再会編
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観察を続けてそろそろ1週間だが、あれ以来彼女が妖気を放出することはなかった。
まるであの夜の事はすべて夢だったかのような。
そんな気さえおこるほどに何もない。
何も無いならそれでいい。
オレだって人間と共存している中の1人だ。
この1週間観察していて分かったのは意外と彼女はぼーっとすることが多く、優しい心の持ち主だということ。
自分が人とは違うとわかっているからなのか人間とかかわるのは最小限にとどめているが、困った人を見ると放っておけないようだ。
最近は違うクラスの女生徒の一人とよく話しているのを見かける。
話しているといっても一方的に話しかけられて困っているようだけれど。
そろそろ観察をやめても問題はないだろう。
彼女の性格を見る限り共存を望んでいると思うから。
もちろんまだはじめて一週間だし多少の警戒は必要だろうが……。
あれだけお人好しで他者を切り捨てられないところを見ると何か企んで遂行する機会をうかがっているようには思えないしできるとも思えない。
頭の片隅に置いておく程度でよさそうだな。
それから特に目立ったこともなく普通の平和な日々を過ごし、春が終わり夏のピークが過ぎた頃に彼女に変化が起きた。
彼女から妖気が溢れ出るようになったのだ。
一体どういうことだ?
共存を望んでいたと思ったのは勘違いだったのか?
今までたまに感じていた微かな妖気とは違う。
力を使った時ほどではないが警戒するに値する確かな妖気。
彼女……。
藍田さんは意図してやっているのか?
それとも気づいていないのか。
そんな事を考えていると彼女の消しゴムが落ちた。
彼女は気づいていないようで、ポツリと独り言を呟いた。
「台風で吹雪って……吹雪ってなによ、何かの前触れ?」
……たしかに今日は風が強くて吹雪いている珍しい天気だ。
そうそう夏に吹雪など見られない。
「そうかもしれませんね。」
「え!あ、南野くん!」
「すみません、驚かせてしまいましたか?」
声を返すと吃驚したのか肩が跳ねた。
少しおかしくて微笑みを返すと恥ずかしいのかはにかんだ。
警戒していたころより明らかに感じられる藍田さんの妖気が揺れていて動揺しているのがよくわかる。
「どうしたの?なにか用事でもあった?」
聞きたいのはこちらの方だ。
どうして急に隠すのをやめたんだ、と。
顔を顰め黙ったオレを不思議そうに見ている藍田さんに気づき声を出した。
「消しゴム、落ちましたよ。」
「あ、ありがとう。気づかなかったよ。」
「いえ、どういたしまして。」
消しゴムを渡すと少し笑ってお礼を言われた。
ひとまず戻るか……。
近づいたものの直球に聞くわけにもいかない。
藍田さんから離れると、人気のない場所で考える。
そろそろ計画を実行する話が出ているのにここで彼女がなにかを起こして計画が失敗するのは避けたい。
オレは何がなんでもあの鏡を手に入れなければならないのだから。
霊力の強い奴がいるだけなら霊界だって警戒はしないだろう。
ただ、妖力の強い奴は話が違ってくる。
強い妖怪が人間界にいると知れば霊界だって警戒するはずだ。
そうすれば警戒している分、乗り込んで鏡を盗むのも容易ではなくなるだろう。
元盗賊の名にかけて失敗をするつもりは無いがリスクは低い方がいいに決まっている。
万が一、という事もある。
クラスメイトと授業の話をしている時ふと視線を感じた。
藍田さんだ。
彼女は妖気をこちらに向けじっと見ていた。
藍田さんにオレがただの人間じゃない事がバレているのは薄々勘づいてはいたが。
……まさか、やる気か?
