第4章 謎のプリンス
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第17話 夜に裂ける声
廊下を駆け抜け、大広間を横切り、玄関ホールを飛び出す。
イリスの血が滲んだ素足が冷たい石を叩いた。
夜の風が頬を裂くように吹きつける。校庭の先には林が広がり、その向こうで炎が揺れていた。
燃え上がるハグリットの小屋。
その前に、影がいくつも蠢いていた。
イリスは息を切らせ、ハリーを追い続ける。距離はまだある。
風に混じって、ハリーの叫びが響いた。
「スネイプ!! 先生はお前を信じてたのに!!」
その声に、先を歩いていた死喰い人たちが立ち止まる。
スネイプは振り返り、鋭く声を放った。
「行け!」
その一言に、ドラコを含む死喰い人たちは一斉に動く。
ベラトリックスが嬉々として笑い、ハリーへ杖を向けたが、スネイプがそれを制した。
「よせ。それは闇の帝王のものだ。」
不満げに舌打ちして、ベラトリックスは闇の中へ姿を消す。
夜空の下に、スネイプとハリー、そして遠くから駆け寄るイリスだけが残された。
そしてハリーが杖を振り上げた。
「インカーセラス!」
光の帯が走るが、スネイプの周囲で弾かれて霧散する。
ハリーの瞳は怒りで燃えていた。
「クルーシ──!」
「やめろ、ポッター。」
スネイプの声は静かで、しかし鋼のように冷たい。
瞬間、ハリーは吹き飛ばされた。地面に叩きつけられても、すぐに立ち上がる。
「クルーシ──!」
再び杖を振りかざすが、またも阻まれる。
イリスは少し離れた場所で立ち止まり、肩を上下させながら2人を見守っていた。
彼らのぶつかり合いには、もはや誰も入り込めない。空気そのものが震えているようだった。
スネイプの黒いローブが風に揺れる。
その姿には怒りよりも、哀しみの影が見えた。
「ポッター、お前には許されざる呪文は使えん。そんな度胸はない。というより、能力が──」
「インカーセ──!」
ハリーが遮って再び杖を振る。
スネイプは煩わしげに腕を振り、呪文を阻害する。
「戦えよ!戦え!臆病者!!」
ハリーの怒鳴り声が闇を裂く。
スネイプの眉がわずかに動いた。
次の瞬間、低い声が返る。
「臆病者? それはお前の父親のことか。常に四対一でなければ我輩に挑めなかった、哀れな男のことかね。」
ハリーの顔に怒りが走る。
杖を振り上げようとした瞬間、スネイプは背を向けて歩き出した。
だがハリーは諦めず、再び呪文を放つ。
「レビ──!」
「やめろ……」
「セクタム──!」
「やめろ、ポッター!」
スネイプの怒声が夜に響いた。
その声と同時に白い閃光が走り、ハリーは地面に叩きつけられる。
「ポッター……お前には無理だ。その口を閉じ、心を閉ざす術を身につけない限り、永遠にな。」
痛みに呻くハリーの手から杖が転がり落ちる。スネイプは近づき、その杖を無言で蹴り飛ばした。
「我輩の作った呪文を、本人に向けるとはな。」
その言葉に、ハリーの目が大きく見開かれる。
イリスもまた息を呑んだ。
あの教科書の文字──。
やはり、あれはスネイプの筆跡だった。
スネイプは冷ややかに告げる。
「我輩こそ“半純血のプリンス”だ。」
そして、静かに息を整えたあと、低く続けた。
「我輩が発明したものを、汚らわしいお前の父親と同じように我輩に向けるのか。そんなことはさせん……断じて許さん。」
ハリーは再び立ち上がり、喉の奥から絞り出すように叫ぶ。
「それなら殺せ!
先生を殺したみたいに、僕も殺せよ!
