?
下を覗くと客席に一番近い場所の壁に桑原くんが寝かせられているのが見えた。
ひどい傷……見ているだけしかできないの?
今の状態なら治癒能力も使えるのに……!
「陣だ!風使いの陣だぜ!!」
……陣?
聞き覚えのある名前に相手サイドを見る。
あの人、あの時の!
風使いの陣……。
どおりで聞いたことあると思った!
魔界の忍の人たちだったのね。
妖怪同士の勢力争いの陰で暗躍する戦闘集団、魔界忍者。
その中でも最も恐れられている"修羅"の怪……。
それにしても大丈夫かな。
回復して気がよめるようになったからわかるけれど。
助っ人と飛影、桑原くんは戦える状態じゃない。
っていうかあの助っ人……、師範?
稽古をつけてもらっていた時とは比べ物にならないほど強い霊気だけど、本質は変わっていない。
どういう原理かは、わからないけれど。
「対戦方法は1対1の勝ち抜き戦と決定しました!えーーここで2回戦の前に運営本部によるメディカル・チェックを行います。日程の都合上連戦となる浦飯チームの体調を考慮しての特別処置です。しばらくお待ちください。」
メディカル・チェック?
ナース服を着た髪の長い女の人が歩いてテントの方から出てきて飛影と師範を指名する。
テントの下まで二人を連れて行くとテントごと強い結界が覆った。
あれは
呪文を連ねた特殊な糸、あれじゃ今の2人では動くのも危ない。
「メディカル・チェックの結果、飛影選手と覆面選手が総合的に判断し2回戦を戦うには不適合とみられ治療のため欠場といたします!」
ほんっとにきったない!!!
治療なんてするつもりないくせに。
……ただの罠に違いないけど、実際2人とも戦うには結構危ない状態ではあるのよね。
戦えるのは蔵馬と浦飯くん、か。
魔忍を相手に2人で勝てるの?
いや、勝たなきゃいけないんだけど……。
リングに初戦の二人が上がっていく。
最初は蔵馬、か。
「蔵馬V.S.画魔、始め!!」
なりやまない"殺せ"コール。
……非常にうるさい。
画魔は筆を取り出すと自分に化粧をしだす。
「なんとォ全身に模様をほどこした画魔選手!!妖気が急激に高まっていきます!!」
パワーもスピードも上がったけれど蔵馬は見切ってる。
それでもあのスピードじゃ武器を出す隙が作りにくい。
!
一瞬の隙をついて画魔が蔵馬の両足に模様を描くと急に蔵馬の動きが鈍くなった。
「なんと画魔選手、敵にも呪いの化粧をほどこすことができるようです。それに加えてあのスピードと攻撃力!!蔵馬選手大ピンチ!」
なるほど、あの模様に動きを止めるような効果が……。
画魔はそのまま両腕にも模様を描いていく。
「ああっと蔵馬選手両手足を封じられてしまった!!これは万事休すかーー!?」
画魔は動かない蔵馬にとどめを刺すべく殴りかかるが、両手足が使えなくたって蔵馬には……。
髪にローズウィップを巻き付け飛び掛かってきた画魔を切った。
「ああっとまさかの大逆転ーー!!なんと髪の毛でムチを操り画魔選手に決定的ダメージを与えました!」
腹部や手足にひどい出血、あれ以上の戦闘はもう無理ね……。
そのまま倒れてリングには血が広がっていく。
しかし画魔は起き上がって蔵馬に向かって腕を振り、血がどんどん蔵馬にかかっていく。
それ以上動いたら死んでしまうのに。
ん?あれはまさか……!
化粧水の正体は血!?
血がかかった服には封印の文字が出来上がっていた。
「ダ……ダウン!カウントを取ります!!」
画魔は倒れて動かなくなった。
勝負はついたけど次の試合はとても厳しい戦いになりそう。
「……
あの動きの鈍さ、手足は重りを付けられているような感じなんだろう。
それにあの封印の文字、一体何を封じたの?
次は呪氷使い……。
以前飛影が戦った青龍や雪菜ちゃん達雪女より位の高い氷の使い手。
氷系の能力を使う妖怪の中では最も位が上と言われてる。
そっか、あの時ぶつかった人も魔性使いチームだったのね。
画魔が命と引き換えに作った時間、何分あるかわからないけれど蔵馬にとってはかなりつらい戦いになる……。
「始め!!」
試合が始まると凍矢は手に妖気を集める。
彼の手の中には無数の氷の玉が作り出された。
そのまま口の前に持っていくとフッと息を吹きかける。
息がかかった無数の氷たちは散弾のように蔵馬へ向かって飛び、傷を作っていく。
動けないとはいえ蔵馬の近くに行くのは危険だと判断したようだ。
遠距離からの攻撃に蔵馬は急所を外すよう避けるので精いっぱいみたい……。
「ダウン!!」
蔵馬……!
