シロタエギク
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あれから特に何事もなくそろそろ夏休みに入ろうとしている。
いや、何事もないってのは噓かも。
密かにテニス部のファンになって早一ヵ月。
他の組の2年生や強い1年生の顔と名前が憶えられてきた。
最近幸村くんの表情が硬い時がある。
朝や帰り際、たまにテニス部を見に行くと幸村くんの動きに違和感を感じるときがあった。
決まってそのあとは確かめるように硬い表情でストレッチをしている。
今日だって険しい顔で素振り練習していた。
一体どうしたんだろう。
「藍田さん。」
「えっ?あ、幸村くん。」
「ふふ、どうしたの?そんなに眉間にしわ寄せて。悩み事?」
校庭の方を眺めていたらまさか考え事の本人が話しかけてくるとは思わず声が一瞬裏返った。
ど、どうしよう?
聞いてもいいものかな。
いやでもなんかストーカーみたいで気味が悪いよね。
「言えないことならいいんだ。そんなに考えなくても。ごめんね?最近何か考え事してるみたいだったから力になれる事かなって思って。」
「え、わかりやすかった?気にしてくれてありがとう。」
気にしてくれたことが少しうれしくてお礼を言うと優しい顔で笑い返してくれた。
「ううん、花の事で話しかけようかなって思っていたんだけれど最近考え事してるみたいだったからどうしたのかなって。」
「あ、幸村くんお花興味あったんだね。そうだなぁよかったらお昼休みとか時間貰えないかな。少し話したいことがあるんだ。」
「いいよ、明日とかどうかな?今日は委員会の仕事があるから。」
「うん、大丈夫。」
「じゃぁ、そういうことで。楽しみにしているね。」
「う、うん。私も。」
にっこりそういうと移動教室の荷物を持って教室を出て行った。
……なんか約束しちゃった。
楽しみにするくらいお花好きなのかな。
クラスメイトとハーブの話してるのは見たことあるんだけど。
でもいい機会だしちょっとテニスの事とかお話しようかな。
体の事は様子見ながらにしよう。
流石に嫌われたくはないし。
授業もすべて終わり花壇へ向かう。
様子を見た感じ今日の手入れも水をやるだけで終わりだからテニス部のぞきに行ってみようかな。
7月も半ばでそこそこ気温が上がってきてる。
じりじりと照り付ける太陽が恨めしい。
一番近いコートでは黒い帽子をかぶった真田くんが柳くんと試合形式でテニスしていた。
この二人って幸村くんに負けず劣らず強いよなぁ。
この間新しく入ってきた……えっと、一年の切原くんと真田くんが試合していたけど全く歯が立たなかったみたいだし。
切原くん、キャンキャン吠えてる子犬みたいでちょっとかわいかったけど真田くんが一喝して黙らされてたんだよね。
「ふふ、なんか思い出しちゃった。」
「何か面白いことでもあった?」
「え!?あ、幸村くん!」
「ふふ、また驚かしちゃったね?あそこにいるのは……真田と柳だね。最近よく来るみたいだけどどちらかのファンだったりするの?」
「へ!?知ってたの?あー、いや誰かのファンっていうか……この立海テニス部のファン、かな?」
「へぇ?……まだ時間あるかな?次、俺もそこでやるんだよね。ちょっと見て行ってよ。」
一瞬考えるそぶりをしてからそう言って幸村くんはコートへ歩いて行った。
さっきまでテニスボールを打つ音がしていたのにいつの間にか終わっていたみたいだ。
出てきた2人と少し話した後、柳くんは私の方を見てふっと笑って真田くんとメインコートの方へ行った。
なんだか笑われてしまった。
もしかして私がちょろちょろしてるの結構な人にばれてる……?
コートに入った幸村くんはやっぱり別人みたいに見える。
それだけテニスに妥協はないんだろうな。
試合開始のコールからゲームセットまできれいなテニスに目を奪われた。
けして派手なわけじゃないのにとても見入ってしまうテニス。
荷物を片付けながら小さく手を振る彼に私も振りかえした。
試合をした相手に話しかけられるとそのままにこやかに話しながらメインコートへ歩いて行った。
立海テニス部のファンだけれどやっぱり幸村くんがファンサもあるからか頭一つ抜けてるかも。
そう思いながら太陽に照らされて熱くなった顔を手で冷ましながら帰路についた。