第4章 謎のプリンス
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第19話 星の降る中庭
風が弱まり、炎の音だけが遠くでぱちぱちと鳴っていた。
イリスは土の上に座り込んだまま、しばらく動けなかった。
足裏は血で濡れ、ガラス片と砕けた石が食い込んでいたり完全に裂けている部分もある。
息を吸うたび胸がきしむように痛んだが、それでも心の奥にはひとつの思いだけが残っていた。
行かなければならない。
ダンブルドアのもとへ。
全てを見届けるために。
立ち上がろうとして、膝が崩れる。
視界が揺れ、冷たい夜気が頬を撫でたそのとき、背後から白い光が揺れた。
ルーモスの灯りが近づき、イリスの影が地面に長く落ちる。
言葉もなく、ハリーがしゃがみ込む。
彼はイリスの足元に視線を落とし、自分のローブの裾を手で裂いた。
布を丁寧に巻き付ける指先は震えているのに、動きは不器用さを見せなかった。
血で濡れた皮膚に布が触れるたび、小さな鋭い痛みが走る。
それでも、イリスは一言も発さず、その手元を見つめていた。
「立てる?」
ハリーの声はひどく掠れていた。
イリスは小さく頷いた。
彼の肩に手を置き、ゆっくりと体重を預ける。
夜の校庭は静かで、遠くの林が黒い塊のように横たわっている。
ふたりはゆっくりと歩き出した。
足元で砕けた灯りが細かく鳴り、薄い月光が瓦礫の輪郭をぼんやりと浮かび上がらせる。
玄関ホールへ戻ると、人影が増えていた。
ルーピンが言葉を失い、スラグホーンが胸を押さえ、フリットウィックが静かに祈るように立っている。
マクゴナガルは顔を上げたまま、涙さえ零さず、ただ前だけを見ていた。
皆が無言のまま天文台の下へ向かっていく。
イリスとハリーも、そこに続いた。
中庭に出ると、風のにおいが変わった。
石畳の広場に、ダンブルドアの遺体が横たえられている。
集まった生徒たちの間に、緊張と悲しみが波のように満ちては引いた。
誰もが声を失い、ただその姿を見つめている。
頭上には緑の印が漂い、夜空をゆっくりと汚していた。
最初に杖を掲げたのは、マクゴナガルだった。
強い灯りが空へ伸び、静かに揺れる。
それに続くように、教師たちが、そして生徒たちが次々と杖を上げる。
光は増え、広がり、温かさを帯びて夜の天蓋を照らした。
ハリーが隣で杖を掲げる。
イリスも遅れて杖を持ち上げた。
灯りは小さく、淡く、それでも確かにそこにあった。
震える手の先で、揺らめく灯がひとつ、またひとつと重なっていく。
中庭の空気が少しだけ明るくなり、緑の印がたじろぐように揺れた。
やがて、夜空に散った光が集まり、ゆっくりと印の黒を洗い落としていく。
暗いものが退き、星々が顔を出した。
イリスの頬を、温かい雫が伝う。
杖を掲げた腕は重く、胸の奥は静かに疼いている。
それでも、灯りは消えなかった。
彼の光は、いまもここにある。
「スネイプは……本当に裏切ったのかな」
ハリーが小さく呟いた。
イリスは夜空を見上げ、灯りの向こうに滲む星を見た。
「信じると決めてるの。
たとえ世界が否定しても、
たとえすべてが闇に傾いても」
きっとあの人の内にある光は消えない。
それだけは確かだと、胸の奥が静かに告げている。
静寂の中で、誰かの嗚咽が小さく漏れた。
マクゴナガルが杖を下ろし、皆もゆっくりと灯りを降ろしていく。
光は消えても、温度はその場に残った。
イリスは胸の前でそっと手を組み、目を閉じた。
祈りの言葉は音にならない。
それでも、夜は確かにそれを受け取っていた。
ハリーが肩を貸してくれたおかげで、イリスはもう一歩を踏み出せた。
歩みはまだ遅く、痛みは消えない。