この臆病──」
「我輩を……
臆病者と呼ぶな!!」
怒号が夜を震わせた。
スネイプの目が燃えるように光り、ハリーは再び吹き飛ばされて地に沈む。
イリスの喉がかすかに鳴る。
彼の声には怒りだけではない、深い悲しみが混じっていた。
スネイプがローブを翻して歩き出そうとした時、イリスの足が勝手に動いた。
走り寄り、その背にすがりつく。冷たい布の感触が指に痛いほど伝わる。
「やだ……いやだ……
行かないで……
置いていかないで……!」
声は掠れ、泣き声が途切れ途切れに漏れる。
何を言っているのか、自分でも分からない。
ただ、離れたら二度と戻れないという恐怖だけが胸を満たしていた。
イリスは泣き叫びながらスネイプの胸にすがりつく。
嗚咽がこみ上げ、息が詰まり、涙が頬を熱く濡らす。
彼の指が微かに動いた気がした。けれど彼は抱きしめ返さない。
イリスは顔を上げ、滲む視界の中で彼を見つめた。
この目に焼きつけるために……。
スネイプの表情には怒りも冷たさもなかった。
ただ、すべてを押し殺したような悲しみがあった。
「イリス……やめろ。」
「セブルス……嫌よ……!」
低く震えた声が落ちる。
イリスの肩に触れる手は、いつもよりも弱く、迷いに満ちていた。
「やめてくれ……頼む。」
そう言ってスネイプは力を込め、イリスを引き剥がす。
彼の袖を掴んで離すまいとした指先から、力が抜けていく。
「イリス。分かってくれ。」
その言葉に、イリスの涙が一瞬止まった。
嗚咽が静まり、彼の瞳の奥を見つめる。
そこに宿るのは確かな決意と、同じだけの痛み。
「……信じてる。信じてるの。でも……」
震えながらも、その声はもう泣き叫びではなかった。
涙をこぼしながらも、彼女の目には静かな光が戻っていた。
スネイプは首を横に振り、何かを言いかけて飲み込んだ。
イリスは震える手で彼の頬を包み、唇を重ねた。
それは哀しみと祈りのあいだにある、静かな口づけだった。

「セブルス……私、信じてるから……負けないで……」
声は涙に揺れながらも確かに響いた。
スネイプはその瞳を見つめ返し、ゆっくりと手を伸ばす。
指先がイリスの頬から首筋へと滑り、肌に短く触れた。
そして唇を寄せ、そっとその場所に印を残す。
それは「さよなら」の代わりに触れた、儚い約束だった。
次の瞬間、スネイプは一歩後ろに退き、闇へと身を翻した。
夜風がローブを揺らし、黒い影が遠ざかっていく。
イリスはその場に膝をつき、地面に突っ伏した。
肩は震え、胸の奥からは声にならない嗚咽が溢れ、涙が途切れることなく落ちていく。
涙は止まらず、土に染み込んでいった。
夜空にはまだ、緑の印が揺れていた。
その下で、イリスの泣き声だけが、誰にも届かぬ闇の中に消えていった。
廊下を駆け抜け、大広間を横切り、玄関ホールを飛び出す。
イリスの血が滲んだ素足が冷たい石を叩いた。
夜の風が頬を裂くように吹きつける。校庭の先には林が広がり、その向こうで炎が揺れていた。
燃え上がるハグリットの小屋。
その前に、影がいくつも蠢いていた。
イリスは息を切らせ、ハリーを追い続ける。距離はまだある。
風に混じって、ハリーの叫びが響いた。
「スネイプ!! 先生はお前を信じてたのに!!」
その声に、先を歩いていた死喰い人たちが立ち止まる。
スネイプは振り返り、鋭く声を放った。
「行け!」
その一言に、ドラコを含む死喰い人たちは一斉に動く。
ベラトリックスが嬉々として笑い、ハリーへ杖を向けたが、スネイプがそれを制した。
「よせ。それは闇の帝王のものだ。」
不満げに舌打ちして、ベラトリックスは闇の中へ姿を消す。
夜空の下に、スネイプとハリー、そして遠くから駆け寄るイリスだけが残された。
そしてハリーが杖を振り上げた。
「インカーセラス!」
光の帯が走るが、スネイプの周囲で弾かれて霧散する。
ハリーの瞳は怒りで燃えていた。
「クルーシ──!」
「やめろ、ポッター。」
スネイプの声は静かで、しかし鋼のように冷たい。
瞬間、ハリーは吹き飛ばされた。地面に叩きつけられても、すぐに立ち上がる。
「クルーシ──!」
再び杖を振りかざすが、またも阻まれる。
イリスは少し離れた場所で立ち止まり、肩を上下させながら2人を見守っていた。
彼らのぶつかり合いには、もはや誰も入り込めない。空気そのものが震えているようだった。
スネイプの黒いローブが風に揺れる。
その姿には怒りよりも、哀しみの影が見えた。