敵ならば容赦はしない。
ただこの場所はまずい。
睨むように見つめ返すと藍田さんは何かを考える素振りをしてからハッと目を見開いた。
張り詰めた空気が二人の間に流れる。
そして十秒ほどの沈黙の後、確かに言ったのだ。
蔵馬なの?と。
まるであの夜の事はすべて夢だったかのような。
そんな気さえおこるほどに何もない。
何も無いならそれでいい。
オレだって人間と共存している中の1人だ。
この1週間観察していて分かったのは意外と彼女はぼーっとすることが多く、優しい心の持ち主だということ。
自分が人とは違うとわかっているからなのか人間とかかわるのは最小限にとどめているが、困った人を見ると放っておけないようだ。
最近は違うクラスの女生徒の一人とよく話しているのを見かける。
話しているといっても一方的に話しかけられて困っているようだけれど。
そろそろ観察をやめても問題はないだろう。
彼女の性格を見る限り共存を望んでいると思うから。
もちろんまだはじめて一週間だし多少の警戒は必要だろうが……。
あれだけお人好しで他者を切り捨てられないところを見ると何か企んで遂行する機会をうかがっているようには思えないしできるとも思えない。
頭の片隅に置いておく程度でよさそうだな。
それから特に目立ったこともなく普通の平和な日々を過ごし、春が終わり夏のピークが過ぎた頃に彼女に変化が起きた。
彼女から妖気が溢れ出るようになったのだ。
一体どういうことだ?
共存を望んでいたと思ったのは勘違いだったのか?
今までたまに感じていた微かな妖気とは違う。
力を使った時ほどではないが警戒するに値する確かな妖気。
彼女……。
藍田さんは意図してやっているのか?
それとも気づいていないのか。
そんな事を考えていると彼女の消しゴムが落ちた。
彼女は気づいていないようで、ポツリと独り言を呟いた。
「台風で吹雪って……吹雪ってなによ、何かの前触れ?」
……たしかに今日は風が強くて吹雪いている珍しい天気だ。
そうそう夏に吹雪など見られない。
「そうかもしれませんね。」
「え!あ、南野くん!」
「すみません、驚かせてしまいましたか?」
声を返すと吃驚したのか肩が跳ねた。
少しおかしくて微笑みを返すと恥ずかしいのかはにかんだ。
警戒していたころより明らかに感じられる藍田さんの妖気が揺れていて動揺しているのがよくわかる。
「どうしたの?なにか用事でもあった?」
聞きたいのはこちらの方だ。
どうして急に隠すのをやめたんだ、と。
顔を顰め黙ったオレを不思議そうに見ている藍田さんに気づき声を出した。
「消しゴム、落ちましたよ。」
「あ、ありがとう。気づかなかったよ。」
「いえ、どういたしまして。」
消しゴムを渡すと少し笑ってお礼を言われた。
ひとまず戻るか……。
近づいたものの直球に聞くわけにもいかない。
藍田さんから離れると、人気のない場所で考える。
そろそろ計画を実行する話が出ているのにここで彼女がなにかを起こして計画が失敗するのは避けたい。
オレは何がなんでもあの鏡を手に入れなければならないのだから。
霊力の強い奴がいるだけなら霊界だって警戒はしないだろう。
ただ、妖力の強い奴は話が違ってくる。
強い妖怪が人間界にいると知れば霊界だって警戒するはずだ。
そうすれば警戒している分、乗り込んで鏡を盗むのも容易ではなくなるだろう。
元盗賊の名にかけて失敗をするつもりは無いがリスクは低い方がいいに決まっている。
万が一、という事もある。
クラスメイトと授業の話をしている時ふと視線を感じた。
藍田さんだ。
彼女は妖気をこちらに向けじっと見ていた。
藍田さんにオレがただの人間じゃない事がバレているのは薄々勘づいてはいたが。
……まさか、やる気か?
敵ならば容赦はしない。
ただこの場所はまずい。
睨むように見つめ返すと藍田さんは何かを考える素振りをしてからハッと目を見開いた。
張り詰めた空気が二人の間に流れる。
そして十秒ほどの沈黙の後、確かに言ったのだ。
蔵馬なの?と。