第4章 謎のプリンス
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第14話 裂かれた者
防衛術の教室には、蝋燭の揺らめきだけが静かに漂っていた。
スネイプが午後からの授業の準備を行う姿をイリスは目で追っていた。
その時、ふとスネイプの右腕に絡む光が揺らいだ。
かすかな魔力の粒子――いつもは穏やかに流れているそれが、急に荒れ狂う。
「……セブルス!ドラコが!」
イリス突然のことに声を震わせ言う。
スネイプは筆を止め、僅かに目を細める。イリスの視線の先……
右腕に視線を落とし、ひと呼吸ののちに椅子を立った。
「……ここにいろ」
その言葉だけを残して足早に部屋を出ていく。
だがイリスの胸の奥で何かがざわめいた。
足が勝手に動き、彼の後を追っていた。
廊下を走る途中、甲高い悲鳴が響いた。
「人殺し! 人殺しよ!!」
嘆きのマートルの泣き叫ぶ声が階上から落ちてくる。
イリスは胸が強く締め付けられ、声のする方へ駆けた。
扉を押し開けると、冷たい飛沫が頬を打った。
壊れた洗面台から水が吹き上がり、鏡は割れ、便器は砕け散っている。
床は水浸しで、赤い水が静かに流れていた。
スネイプの背が、その中央にあった。
ローブの裾が濡れても気にも留めず、奥へと歩を進める。
イリスも水を踏み分けてその後ろについた。
そして見えた。
刃に切り裂かれた無数の傷。
赤い水に沈むドラコ・マルフォイ。
そして、その傍らで力無く座り込むハリー。
スネイプの眼が冷たく光った。
怒りと悲しみが交わるような、氷の色をしていた。
彼は無言でドラコの傍らに膝をつき、杖を構えた。
「ヴァルネラ・サネントゥール……」
低く響く呪文。
なぞるように杖を滑らせると、血が逆流し、傷が閉じていく。
二度、三度と繰り返すうちに、傷口は跡形もなく消えていた。
イリスはその光景を見つめ、胸の奥が熱くなるのを感じた。
水と血が混じった床の上で、彼の魔法は静かに命を繋ぎとめていた。
涙が頬を伝っても、拭おうとは思わなかった。
ハリーは呆然とその様子を見つめていた。
自分の手で生まれた傷と、それを塞ぐ光を、ただ見ていた。
スネイプはドラコを抱き上げ、振り向くことなく言い放つ。
「ポッター……ここで我輩を待て。」
その声は刃のように鋭く、冷たかった。
そして、濡れた足音を響かせながらトイレを後にする。
イリスとハリーだけが、静寂の中に残された。
外では生徒たちが騒ぎ立てているが、この場所だけは時間が止まったように静かだった。
嘆きのマートルの声が、まだ遠くでわめいている。
「人殺しよ!人殺し──」
鬱陶しいその声にイリスは鋭く声を放った。
「今は消えなさい!」
その一言で、マートルは泣き真似をしながらトイレの中へ消えた。
やがて残るのは、水の吹き出す音だけになった。
ハリーが震える声で言う。
「……僕は、そんな……こんなことになるなんて……」
イリスは彼のそばに立ち、静かに見下ろした。
「後悔しているなら、それが答えだよ。
愚かな行動は命を脅かす。二度と、同じことをしては駄目。」
ハリーは視線を落とし、力なく頷いた。
何があったかは分からない。だが、殺人未遂のような事をしてしまったハリーを庇う言葉はどうしても出せなかった。
そのためイリスはそれ以上は言葉を紡がなかった。
……紡げなかった。
おそらくこれからスネイプから嫌がらせのような重い罰則を下されるだろうから……。
その時、背後の扉が軋み、スネイプが戻ってきた。
外の騒ぎはすでに人払いされたのだろう。
彼は一瞬イリスを見つめ、短く言った。
「戻れ。」
イリスは深く頭を下げ、ハリーを一瞥し、その場を後にした。
廊下に出ると既に人払いされており誰もいない。
それがわかった瞬間足の力が抜けた。
壁に手をつこうとしても、体が震えてうまく立てない。
冷たい石の床に膝をつき、息を整える。
スネイプの右腕の光が、あの瞬間、鋭く脈打っていた。
その魔力の波がイリスの胸を締めつけ、息ができなかった。
心臓を掴まれるような痛み。
頭の中に、シリウスとセドリックの笑顔が過った。
彼らのようにスネイプも消えてしまうのではないか……と感じてしまった。
イリスは人の気配のない廊下の隅で膝を抱え、しばらく動けなかった。
胸の奥でまだ震える鼓動が、恐怖と安堵のあいだを往復していた。
