第4章 謎のプリンス
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第22話 別れと再開
朝の空気はひんやりとしていた。
ホグワーツが一時閉校になるという知らせが伝わり、生徒たちは荷物をまとめて帰る準備をしていた。
大広間には声があふれているのに、どこか静かで重い空気が流れていた。
イリスは玄関ホールに立ち、ハリー、ロン、ハーマイオニーの三人を見送っていた。
蒸気がゆっくりと立ち上り、遠くで汽笛が鳴る。
旅立ちの時が近い。
「本当に行ってしまうのね。」
イリスは寂しそうに言う。
ハーマイオニーが少し微笑みながらも、目の奥に光るものを隠しきれなかった。
「ええ。でも、行かなきゃ。やらなきゃいけないことがあるの。」
「分霊箱を探しに行くんだ。」
ハリーの声は低く、迷いのない響きを帯びていた。
ロンは肩に荷物を担ぎ、重たそうに息を吐いた。
「……正直、怖ぇけどな。でも、俺たちが行かなきゃ、誰がやるんだって話だ。」
イリスは小さく頷いた。
それ以上、何も言えなかった。
ハーマイオニーが一歩近づき、イリスの手をそっと握る。
「イリス、ひとつだけ覚えておいて。
“闇の帝王”の名前は呼んじゃだめ。今は禁句になってるの。
呼んだ瞬間、死喰い人が追跡してくるのよ。」
「わかったわ。忘れない。」
「お願いね。あなたが無事でいること、それが一番大事だから。」
ハーマイオニーの声は震えていた。
イリスは微笑んで、その手をぎゅっと握り返した。
「ありがとう。あなたたちも気をつけて。どうか無事で。」
ハリーが一歩前に出て、少し迷いながら口を開いた。
「……やっぱり、イリスも一緒に来た方がいいんじゃないか?
ホグワーツに残るより、俺たちといた方が安全かもしれない。」
イリスは静かに首を横に振った。
「私はここに残る。ここにいる方が安全なの。
外に出れば、すぐに闇の帝王が動くわ。
私を狙ってくるのを、あの人も……分かっているはずだから。」
ハリーは短く息をつき、ほんの少し笑った。
「……君らしいな。自分より他人のことを考える。」
「そんなことないわ。ただ、もう誰も失いたくないだけ。」
ロンが照れ隠しのように笑いながらイリスの肩を叩く。
「きっとまた会えるよ。俺たちが全部終わらせて、でっけぇ声で報告に来るからな。」
「うん、信じてる。みんななら、できる。」
汽笛が鳴り響き、白い蒸気が一気に広がる。
ハリーがイリスの手を取った。
「イリス。必ず生き延びて!君が信じる光を、僕たちも見つけてくるから。」
「ええ。待ってるわ。」
列車が動き出し、三人の姿が少しずつ遠ざかっていく。
ロンが振り返りながら手を振り、ハーマイオニーが涙を拭い、ハリーが最後まで目を逸らさずにイリスを見ていた。
蒸気が風に溶け、ホームの静けさが戻る。
イリスはしばらく立ち尽くしたまま、ゆっくりと小さく呟いた。
「いってらっしゃい……。また、きっと会えるわよね。」
その声は列車の汽笛にかき消され、静かな校舎に溶けていった。
長期休暇になると1人残されるのは慣れていたはずだった。いつもと何ら変わりないはずの校舎。
それが今はいつもより静かで、なんだか寂しく感じた。
───
その後の日々は、静かに流れていった。
生徒のいないホグワーツは、まるで息を潜めているようだった。
マクゴナガルやスラグホーンをはじめ、残った教師たちはイリスを気にかけてくれた。
紅茶を飲みながら雑談したり、
薬草の手入れをしたり、
倉庫整理を手伝ったり、
時にはチェスをして……。
穏やかで、どこか温かい時間だった。
だが、どんなに人と過しても胸の奥の空洞は埋まらなかった。
窓辺に立ち、外を見つめるたびに思う。
“あの人”がいないだけで、世界はこんなにも静かになるのだと。
そして一ヶ月、二ヶ月と過ぎた。
表向きには平穏を取り戻している。
だが、ダンブルドアの力を失った不安、
