薔薇本数シリーズ
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今日は高校の入学式。
心地よい暖かな風が頬を撫でる。
道端にはたんぽぽが咲き春の訪れを感じさせた。
唐紅色の真新しい制服に袖を通し、期待に胸弾ませる。
新しい生活が始まる。
友達出来るといいけどなあ。
中学の同級生で同じ高校に入った子はいない。
まぁ、県外だしね……。
実家から新幹線で2時間ほど。
よく女の一人暮らしを許してくれたなとは思う。
桜の花びらがひらひらと舞い落ちる。
同じ日本なのに地元と違ってこっちは満開。
何だか異国に来ているようだ。
ゆっくり歩いて正門につくと、上級生が胸に薔薇のコサージュを付けてくれた。
「ありがとうございます。」
声がかぶって隣を見ると、綺麗な紅が横切った。
「キレイな髪……。」
光に反射してキラキラと紅い髪が輝いて見える。
無意識に声に出ていたようでその人は振り返った。
顔を見ると女性と間違えそうなほど綺麗な人だった。
「あなたも新入生のようですね。」
「あ、うん。初めまして、藍田凛、よろしくね。」
「南野秀一です。よろしく、藍田さん。」
ニッコリと笑った南野くんをみて頬に熱が集まるのを感じた。
ああ、この人は人気になるだろうとそう思った。
空を見上げると綺麗な青空が見える。
柔らかな日差しにも頬が緩む。
天気が良くて本当によかった。
玄関口にある掲示板を見て自分のクラスを確認する。
近くの女の子は南野くんをチラチラ見てざわついている。
うーん、青春だなぁ。
どこか他人事のようにその光景を眺めていた。
同い年なんだけどね……。
横にいる南野くんの横顔を見て綺麗だなあと改めて認識する。
「どうかしましたか?」
「あ、ううん、クラスわかった?」
「ええ、同じでしたね。」
「ほんと?ごめん、そこは確認してなかった。」
苦笑をして返すと、南野くんはクスクスと笑った。
教室に入る前に席を確認。
中へはいるとお互いの席に着いた。
南野くんはあっという間に女子に囲まれていた。
観察してみると、にこやかに対応していた。
ちょっと作り笑いっぽいけど。
先生が来るまで南野くんに話しかけるわけでもなく、話しかけてくれたクラスメイトと話をした。
しばらくすると先生が入ってきて担任の挨拶や入学式の説明が始まった。
それから体育館へ案内され、入学式が始まる。
特にトラブルもなく順調にすすんでいく。
申し訳ないが聞いているようで聞いてなかった私の頭にはあまり内容が入ってこなかった。
「新入生挨拶。代表、南野秀一くん。」
聞き覚えのある名前にハッとする。
なんとまあ……頭もいいのか……。
ここの新入生挨拶は成績トップがする事になっているはずだ。
返事をすると完璧な所作で教壇に立ち、男の人にしては少し高いハスキーな声で話し始めた。
紙なしとは……暗記も完璧なのか。
挨拶も問題なく終わり、式は順調に終わりを迎えた。
教室に戻り、ロングホームルームを終えて教科書販売や諸々を完了させる。
帰宅しようとカバンに手を伸ばすと南野くんに話しかけられた。
「藍田さん。」
「ん、なに?」
「途中まで一緒に帰りませんか?」
「もちろん!帰ろうか。」
教室内がざわめいて、少しこの選択はミスったかなと冷や汗がでる。
しかし、せっかく南野くんが誘ってくれているのに断るのは勿体ない。
最初で最後の可能性は大いにある。
今日見てて感じたのは、にこやかに話しているけれどどこかそれ以上は踏み込ませないっていう態度?
なんだろう、あまり深入りしないように注意しているような。
そんな感じ?
誰に対してもそうなのかはちょっとまだ分からないけれど。
そんな事を考えつつも学校を出る。
歩くスピードは合わせてくれているのか私が無理をすることは無い。
少し話をすると、お互いに家が近かったようで歩きながら道が分かれるまで話をした。
と言っても私が一方的に話したんだけど。
実家が東北の方で、まだ桜は咲いていないことや、鯉のぼりが桜と一緒に見られる事。
こちらにきてひとり暮らしをはじめた事も話した。
穏やかに聞いてくれる彼に好感度は増すばかりだ。
顔よし、頭よし、性格よし。
こりゃあモテるぞ。
T字道路で私は右、南野くんは左と分かれる時に南野くんはコサージュになっていた生花を器用に元に戻すと私の頭につけた。
「似合いますよ。では、また明日。」
きれいに微笑んで私とは逆の道を歩く彼を、真っ赤な顔のまましばらく見ていたのはしょうがないことだと思いたい。
"1本=ひとめぼれ"
麻弥ちゃんの事があったにもかかわらず、一目惚れして手元に置いておきたいと思っているといい。
という願望。
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