第5章 死の秘宝
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第1話 絡まる視線
ホグワーツは息を潜めていた。
あの夜の火も、あの朝の汽笛も、今はもう跡形もない。
校舎の隅々にまで沈黙が染み込み、響くのは古い時計の音と風のうなりだけ。
ダンブルドアの死から三ヶ月。
再開の気配はなく、教師たちと幽霊、そして絵画だけがこの場所を守っている。
生徒の笑い声が消えたホグワーツは、まるで息を忘れた生き物のようだった。
──けれど、その沈黙を破る足音があった。
額に汗を滲ませたスラグホーンだった。マクゴナガルが席を外す代わりに寄越されたのだ。
マクゴナガルは何をしに行ったのかをイリスは問うが、目を逸らすだけで答えないスラグホーン。
だがイリスは負けじと質問を繰り返しスラグホーンに圧をかける。
そしてようやく聞きだした言葉が
「死喰い人を連れたスネイプとミネルバが話している。」
だった。
その一言で、イリスの胸が強く跳ねた。
スネイプがこの城に……?。
その姿を思い浮かべただけで、呼吸が浅くなる。
会いたい。
声を聞きたい。
ただ、それだけの願いが心を占めた。
けれど同時に、彼が死喰い人を連れていると聞けば、
それが“任務”の一環であることも理解できた。
不用意に動けば、彼を危険に晒す。
それでも、せめて……顔だけでも。
「私、スネイプ先生に会いに行く。」
イリスが立ち上がると、スラグホーンが慌てて手を振った。
「会いに行くのか……!やめた方がいい、ここにいろとミネルバが……」
「話しかけません。ただ、見るだけです。それなら構わないでしょう?」
「だ、だが……」
「スラグホーン先生。あなたが見張りとしてついて来てくださればいいんです。
もしマクゴナガル先生に見つかっても、“安全のために同行した”と説明できます。」
イリスの声は静かだったが、有無を言わせぬ力があった。
保身を重んじるスラグホーンの性格をよく知っている。
彼は唇を結び、やがてため息をついて頷いた。
イリスはすぐに言葉を重ねる。
「私の姿、目立ちますから……先生のローブを貸してください。今だけでいいんです。」
スラグホーンが返事をするより早く、イリスはそのローブを掴んで肩に羽織った。
少し……いや、かなり大きく、裾が床を擦る。
だが、それがかえって好都合だった。
ふたりは足音を殺し、静まり返った廊下を進む。
石壁にぶつかる小さな響きさえ、心臓の鼓動よりも大きく聞こえた。
玄関ホールに近づくと、空気の密度が変わった。
低く響く声が風のように漂う。
甘く、冷たく、聞き慣れた……聞きたいと望んでいた声だった。
そして玄関ホールへ降りる階段に着いた時、イリスはスラグホーンのローブを頭から被り直し、静かに柱の影に身を潜めた。
物陰から覗いたその先に、黒いローブの背が見える。
マクゴナガルと対峙する姿。
その顔は凍りついたように冷静で、何もかもを切り捨てた者のようだった。
けれど、その冷たさが彼らしかった。
任務に生きる姿を見て、イリスは胸の奥で安堵した。
無事に闇の組織として動けている……と。
だが同時に、闇の中をひとりで戦っている。
その事実だけで涙が込み上げた。
声が交わされる。
内容は遠くて聞き取れないが、言葉の端に力が宿っている。
激しいやりとりだ。
だが、どんな言葉も、彼の声であれば心地よかった。
イリスは目を細め、ほんの少し身を乗り出した。
その瞬間、マクゴナガルが踵を返し、スネイプもゆっくりと背を向ける。
そして彼がふと、こちらを見た。
──目が合った。
光が一瞬交わっただけなのに、全身を貫くような衝撃が走る。
時間が止まり、空気が静止したような気がした。
その瞬間だけはイリスの世界に、彼しかいなかった。
1度絡み合った視線は残酷にもすぐに離れた。
スネイプは何事もなかったかのようにローブを翻し、死喰い人たちを引き連れて去っていく。
イリスは震える手で胸を押さえた。
ただ顔を見て、声を聞いて、目を合わせただけ。
それだけで、心の奥に灯りがともる。
けれど、どうして彼はここへ――?