ヴォルデモートが来てしまう恐怖、
スネイプのいない寂しさ、
これらは感情を揺るがすほどではないが、形を変えてずっと心に残り続けていた。
そして、三ヶ月目のとある午後。
重たい雲が垂れ込めた日だった。
イリスは図書室で古い本を閉じ、静かな息をついた。
ふと、窓の外を見たとき――黒い影がよぎった。
最初は鳥だと思った。
だが、その影は滑るように動き、空気が急に冷たくなる。
吐く息が白くなり、ページがひとりでに震えた。
「……冷たい。」
胸がざわつき、イリスは立ち上がる。
そして近くの机で本を読んでいたマクゴナガルに声をかけた。
「先生……。外に、黒い影が……」
マクゴナガルが顔を上げ、目を細めた。
外を一瞥しただけで、その表情が固まる。
「ここにいなさい。私が見てきます。
スラグホーンをここに呼びますから。」
「……はい。」
マクゴナガルはすぐに杖を取って立ち上がり、足早に部屋を出ていった。
その背が角を曲がる音が遠ざかると、図書室に静寂が戻る。
時計の音と、風の唸りだけが耳に残った。
どれほど時間が経っただろうか。
やがて、足音が戻ってくる。
そして扉を開けて入ってきたのはスラグホーンだった。
急いで走ってきたのだろうか?とても汗ばんでいる。
しかし、様子が変だ。
頬を引きつらせ、手に持つカップが小刻みに震えている。
「先生……?マクゴナガル先生はどうしているのでしょうか……?」
イリスが問いかけると、スラグホーンは視線を逸らした。
その挙動に、イリスの胸がざわめく。
「……先生、何かあったんですか。」
沈黙が落ちた。
スラグホーンは唇を噛み、重い声で答えた。
「……死喰い人を連れたスネイプとミネルバが話している。」
胸の奥がざわめいた。
彼が、ここに来ている。
それだけで空気が変わった気がした。
どんなに闇に包まれていても、あの人は動いている。
この瞬間も、すべてを背負って……。
会いたい。
ただ一目でいい、顔を見たい。
けれど今、彼の前に出ることはできない。
その行動ひとつで、彼の立場を壊してしまうかもしれないから。
イリスは唇を噛み、窓の外を見つめた。
曇り空の向こう、見えない場所にいる彼の姿を思い描く。
「……セブルス。」
その囁きは、祈りのように静かで、
誰の耳にも届かぬまま、深い静寂の中へと消えていった。
朝の空気はひんやりとしていた。
ホグワーツが一時閉校になるという知らせが伝わり、生徒たちは荷物をまとめて帰る準備をしていた。
大広間には声があふれているのに、どこか静かで重い空気が流れていた。
イリスは玄関ホールに立ち、ハリー、ロン、ハーマイオニーの三人を見送っていた。
蒸気がゆっくりと立ち上り、遠くで汽笛が鳴る。
旅立ちの時が近い。
「本当に行ってしまうのね。」
イリスは寂しそうに言う。
ハーマイオニーが少し微笑みながらも、目の奥に光るものを隠しきれなかった。
「ええ。でも、行かなきゃ。やらなきゃいけないことがあるの。」
「分霊箱を探しに行くんだ。」
ハリーの声は低く、迷いのない響きを帯びていた。
ロンは肩に荷物を担ぎ、重たそうに息を吐いた。
「……正直、怖ぇけどな。でも、俺たちが行かなきゃ、誰がやるんだって話だ。」
イリスは小さく頷いた。
それ以上、何も言えなかった。
ハーマイオニーが一歩近づき、イリスの手をそっと握る。
「イリス、ひとつだけ覚えておいて。
“闇の帝王”の名前は呼んじゃだめ。今は禁句になってるの。
呼んだ瞬間、死喰い人が追跡してくるのよ。」
「わかったわ。忘れない。」
「お願いね。あなたが無事でいること、それが一番大事だから。」
ハーマイオニーの声は震えていた。
イリスは微笑んで、その手をぎゅっと握り返した。
「ありがとう。あなたたちも気をつけて。どうか無事で。」
ハリーが一歩前に出て、少し迷いながら口を開いた。
「……やっぱり、イリスも一緒に来た方がいいんじゃないか?