「ポッター、お前には許されざる呪文は使えん。そんな度胸はない。というより、能力が──」
「インカーセ──!」
ハリーが遮って再び杖を振る。
スネイプは煩わしげに腕を振り、呪文を阻害する。
「戦えよ!戦え!臆病者!!」
ハリーの怒鳴り声が闇を裂く。
スネイプの眉がわずかに動いた。
次の瞬間、低い声が返る。
「臆病者? それはお前の父親のことか。常に四対一でなければ我輩に挑めなかった、哀れな男のことかね。」
ハリーの顔に怒りが走る。
杖を振り上げようとした瞬間、スネイプは背を向けて歩き出した。
だがハリーは諦めず、再び呪文を放つ。
「レビ──!」
「やめろ……」
「セクタム──!」
「やめろ、ポッター!」
スネイプの怒声が夜に響いた。
その声と同時に白い閃光が走り、ハリーは地面に叩きつけられる。
「ポッター……お前には無理だ。その口を閉じ、心を閉ざす術を身につけない限り、永遠にな。」
痛みに呻くハリーの手から杖が転がり落ちる。スネイプは近づき、その杖を無言で蹴り飛ばした。
「我輩の作った呪文を、本人に向けるとはな。」
その言葉に、ハリーの目が大きく見開かれる。
イリスもまた息を呑んだ。
あの教科書の文字──。
やはり、あれはスネイプの筆跡だった。
スネイプは冷ややかに告げる。
「我輩こそ“半純血のプリンス”だ。」
そして、静かに息を整えたあと、低く続けた。
「我輩が発明したものを、汚らわしいお前の父親と同じように我輩に向けるのか。そんなことはさせん……断じて許さん。」
ハリーは再び立ち上がり、喉の奥から絞り出すように叫ぶ。
「それなら殺せ!
先生を殺したみたいに、僕も殺せよ!
この臆病──」
「我輩を……
臆病者と呼ぶな!!」
怒号が夜を震わせた。
スネイプの目が燃えるように光り、ハリーは再び吹き飛ばされて地に沈む。
イリスの喉がかすかに鳴る。
彼の声には怒りだけではない、深い悲しみが混じっていた。
スネイプがローブを翻して歩き出そうとした時、イリスの足が勝手に動いた。
走り寄り、その背にすがりつく。冷たい布の感触が指に痛いほど伝わる。
「やだ……いやだ……
行かないで……
置いていかないで……!」
声は掠れ、泣き声が途切れ途切れに漏れる。
何を言っているのか、自分でも分からない。
ただ、離れたら二度と戻れないという恐怖だけが胸を満たしていた。
イリスは泣き叫びながらスネイプの胸にすがりつく。
嗚咽がこみ上げ、息が詰まり、涙が頬を熱く濡らす。
彼の指が微かに動いた気がした。けれど彼は抱きしめ返さない。
イリスは顔を上げ、滲む視界の中で彼を見つめた。
この目に焼きつけるために……。
スネイプの表情には怒りも冷たさもなかった。
ただ、すべてを押し殺したような悲しみがあった。
「イリス……やめろ。」
「セブルス……嫌よ……!」
低く震えた声が落ちる。
イリスの肩に触れる手は、いつもよりも弱く、迷いに満ちていた。
「やめてくれ……頼む。」
そう言ってスネイプは力を込め、イリスを引き剥がす。
彼の袖を掴んで離すまいとした指先から、力が抜けていく。
「イリス。分かってくれ。」
その言葉に、イリスの涙が一瞬止まった。
嗚咽が静まり、彼の瞳の奥を見つめる。
そこに宿るのは確かな決意と、同じだけの痛み。
「……信じてる。信じてるの。でも……」
震えながらも、その声はもう泣き叫びではなかった。
涙をこぼしながらも、彼女の目には静かな光が戻っていた。
スネイプは首を横に振り、何かを言いかけて飲み込んだ。
イリスは震える手で彼の頬を包み、唇を重ねた。
それは哀しみと祈りのあいだにある、静かな口づけだった。

「セブルス……私、信じてるから……負けないで……」
声は涙に揺れながらも確かに響いた。
スネイプはその瞳を見つめ返し、ゆっくりと手を伸ばす。
指先がイリスの頬から首筋へと滑り、肌に短く触れた。
そして唇を寄せ、そっとその場所に印を残す。
それは「さよなら」の代わりに触れた、儚い約束だった。
次の瞬間、スネイプは一歩後ろに退き、闇へと身を翻した。
夜風がローブを揺らし、黒い影が遠ざかっていく。
イリスはその場に膝をつき、地面に突っ伏した。
肩は震え、胸の奥からは声にならない嗚咽が溢れ、涙が途切れることなく落ちていく。
涙は止まらず、土に染み込んでいった。
夜空にはまだ、緑の印が揺れていた。
その下で、イリスの泣き声だけが、誰にも届かぬ闇の中に消えていった。
