霊界探偵編
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もう、2人とも満身創痍だ。
このままじゃ殺される。
浦飯くんがかなわないのに私が倒せるとも思えないけど……。
「侵入者は皆殺しだ!!ひと思いにはやるな!!じわじわ殺すのじゃ!!さんざん好き勝手やりおってガキどもが!」
アイツが垂金……。
VIP席のようなガラスに仕切られた部屋から私たちを見下ろしている。
小太りでいかにもって顔だ。
「いきます……。蛇毒刃!!」
敵をまっすぐ見て毒を練る。
血を刃に変えてサングラスの男へ向けて飛ばす。
少しでも傷をつけられれば……。
どうにか距離を取って戦いたいけど……。
「これは触れたらヤバそうだねェ。」
男は軽く避けて一瞬にして私の目の前へ迫る。
はやい……!
血を盾に変形させて防御の構えをするが盾を貫通して拳がお腹に入った。
「ぐっ……!ごほっ。」
あまりに苦しくてお腹をおさえる。
内蔵やられたかも……。
血が口からでてくる。
片手片足をついて立とうとしていると、もう一発顔にむかってパンチがとんできた。
咄嗟に右腕でガードするものの後ろの壁まで吹っ飛んだ。
背中から壁に衝突して一瞬意識がとんだ。
……人間の世界にもこんなのがいるのね。
一息ついて口から流れる血を手で拭う。
男は私を一瞥してまた2人に攻撃を仕掛けにいく。
死なせない……、絶対に!!
カメラは見当たらない……。
でも画面に映るあいつらが見えてるってことはどこかにはあるのよね。
でももう探して壊してる時間もない。
……仕方ない、よね。
覚悟して変身すると自分の血を全て毒に変える。
これで私に触れるたびアイツは毒に侵される。
魔界の蛇毒がどこまで効くか。
「女の子をいたぶる趣味はないんだがねェ。」
そう言って男は持っている盾を変形させて剣にした。
……両断する気ならお前も返り血で道連れだ。
でも簡単にやられはしない!
剣と盾を作り出し攻撃をしかける。
この蛇毒の剣は触れるものを溶かし、毒に侵す……!
変身してる時しか使えない妖力の消費が激しい技だ。
「やぁっ!」
振りあげた剣を男の頭へ振り下ろす。
男は私のスピードが上がったことに驚いたのか咄嗟に剣で受け止めそのままなぎ払った。
あまりの力にそのまま地面に叩きつけられる。
剣は肉が焼けるような音を出しながらボコボコと変形して人型になる。
人?なに……あれ……?
人型になったそれは毒がついたであろう部分を切り離し、再生した。
「やるじゃねーかこの女ァ、今の姿は実に俺好みだなあ!!ひゃひゃひゃ。」
「うぐっ……。」
近づいてきて私のお腹を蹴りあげるとまた盾に変形した。
意識が朦朧としてきた時、後ろで桑原くんの霊力がはね上がった。
「……し……んじらんねェ。本当に人間かよ…………人間のやることなのかよ!!」
「……驚いた霊力がアップしている。」
這いつくばりながら首だけで桑原くんの方を見ると彼は立ち上がって怒りをあらわにしていた。
怒りで……霊力が上がったのね……。
「どけ……オレがぶっ殺してーのはあんたじゃねェ。後ろの薄汚ねェ腐れ外道だ。」
「ほ?わしのことかそれは?ほひゃひゃおもしろいわ!!これるものならきてみィ下衆がァ。
「…………聞いたかい、あいにくだなァ。」
「どけェーーー!!」
戸愚呂……あいつの名前?
師範が前にポロっと出した名前と同じ……まさか……!!
桑原くんは叫ぶと霊剣をだして戸愚呂に突っ込んで行く。
戸愚呂は盾の付いた片手1本でその攻撃をいなし、手をつきだして桑原君を吹っ飛ばす。
「それじゃあムリだね。あんたのスピードはもうわかった。」
そういいながら1歩ずつこちらへ歩いてくる。
「う……浦飯。頼みがある……!!」
「ば、ばかやろ、そんなマネ下手したらオメーがくたばるぞ。」
「もういいぞ戸愚呂、とどめをさしてやれ思いきりむごくな。」
「……アイアイサー。」
垂金の言葉で盾が剣に変わる。
もうダメなの……?
「凛さんだって危険をおかしてまで戦ったんだ!!……くたばった方がましだ!!このまま負けるくれーならな!!たのむ……。」
「桑原……くん……?」
いったい何を……?