膝をついてしまった姿に祈るような気持ちで戦いを見守る。
見ている事しかできないのが辛い。
浦飯くんを見ている螢子ちゃんもこんな気持ちなんだろうか。
私の場合は使える能力を持っているせいで余計なことまで考えてしまう。
早く試合に勝って戻ってきて欲しい。
そうすれば少しでも楽にしてあげられるのに。
「く、蔵馬選手立ち上がりました!」
植物の武器化をすれば少しは戦いようがあるのに使ってないってことは画魔がほどこした最後の化粧、妖気を外に出せないようなものなの……?
避けてはいるもののやはり球に貫かれてかなりダメージが大きい、何か考えているようだけどいったいどうするつもりなんだろう。
時間的にはそろそろ呪縛も切れるころだけど。
「凍矢選手、氷の剣を出しましたーー!一気に決着をつける気でしょうか!!」
妖気が出せないんじゃさっきの画魔戦のようにはいかない!!
「蔵馬……!」
ぎゅっと目をつむって祈る。
「逆転ダウーン!!カウントを取ります!!」
その声にハッとして目を開けると左手から生えたシマネキ草で剣を受け止め、右手から生えたシマネキ草で凍矢の体を突き刺していた。
体の外に妖気が出せないから中を使ったのか!
でもあれじゃ枯らすのに妖力を集中しないと自分が呂屠のようになってしまう。
「
蔵馬が目を閉じて動かない……。
妖気はかろうじて感じるから死んではいないけど、もうこれ以上は無理だ……!
「やったぜェ!!まずは一匹ィ!!残りはあと四匹だぜ!」
「……うっさいな、蔵馬は死んでないわよ。死にたいの?」
カチンときて隣の妖怪に向かって殺気を飛ばす。
近くにいた妖怪たちは一斉に大人しくなった。
「く、蔵馬選手生きています!!かろうじて……立っているのが精一杯の状態で。」
浦飯くんがリングに近づき実況の女の子に何かを叫んでいる。
リングには2メートルはある次の選手が上がってきた。
何か言っているようだが浦飯くんも負けじと訴える。
「こ……交代を認めます!!」
交代の訴えだったのね。
よかった、ちゃんと休めば……。
「なにィ!ふざけんじゃねェェ!」
「続行!」
「続行!」
「続けろォ!奴を殺すまでやれーー!」
鳴りやまない続行コール。
そんなの認められるわけないでしょ……!?
「大会本部より命令です!!交代は認めません!!」
なっ……!?
こんなのあんまりだ、どこが公平な、純粋な戦いの場なのよ。
殺し合いの場であることは重々承知だけれどそれでも……。
じんわりと目の端に涙が浮かぶ。
審判兼実況の女の子も納得いかないのか渋い顔をしている。
「第3試合、蔵馬V.S.爆拳!!始め!!」
容赦のない本部のアナウンスと共に爆拳は女の子を掴んでリング外へと投げ飛ばす。
アイツ……!
ふと大きな気を感じて源へと目をやる。
……飛影、妖気が大きくなってきている。
戻りつつあるんだ……。
「殺せー!」
「殺せ!!」
一斉に殺せコールが巻き起こる。
爆拳は蔵馬に近づくと頬にパンチを入れる。
……!!
すかさず蹴り飛ばしてリング上に転がした。
「蔵馬選手ダウンです!!爆拳選手はなれて!カウントを数えます!
もう少しでカウントが終わる所で蔵馬を掴んで立たせる。
この……!!
爆拳が腕を振り上げたところで観客席から飛び降り走りながらナイフで掌を傷つけ、浦飯くんの隣に並び構える。
「やめろ爆拳!!」
「吏将!なぜ止めた。」
「……殴ればお前はやられていた、後ろを見ろ。」
後ろには霊丸を構えた浦飯くんと周りに血の玉を浮かべた私がいる。
「奴らは本気だ、大会のルールを無視してこの会場の妖怪全てを相手にすることになっても撃っただろう。我々の目的は勝ち残ることだ。無駄な殺し合いをする必要はない。」
「ケッ甘いぜ吏将、いや凍矢も画魔も陣もだ。邪魔な奴は全部殺せばいいんだよ。まあいいこいつは返してやる!!上がってきな。」
爆拳は蔵馬を浦飯くんに放り投げた。
「……場外10カウントで爆拳選手の勝ちです!」
「凛こんなとこに来させてわりィな、蔵馬を頼む。」
「……まかせて。」
客席は私の存在にざわざわしているようだ。
そりゃそうよね。
「蔵馬……。」
リングの横に蔵馬を座らせると浦飯くんはリングへ上がっていった。
とりあえず傷口に私の血を送り込み毒を練る。
人体には全く影響のない除草剤みたいなものだ。
……さっきのでバレちゃったよね。
とっさに攻撃態勢に入ってしまったせいで妖気を開放してしまった。
少し覚悟した方がいいかもしれない。
でも蔵馬が最悪死んでしまっていたかもしれない場面で前に出たことを後悔はしない。
「続いて第4試合!!浦飯V.S.爆拳始め!!」
場内は私の事でざわついていたが試合が始まったことで徐々にまた殺せコールが戻ってきた。
大会本部が何も言わないところを見ると今はお咎めなさそうだ。