けれど、彼女の足は進んでいく。
灯りが残した余熱の中を、静かに、確かに。
風が弱まり、炎の音だけが遠くでぱちぱちと鳴っていた。
イリスは土の上に座り込んだまま、しばらく動けなかった。
足裏は血で濡れ、ガラス片と砕けた石が食い込んでいたり完全に裂けている部分もある。
息を吸うたび胸がきしむように痛んだが、それでも心の奥にはひとつの思いだけが残っていた。
行かなければならない。
ダンブルドアのもとへ。
全てを見届けるために。
立ち上がろうとして、膝が崩れる。
視界が揺れ、冷たい夜気が頬を撫でたそのとき、背後から白い光が揺れた。
ルーモスの灯りが近づき、イリスの影が地面に長く落ちる。
言葉もなく、ハリーがしゃがみ込む。
彼はイリスの足元に視線を落とし、自分のローブの裾を手で裂いた。
布を丁寧に巻き付ける指先は震えているのに、動きは不器用さを見せなかった。
血で濡れた皮膚に布が触れるたび、小さな鋭い痛みが走る。
それでも、イリスは一言も発さず、その手元を見つめていた。
「立てる?」
ハリーの声はひどく掠れていた。
イリスは小さく頷いた。
彼の肩に手を置き、ゆっくりと体重を預ける。
夜の校庭は静かで、遠くの林が黒い塊のように横たわっている。
ふたりはゆっくりと歩き出した。
足元で砕けた灯りが細かく鳴り、薄い月光が瓦礫の輪郭をぼんやりと浮かび上がらせる。
玄関ホールへ戻ると、人影が増えていた。
ルーピンが言葉を失い、スラグホーンが胸を押さえ、フリットウィックが静かに祈るように立っている。
マクゴナガルは顔を上げたまま、涙さえ零さず、ただ前だけを見ていた。
皆が無言のまま天文台の下へ向かっていく。
イリスとハリーも、そこに続いた。
中庭に出ると、風のにおいが変わった。
石畳の広場に、ダンブルドアの遺体が横たえられている。
集まった生徒たちの間に、緊張と悲しみが波のように満ちては引いた。
誰もが声を失い、ただその姿を見つめている。
頭上には緑の印が漂い、夜空をゆっくりと汚していた。
最初に杖を掲げたのは、マクゴナガルだった。
強い灯りが空へ伸び、静かに揺れる。
それに続くように、教師たちが、そして生徒たちが次々と杖を上げる。
光は増え、広がり、温かさを帯びて夜の天蓋を照らした。
ハリーが隣で杖を掲げる。
イリスも遅れて杖を持ち上げた。
灯りは小さく、淡く、それでも確かにそこにあった。
震える手の先で、揺らめく灯がひとつ、またひとつと重なっていく。
中庭の空気が少しだけ明るくなり、緑の印がたじろぐように揺れた。
やがて、夜空に散った光が集まり、ゆっくりと印の黒を洗い落としていく。
暗いものが退き、星々が顔を出した。
イリスの頬を、温かい雫が伝う。
杖を掲げた腕は重く、胸の奥は静かに疼いている。
それでも、灯りは消えなかった。
彼の光は、いまもここにある。
「スネイプは……本当に裏切ったのかな」
ハリーが小さく呟いた。
イリスは夜空を見上げ、灯りの向こうに滲む星を見た。
「信じると決めてるの。
たとえ世界が否定しても、
たとえすべてが闇に傾いても」
きっとあの人の内にある光は消えない。
それだけは確かだと、胸の奥が静かに告げている。
静寂の中で、誰かの嗚咽が小さく漏れた。
マクゴナガルが杖を下ろし、皆もゆっくりと灯りを降ろしていく。
光は消えても、温度はその場に残った。
イリスは胸の前でそっと手を組み、目を閉じた。
祈りの言葉は音にならない。
それでも、夜は確かにそれを受け取っていた。
ハリーが肩を貸してくれたおかげで、イリスはもう一歩を踏み出せた。
歩みはまだ遅く、痛みは消えない。
けれど、彼女の足は進んでいく。
灯りが残した余熱の中を、静かに、確かに。