覚悟を決めたような真剣な顔で再び霊剣をかまえると戸愚呂にむかって走った。
「うおおォ!」
「だめ……桑原くん……!」
声が掠れて上手く出せない……。
「玉砕覚悟か……いいだろう、ひと思いにまっぷたつにしてやろう!!」
戸愚呂は剣を両手で振り上げると桑原くんを見据えた。
その時、後ろから桑原くんの背中めがけて霊気の玉が飛んできた。
これは霊丸!?
「うおおおぉ!」
「!!……やつの……霊気の
戸愚呂のお腹に思いきり霊剣が突き刺さり、巨体はそのまま後ろへ倒れた。
「ゲーム・オーバー…………私の勝ちだね、全部で66兆2700億……。金は今月中に全額用意しておいてくれよ。」
その言葉を放った男の方を見ると彼は私を見てニッコリと笑った。
そのあと接続を切ったのか画面は砂嵐に変わった。
あまりの疲労感に変身がとける。
あーもう体が外も中もボロボロだ……。
ごろりと体を反転させると何とかして立ち上がる。
水色の髪の女の子がこちらに走って来るのが見えた。
遠目からだったからよく見えなかったけど可愛い……。
そりゃ一目惚れもするよね。
「だ、大丈夫ですか!」
「私は何とかなる。それより彼を見てあげて。」
「は、はい!……動かないで!少しだけど傷を治す力があるから……。ごめんなさい、私の……ために。」
雪菜ちゃんは桑原くんの方へ走っていき治療をはじめた。
私は歩いて壁まで行くと背をあずけて座り込んだ。
まずは内臓からかな……妖気を集めてはやいとこ回復させてしまわないと……。
「あやまるのは……こっちの方だ……ごめんな……。こんなヒデー目にあってんだ、許してくれなんて言わねー。……けど人間には気のいい奴もいっぱいいて……オレの周りはバカばっかりだけど…………そんな奴らばっかりで。」
桑原くん……。
目を閉じ妖気の流れをコントロールしながら話を聞く。
「だから……だから人間全部を…………、人間全部を嫌いにならないでくれ……たのむ……。」
「大丈夫……!私……
「……あり……がとう。」
「凛、大丈夫か?」
顔を上げると心配そうな顔の浦飯くんと目が合った。
「うーん、まぁ、なんとか……?」
「悪かったな、無理させちまって……。」
「仕方ないよ、そうしなきゃ死んでた。」
金持ち達に私の姿を見られてしまったのはかなり痛い。
でもそういう種族が居るってことは知っていてもそれが私だと人間が判断するのは難しい事だ。
毒を扱う種族だって魔界には沢山いるんだもの……。
「でも、しばらくは霊界のお世話になろうかな……。あーでも高校どうしよう……結構休んじゃってるし……うーん……!」
「帰って蔵馬に相談すりゃーいんじゃねーか?」
「……そうだね、相談してみるよ。正直ちょっとこわいけど。」
苦笑しながら痛む身体にむちをうち、なんとか立ち上がってよたよたと出口へ向かう。
雪菜ちゃんは霊界へ行ってこれからどうするのかを決めるそうだ。
魔界に帰るんだろうけどなあ……。
桑原くんはショック受けそう。
3人でまた来た道をもどり、家に帰ってきた頃には真っ暗になっていた。
途中限界で桑原くんにおぶってもらったのは非常に申し訳なかった。
元気になったらお礼もしないとね。
ああ、体が限界だ。
ソファで横になる。
血やら土やらで汚れるけれどお風呂とか入ってる余裕はない……。
だんだんと意識が遠のいていく。
明日は蔵馬に色々相談しなきゃ……。
目蓋が重い、開けていられない……。
しばらくは任務もないって言ってたし、さつ、き……とショッピングも……いい、なあ。
目を閉じて睡魔に抗うのをやめる。
ーーーーー
小鳥の声で意識が浮上して目が覚める。
ぼーっとする頭で昨日の記憶をたどる。
昨日は帰ってソファで寝て、それから……?
しかしここは記憶とは違う場所だ。
なんで私天蓋付きのベッドで寝てるの?
驚いて一気に意識が覚醒した。
どうして私はいつもこんなんなのよ。
攫われたり力尽きて運ばれたり……!
力を使いすぎたせいで妖力はからっぽ。
能力はなにも使えないみたいだ。
傷は一応ふさがっているみたい。
能力が使えないとなると自分の目と耳で確かめるしかない……。
ベッドから降りてドアの方まで歩こうと、床に足をおろすと凄まじい電流が体を流れた。
「うあああっ!!」
な、なに……!?