ホグワーツに残るより、俺たちといた方が安全かもしれない。」
イリスは静かに首を横に振った。
「私はここに残る。ここにいる方が安全なの。
外に出れば、すぐに闇の帝王が動くわ。
私を狙ってくるのを、あの人も……分かっているはずだから。」
ハリーは短く息をつき、ほんの少し笑った。
「……君らしいな。自分より他人のことを考える。」
「そんなことないわ。ただ、もう誰も失いたくないだけ。」
ロンが照れ隠しのように笑いながらイリスの肩を叩く。
「きっとまた会えるよ。俺たちが全部終わらせて、でっけぇ声で報告に来るからな。」
「うん、信じてる。みんななら、できる。」
汽笛が鳴り響き、白い蒸気が一気に広がる。
ハリーがイリスの手を取った。
「イリス。必ず生き延びて!君が信じる光を、僕たちも見つけてくるから。」
「ええ。待ってるわ。」
列車が動き出し、三人の姿が少しずつ遠ざかっていく。
ロンが振り返りながら手を振り、ハーマイオニーが涙を拭い、ハリーが最後まで目を逸らさずにイリスを見ていた。
蒸気が風に溶け、ホームの静けさが戻る。
イリスはしばらく立ち尽くしたまま、ゆっくりと小さく呟いた。
「いってらっしゃい……。また、きっと会えるわよね。」
その声は列車の汽笛にかき消され、静かな校舎に溶けていった。
長期休暇になると1人残されるのは慣れていたはずだった。いつもと何ら変わりないはずの校舎。
それが今はいつもより静かで、なんだか寂しく感じた。
───
その後の日々は、静かに流れていった。
生徒のいないホグワーツは、まるで息を潜めているようだった。
マクゴナガルやスラグホーンをはじめ、残った教師たちはイリスを気にかけてくれた。
紅茶を飲みながら雑談したり、
薬草の手入れをしたり、
倉庫整理を手伝ったり、
時にはチェスをして……。
穏やかで、どこか温かい時間だった。
だが、どんなに人と過しても胸の奥の空洞は埋まらなかった。
窓辺に立ち、外を見つめるたびに思う。
“あの人”がいないだけで、世界はこんなにも静かになるのだと。
そして一ヶ月、二ヶ月と過ぎた。
表向きには平穏を取り戻している。
だが、ダンブルドアの力を失った不安、
ヴォルデモートが来てしまう恐怖、
スネイプのいない寂しさ、
これらは感情を揺るがすほどではないが、形を変えてずっと心に残り続けていた。
そして、三ヶ月目のとある午後。
重たい雲が垂れ込めた日だった。
イリスは図書室で古い本を閉じ、静かな息をついた。
ふと、窓の外を見たとき――黒い影がよぎった。
最初は鳥だと思った。
だが、その影は滑るように動き、空気が急に冷たくなる。
吐く息が白くなり、ページがひとりでに震えた。
「……冷たい。」
胸がざわつき、イリスは立ち上がる。
そして近くの机で本を読んでいたマクゴナガルに声をかけた。
「先生……。外に、黒い影が……」
マクゴナガルが顔を上げ、目を細めた。
外を一瞥しただけで、その表情が固まる。
「ここにいなさい。私が見てきます。
スラグホーンをここに呼びますから。」
「……はい。」
マクゴナガルはすぐに杖を取って立ち上がり、足早に部屋を出ていった。
その背が角を曲がる音が遠ざかると、図書室に静寂が戻る。
時計の音と、風の唸りだけが耳に残った。
どれほど時間が経っただろうか。
やがて、足音が戻ってくる。
そして扉を開けて入ってきたのはスラグホーンだった。
急いで走ってきたのだろうか?とても汗ばんでいる。
しかし、様子が変だ。
頬を引きつらせ、手に持つカップが小刻みに震えている。
「先生……?マクゴナガル先生はどうしているのでしょうか……?」
イリスが問いかけると、スラグホーンは視線を逸らした。
その挙動に、イリスの胸がざわめく。
「……先生、何かあったんですか。」
沈黙が落ちた。
スラグホーンは唇を噛み、重い声で答えた。
「……死喰い人を連れたスネイプとミネルバが話している。」
胸の奥がざわめいた。
彼が、ここに来ている。
それだけで空気が変わった気がした。
どんなに闇に包まれていても、あの人は動いている。
この瞬間も、すべてを背負って……。
会いたい。
ただ一目でいい、顔を見たい。
けれど今、彼の前に出ることはできない。
その行動ひとつで、彼の立場を壊してしまうかもしれないから。
イリスは唇を噛み、窓の外を見つめた。
曇り空の向こう、見えない場所にいる彼の姿を思い描く。
「……セブルス。」
その囁きは、祈りのように静かで、
誰の耳にも届かぬまま、深い静寂の中へと消えていった。