そんな疑問が浮かんだその時。
背後から静かな声が響いた。
「イリス、何をしているのです?」
マクゴナガルの声だった。
振り返ると、その瞳が真っすぐにイリスを見つめている。
言い訳も、隠す言葉も出てこなかった。
去っていったローブの黒が、まだ瞼の裏に残っている。
もう届かない距離それでも、確かに彼はいた。
それがわかっただけでも胸の奥で熱く確かな鼓動が続いていた。
ホグワーツは息を潜めていた。
あの夜の火も、あの朝の汽笛も、今はもう跡形もない。
校舎の隅々にまで沈黙が染み込み、響くのは古い時計の音と風のうなりだけ。
ダンブルドアの死から三ヶ月。
再開の気配はなく、教師たちと幽霊、そして絵画だけがこの場所を守っている。
生徒の笑い声が消えたホグワーツは、まるで息を忘れた生き物のようだった。
──けれど、その沈黙を破る足音があった。
額に汗を滲ませたスラグホーンだった。マクゴナガルが席を外す代わりに寄越されたのだ。
マクゴナガルは何をしに行ったのかをイリスは問うが、目を逸らすだけで答えないスラグホーン。
だがイリスは負けじと質問を繰り返しスラグホーンに圧をかける。
そしてようやく聞きだした言葉が
「死喰い人を連れたスネイプとミネルバが話している。」
だった。
その一言で、イリスの胸が強く跳ねた。
スネイプがこの城に……?。
その姿を思い浮かべただけで、呼吸が浅くなる。
会いたい。
声を聞きたい。
ただ、それだけの願いが心を占めた。
けれど同時に、彼が死喰い人を連れていると聞けば、
それが“任務”の一環であることも理解できた。
不用意に動けば、彼を危険に晒す。
それでも、せめて……顔だけでも。
「私、スネイプ先生に会いに行く。」
イリスが立ち上がると、スラグホーンが慌てて手を振った。
「会いに行くのか……!やめた方がいい、ここにいろとミネルバが……」
「話しかけません。ただ、見るだけです。それなら構わないでしょう?」
「だ、だが……」
「スラグホーン先生。あなたが見張りとしてついて来てくださればいいんです。
もしマクゴナガル先生に見つかっても、“安全のために同行した”と説明できます。」
イリスの声は静かだったが、有無を言わせぬ力があった。
保身を重んじるスラグホーンの性格をよく知っている。
彼は唇を結び、やがてため息をついて頷いた。
イリスはすぐに言葉を重ねる。
「私の姿、目立ちますから……先生のローブを貸してください。今だけでいいんです。」
スラグホーンが返事をするより早く、イリスはそのローブを掴んで肩に羽織った。
少し……いや、かなり大きく、裾が床を擦る。
だが、それがかえって好都合だった。
ふたりは足音を殺し、静まり返った廊下を進む。
石壁にぶつかる小さな響きさえ、心臓の鼓動よりも大きく聞こえた。
玄関ホールに近づくと、空気の密度が変わった。
低く響く声が風のように漂う。
甘く、冷たく、聞き慣れた……聞きたいと望んでいた声だった。
そして玄関ホールへ降りる階段に着いた時、イリスはスラグホーンのローブを頭から被り直し、静かに柱の影に身を潜めた。
物陰から覗いたその先に、黒いローブの背が見える。
マクゴナガルと対峙する姿。
その顔は凍りついたように冷静で、何もかもを切り捨てた者のようだった。
けれど、その冷たさが彼らしかった。
任務に生きる姿を見て、イリスは胸の奥で安堵した。
無事に闇の組織として動けている……と。
だが同時に、闇の中をひとりで戦っている。
その事実だけで涙が込み上げた。
声が交わされる。
内容は遠くて聞き取れないが、言葉の端に力が宿っている。
激しいやりとりだ。
だが、どんな言葉も、彼の声であれば心地よかった。
イリスは目を細め、ほんの少し身を乗り出した。
その瞬間、マクゴナガルが踵を返し、スネイプもゆっくりと背を向ける。
そして彼がふと、こちらを見た。
──目が合った。
光が一瞬交わっただけなのに、全身を貫くような衝撃が走る。
時間が止まり、空気が静止したような気がした。
その瞬間だけはイリスの世界に、彼しかいなかった。
1度絡み合った視線は残酷にもすぐに離れた。
スネイプは何事もなかったかのようにローブを翻し、死喰い人たちを引き連れて去っていく。
イリスは震える手で胸を押さえた。
ただ顔を見て、声を聞いて、目を合わせただけ。
それだけで、心の奥に灯りがともる。
けれど、どうして彼はここへ――?
そんな疑問が浮かんだその時。
背後から静かな声が響いた。
「イリス、何をしているのです?」
マクゴナガルの声だった。
振り返ると、その瞳が真っすぐにイリスを見つめている。
言い訳も、隠す言葉も出てこなかった。
去っていったローブの黒が、まだ瞼の裏に残っている。
もう届かない距離それでも、確かに彼はいた。
それがわかっただけでも胸の奥で熱く確かな鼓動が続いていた。