ほんとなんなの!?
ベッドに倒れこみ少しパニックになっていると部屋の外からコツコツと音が聞こえた。
誰かいる……。
その音は部屋の前で止まると鍵を開ける音がした後、ドアが開いた。
……!
「あ、あなたは……!」
「やぁどうも、怪我の具合はどうかね?」
姿を見て驚愕した。
確かにあの時、霊剣を刺して倒した……。
戸愚呂……。
いや……力を使い果たしていたから彼が生きてた事も確認出来なかった……。
「やられたフリ、だったのね。……何故?依頼主は垂金ではなかったの?」
「本当の依頼主は私だよ。」
突然ベッド横のテレビがつき、画面に男の姿が映った。
「あなた、あの時の……。」
「おや、覚えてくれていたのか。」
髪は長くオールバック、品の良いスーツを着ていて右目あたりに傷……。
間違いない、垂金の屋敷で見た一人勝ちした男だ。
「3日も目を覚まさなかったから心配したよ。」
ふーっと煙草の煙を吐きながらニッコリと笑った。
3日……!?
3日も寝てたのに妖力が少しも戻ってない……?
確かにボロボロで妖力の消費も激しかったけど3日も寝てれば完治までとはいかなくとも妖力の回復くらいはしているはずなのに……。
ぐるりと部屋を見渡すと何か違和感を感じる。
まさかこの部屋……。
「くっく、察しがいいな。……その部屋は少々特別でね。ぱっと見ではわからないところに呪符や呪いが施されている。」
「……こんなところに閉じ込めて何が目的?」
「2ヶ月後、暗黒武術会というものが開催される。ゲストに浦飯、桑原、飛影、蔵馬を呼ぶことが決まっていてな。いわばキミは景品であり人質だ。」
「あんこく、ぶじゅつかい……?」
「闇の世界を利用して暗躍している人間や実力者がそれぞれ最強と自負する
なんて大会なの……。
そんな所に蔵馬達が……?
「そんなの、コエンマ様……いえ、霊界が黙ってないでしょ。」
「くっくっく……、お嬢さん……。残念ながら霊界は開催を止められない。この大会が妖怪のストレス発散の場になっていて、犯罪の抑止力になる事を知っているからな。」
「そんな……。」
「そういう訳だ。あと2ヶ月間大人しくしていてくれれば悪いようにはしない。わたしは君の美しい姿をとても気に入っているんだよ。できれば手荒な真似はしたくないんでね。監視は戸愚呂兄弟を付けている、くれぐれも変な気はおこさないでくれ。」
そう言い終わるとテレビが切れた。
黒い画面に自分が映る。
暗黒武術会……か。
「……当然貴方も出るのでしょう?戸愚呂さん。」
振り返って彼を見る。
彼はポケットに手を入れて壁にもたれ掛かっていた。
「そうだねェ。ウラメシ……と言ったかな?次は本気でやりあいたいもんだ。やつはもっと強くなる。」
目はサングラスで隠れていてよく見えないが口はニヤリと歪んでいた。
「そういえばお嬢さんには力を見せていなかったねェ。オレの能力は筋肉操作。……あの時は20%ってとこだったかなァ。……そしてこれが……はぁぁぁ!!」
ボコボコと筋肉が盛り上がりさっきとは比べ物にならないほど妖力が上がった。
こ、こんなの……勝てるわけ……。
力の差にガタガタと身体が震える。
「ふぅぅぅ……この部屋で妖力を上げるのはちとキツイねェ。これが60%ってとこだ。ウラメシにはこの姿を見せてきた。死に物狂いで強くなれと。……そういえばその帰りに蔵馬と飛影にも会った。大切にされているようだ、凄まじい殺気だったねェ。」
「……!!」
「……まァ、左京さんの言う通り大人しくしててもらえるとこっちもたすかるんでね。再会した時に余計な心配かけないようにゆっくりしてな。」
「わかった、けど……あなた……痛くないの?この床……。」
「最初の悲鳴はそれか。マッサージみたいなもんだ。オレには心地いい。それじゃァ。」
戸愚呂はドアを開けて出ていった。
この妖力を霧散させるような部屋であのパワーを出せるなんて……。
それにこの床が痛くない……?
なんなのもう、色々信じられない。
2ヶ月間……。
どうせこの部屋から出られないのならゆっくりしよう……。
抵抗した所で無駄だ。
彼は出ていったのに震えが止まらない。
シーツを握りしめて恐怖に耐える。
布団に潜り込み縮こまる。
恐怖を感じていたものの体の衰弱には勝てずそのまま意識を失った。
