第4章 謎のプリンス
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第16話 ガラス片と痛む心
ベラトリックスの勝ち誇った笑い声が、夜のホグワーツに響き渡った。
天文台から降りる階段を、死喰い人たちは楽しげに駆け下りていく。
ハリーはしばらく立ち尽くしていたが、はっと我に返り、杖を握りしめて後を追った。
イリスもまた、何も考えられぬまま、その背を追いかけていた。
校舎の中は、戦いの痕跡で満ちていた。
砕けたガラス片が床を覆い、壁の装飾が崩れ落ちて散乱している。
裸足の足裏に鋭い破片が刺さる。けれど、その痛みを感じる余裕はなかった。
胸の奥が、もっと深く痛んでいた。
イリスの脳裏に、ほんの数分前の光景が蘇る。
ダンブルドアが天文台から落ちていく、その刹那。
周囲の死喰い人たちが落ちていく光景を見つめる中、イリスだけはスネイプを見つめていた。
彼の顔は、凍えるほどの悲しみに満ちていた。
その表情を裏切りの者が浮かべるはずがない。
あの時の会話が意味していたのは、まさにこのことだった。
ダンブルドアは自らの死を計画に組み込み、スネイプに託した。自身の命すら捨てる計画を立てる冷酷さに驚愕するが、彼はその役を苦しみながらも果たしたのだ。
それを任され実行する強さと、闇を裏切りながらも闇を進むと決めたスネイプのとてつもない覚悟に、イリスは深く胸を打たれたのだった。
息が焼けるほど走りながらも、
胸の奥は過去へと引きずり戻されていく。
走っているのに、まるで前に進んでいないような感覚だった。
またしても思い出す……
最近のスネイプは、どこか上の空だった。
無言で見つめてくる時間が増え、抱きしめてくれることもあった。
静かに唇を重ねることも。
愛情というものをまだ完全に理解していなかったイリスでも、その触れ方には言葉にできない切なさを感じていた。
あの時のスネイプは、まるで何かに縋るように、髪を撫で、耳をなぞった。
イリスも同じように髪に触れ返し、その反応を確かめた。
一瞬だけ見せた穏やかな表情、それが嬉しかった。
今になって思えば、あれは限られた時間の中で、彼ができる精一杯の愛情表現だった。
迫り来る別れを知っていたからこそ、触れることで心を繋ぎとめようとしていたのだ。
胸の奥に重く沈む痛み。
もう、あの時間には戻れない。
もう、彼とは穏やかな日々を過ごせないかもしれない。
もう……
二度とあんなふうに2人で会えないかもしれない
イリスの瞳から、溢れた涙が頬を伝う。
足元の血と硝子の上に、透明な雫が落ちて散った。
もっと噛みしめておけばよかった。
もっと、彼の温もりを覚えておけばよかった。
後悔の波が胸を締めつける。
それでも、心の奥でひとつだけ確かなものが残っていた。
たとえ世界中がスネイプを責めても、たとえ誰ひとり信じる者がいなくなっても。
私は──イリスは、彼を信じる。
どんな闇の中でも、あの人はきっと自分だけの見失わない光を抱いている。
だからこそ、私がその光を見失わない限り、闇は恐ろしくない。
イリスは震える息を吐き、夜空を仰いだ。
暗い空に浮かぶ骸骨の印が、不気味に揺らめいている。
それでもその奥に、かすかな星の光が見えた気がした。
ベラトリックスの勝ち誇った笑い声が、夜のホグワーツに響き渡った。
天文台から降りる階段を、死喰い人たちは楽しげに駆け下りていく。
ハリーはしばらく立ち尽くしていたが、はっと我に返り、杖を握りしめて後を追った。
イリスもまた、何も考えられぬまま、その背を追いかけていた。
校舎の中は、戦いの痕跡で満ちていた。
砕けたガラス片が床を覆い、壁の装飾が崩れ落ちて散乱している。
裸足の足裏に鋭い破片が刺さる。けれど、その痛みを感じる余裕はなかった。
胸の奥が、もっと深く痛んでいた。
イリスの脳裏に、ほんの数分前の光景が蘇る。
ダンブルドアが天文台から落ちていく、その刹那。
周囲の死喰い人たちが落ちていく光景を見つめる中、イリスだけはスネイプを見つめていた。
彼の顔は、凍えるほどの悲しみに満ちていた。
その表情を裏切りの者が浮かべるはずがない。
あの時の会話が意味していたのは、まさにこのことだった。
ダンブルドアは自らの死を計画に組み込み、スネイプに託した。自身の命すら捨てる計画を立てる冷酷さに驚愕するが、彼はその役を苦しみながらも果たしたのだ。
それを任され実行する強さと、闇を裏切りながらも闇を進むと決めたスネイプのとてつもない覚悟に、イリスは深く胸を打たれたのだった。
息が焼けるほど走りながらも、
胸の奥は過去へと引きずり戻されていく。
走っているのに、まるで前に進んでいないような感覚だった。
またしても思い出す……
最近のスネイプは、どこか上の空だった。
無言で見つめてくる時間が増え、抱きしめてくれることもあった。
静かに唇を重ねることも。
愛情というものをまだ完全に理解していなかったイリスでも、その触れ方には言葉にできない切なさを感じていた。
あの時のスネイプは、まるで何かに縋るように、髪を撫で、耳をなぞった。
イリスも同じように髪に触れ返し、その反応を確かめた。
一瞬だけ見せた穏やかな表情、それが嬉しかった。
今になって思えば、あれは限られた時間の中で、彼ができる精一杯の愛情表現だった。
迫り来る別れを知っていたからこそ、触れることで心を繋ぎとめようとしていたのだ。
胸の奥に重く沈む痛み。
もう、あの時間には戻れない。
もう、彼とは穏やかな日々を過ごせないかもしれない。
もう……
二度とあんなふうに2人で会えないかもしれない
イリスの瞳から、溢れた涙が頬を伝う。
足元の血と硝子の上に、透明な雫が落ちて散った。
もっと噛みしめておけばよかった。
もっと、彼の温もりを覚えておけばよかった。
後悔の波が胸を締めつける。
それでも、心の奥でひとつだけ確かなものが残っていた。
たとえ世界中がスネイプを責めても、たとえ誰ひとり信じる者がいなくなっても。
私は──イリスは、彼を信じる。
どんな闇の中でも、あの人はきっと自分だけの見失わない光を抱いている。
だからこそ、私がその光を見失わない限り、闇は恐ろしくない。
イリスは震える息を吐き、夜空を仰いだ。
暗い空に浮かぶ骸骨の印が、不気味に揺らめいている。
それでもその奥に、かすかな星の光が見えた気がした。