もう大丈夫と分かっていても、失うかもしれないという恐れは、静かに彼女を締めつけ続けていた。
防衛術の教室には、蝋燭の揺らめきだけが静かに漂っていた。
スネイプが午後からの授業の準備を行う姿をイリスは目で追っていた。
その時、ふとスネイプの右腕に絡む光が揺らいだ。
かすかな魔力の粒子――いつもは穏やかに流れているそれが、急に荒れ狂う。
「……セブルス!ドラコが!」
イリス突然のことに声を震わせ言う。
スネイプは筆を止め、僅かに目を細める。イリスの視線の先……
右腕に視線を落とし、ひと呼吸ののちに椅子を立った。
「……ここにいろ」
その言葉だけを残して足早に部屋を出ていく。
だがイリスの胸の奥で何かがざわめいた。
足が勝手に動き、彼の後を追っていた。
廊下を走る途中、甲高い悲鳴が響いた。
「人殺し! 人殺しよ!!」
嘆きのマートルの泣き叫ぶ声が階上から落ちてくる。
イリスは胸が強く締め付けられ、声のする方へ駆けた。
扉を押し開けると、冷たい飛沫が頬を打った。
壊れた洗面台から水が吹き上がり、鏡は割れ、便器は砕け散っている。
床は水浸しで、赤い水が静かに流れていた。
スネイプの背が、その中央にあった。
ローブの裾が濡れても気にも留めず、奥へと歩を進める。
イリスも水を踏み分けてその後ろについた。
そして見えた。
刃に切り裂かれた無数の傷。
赤い水に沈むドラコ・マルフォイ。
そして、その傍らで力無く座り込むハリー。
スネイプの眼が冷たく光った。
怒りと悲しみが交わるような、氷の色をしていた。
彼は無言でドラコの傍らに膝をつき、杖を構えた。
「ヴァルネラ・サネントゥール……」
低く響く呪文。
なぞるように杖を滑らせると、血が逆流し、傷が閉じていく。
二度、三度と繰り返すうちに、傷口は跡形もなく消えていた。
イリスはその光景を見つめ、胸の奥が熱くなるのを感じた。
水と血が混じった床の上で、彼の魔法は静かに命を繋ぎとめていた。
涙が頬を伝っても、拭おうとは思わなかった。
ハリーは呆然とその様子を見つめていた。
自分の手で生まれた傷と、それを塞ぐ光を、ただ見ていた。
スネイプはドラコを抱き上げ、振り向くことなく言い放つ。
「ポッター……ここで我輩を待て。」
その声は刃のように鋭く、冷たかった。
そして、濡れた足音を響かせながらトイレを後にする。
イリスとハリーだけが、静寂の中に残された。
外では生徒たちが騒ぎ立てているが、この場所だけは時間が止まったように静かだった。
嘆きのマートルの声が、まだ遠くでわめいている。
「人殺しよ!人殺し──」
鬱陶しいその声にイリスは鋭く声を放った。
「今は消えなさい!」
その一言で、マートルは泣き真似をしながらトイレの中へ消えた。
やがて残るのは、水の吹き出す音だけになった。
ハリーが震える声で言う。
「……僕は、そんな……こんなことになるなんて……」
イリスは彼のそばに立ち、静かに見下ろした。
「後悔しているなら、それが答えだよ。
愚かな行動は命を脅かす。二度と、同じことをしては駄目。」
ハリーは視線を落とし、力なく頷いた。
何があったかは分からない。だが、殺人未遂のような事をしてしまったハリーを庇う言葉はどうしても出せなかった。
そのためイリスはそれ以上は言葉を紡がなかった。
……紡げなかった。
おそらくこれからスネイプから嫌がらせのような重い罰則を下されるだろうから……。
その時、背後の扉が軋み、スネイプが戻ってきた。
外の騒ぎはすでに人払いされたのだろう。
彼は一瞬イリスを見つめ、短く言った。
「戻れ。」
イリスは深く頭を下げ、ハリーを一瞥し、その場を後にした。
廊下に出ると既に人払いされており誰もいない。
それがわかった瞬間足の力が抜けた。
壁に手をつこうとしても、体が震えてうまく立てない。
冷たい石の床に膝をつき、息を整える。
スネイプの右腕の光が、あの瞬間、鋭く脈打っていた。
その魔力の波がイリスの胸を締めつけ、息ができなかった。
心臓を掴まれるような痛み。
頭の中に、シリウスとセドリックの笑顔が過った。
彼らのようにスネイプも消えてしまうのではないか……と感じてしまった。
イリスは人の気配のない廊下の隅で膝を抱え、しばらく動けなかった。
胸の奥でまだ震える鼓動が、恐怖と安堵のあいだを往復していた。
もう大丈夫と分かっていても、失うかもしれないという恐れは、静かに彼女を締めつけ続けていた。
